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136.推薦人

 三宮にあるハンバーグ食べ放題のお店は、三宮駅近くのビルの4階にある。エレベーターを使ってあがる。


 エレベーターからでると、待合室には、既に、瑛太くんと奈々さんが到着していた。2人とも制服姿なので、部活帰りだろう。


 2人は、僕の春乃さんが到着した姿を見て、驚いた表情をしている。


「な、なぁ、詩季。今日、陽葵はどうしたんだ?」


 やはり、そうか。


 建前として、自分の実家が黒宮という名家で、実家から春乃さんという従者を付けて貰ったので、友人より実家に関する人物にサポートをお願いしたと言えたらどれだけ楽な事か。

 まぁ、言えないんだけどね。僕と春乃さんの関係性が動いたのは、ここ最近の出来事なのだから。まだ、整理出来ていない部分もある。


「今日は、春乃さんにサポートをお願いしました。今日の話的に、陽葵さんより春乃さんが適任だと思いましたので」

「詩季くん、席、案内出来るって」


 受付を済ませてくれた春乃さんが、僕たちを呼んでくれた。


 黒宮では、基本的に飲食店などの予約は従者の仕事らしい。従者本人の苗字を使う事で、黒宮関連に人物がお店に来たことで、気を遣わせないための配慮だそうだ。まぁ、僕は、白村姓なので問題ないかもしれないんだけど。


 店員さんに案内された、4人掛けの席に座った。


 すると、黒宮のスマホが鳴った。左ポケットにプライベート用スマホを、右ポケットに黒宮用のスマホを入れている。バイブ音が右側だったので黒宮用だと解った。


 僕は、チラッとスマホを見た。


 周りに気がつかれずにスマホを見る技術は、先日、春乃さんに教えて貰ってそう言う道の人間じゃ無ければ見抜けないレベルに上達したと思う。


『 (住吉春乃) 今は、顔がバレていませんが、今後、黒宮との関りが深くなってくるにつれて、こういう食事とかは、個室にして貰わないとだめです。返信不要です、詩季様』


 春乃さんから注意喚起された。


 黒宮とかかわりが深くなれば、食事は個室か。お金かかるな。というか、そういうお店に関しては、春乃さんの方が詳しいだろうから頼まざるえない。


「ハンバーグ食べ放題4人分でお願いします」


 隣に座る春乃さんが、店員さんに注文してくれた。注文から5分後には、お皿に3つハンバーグが乗っているものが持って来られて、食べ放題のルールが告げられて、店員さんがその場を後にした。


「それで、詩季。奈々を貸して欲しいという事は、どう言う事だ?」

「これは、今回の事に関する人だけで最初に話しを付けたいと思いました。だから、陽葵さんでなく春乃さんなんです」

「……どう言う事だ」

「僕は、2学期に行われる生徒会長選挙に出馬します。奈々さんには、春乃さんと共に、僕の推薦人になって欲しいのです」


 奈々さんに、生徒会長選挙に出馬する際に必要な推薦人に、春乃さんと共になって貰いたかったのだ。


 最初は、推薦人は、1年生1人と上級生から1人と考えていたが、この3日戦略を考えて、1年生2人にすることにした。その1人は、春乃さんで、既に、内諾を得ている。


「わ、わたしぃ?!推薦人なら、陽葵ちゃんの方が……」

「賑やかし程度での出馬ならそうしていたでしょうね。本気で、勝ちに行きたいので、推薦人は陽葵さんと春乃さんではなく、奈々さんと春乃さんが最適です」


 生徒会長選挙に、僕が立候補すれば、3人が立候補する事になり決選投票など2度の投票機会が出来る事で、生徒会長選挙は盛り上がる事は間違いなしだろう。


「何で、私なの?陽葵ちゃんとの違いは?」

「学校内の生徒会長選挙は、実質的に人気投票ですよ。だからこそ、沢山のクラスメイトとの交流関係を持っている人が推薦人になった方が、選挙戦の初速は、上手く行きます」


 僕が、陽葵さんではなく奈々さんを推薦人に選んで、奈々さんと春乃さんの2人を推薦人に選んだ理由。


「まず、奈々さんの交流関係の広さは、皆が認めるものがあります。奈々さんに推薦人になってもらうことで、僕が良いと多数の人に思ってもらうのが第1です」


 奈々さんの交流関係は、1年生の中では、殆どの人が、彼女に好意的な印象を抱いている。その交流関係は、他学年にも及ぶが、1年生内だと奈々さんの交流関係の広さに勝てる人は居ないだろう。


 奈々さんが、僕の推薦人になる事で、1年生の中の支持基盤を増やして安定させたい。


「春乃さんが、もう1人の推薦人なのは、高等部入学組の支持を集めたいんだね」

「正解です」


 奈々さんの問いかけに正解と返す。まさに、春乃さんを推薦人の1人の理由がそれだからだ。


 春乃さんは、校内の一部の人から支持を集めている。それは、高等部からの入学してきた生徒で初めて生徒会に入ったからだ。つまりは、これまでの生徒会や生徒会長選挙の推薦人は、全て中等部から上がってきた人が独占していたのだ。


「奈々さんと春乃さんが、僕の推薦人になってくれれば、1年生の大半と高等部入学組の支持を得られると踏んでいます」

「それで、勝てると?」

「勝てないでしょう。もう1つのスパイスを加えて、やっと決選投票に残れると言った算段です」

「それは、陽葵ちゃん?」

「違います。今回の生徒会長選挙で、陽葵さんに協力を仰ぐつもりはありません」

「それは、何でかな」


 奈々さんは、正義感の強い人だ。僕が、普段陽葵さんにどれだけお世話になっているかを知っているので、陽葵さんを蔑ろにしているように見えるこの状況に納得出来ないのだろう。


「大きな理由は、陽葵さんと僕がニコイチという評価を受けているからです。つまりは、ニコイチの人に推薦人をお願いしないと生徒会長選挙に出られないと言うマイナスのイメージを消したいのです。その点、奈々さんは、親しい間柄であろうと、遠慮なく物事を言う。瑛太くん以外の異性とは一線を引いていますでしょう?」


 奈々さんは、何処か納得した表情を見せた。


「解った。協力する。その代わり、陽葵ちゃんにしっかり説明すること。それが、条件」

「それ、ここに移動する際に、春乃さんにも言われましたよ。解りました、約束します」

「OK!」


 奈々さんは、僕に手を出してきたので握手を交わした。


「陽葵ちゃんを泣かせたらダメだよ」

「好きな人を泣かせたくは、無いので頑張ります」

「「え!?」」


 瑛太くんと奈々さんの失礼カップルは、僕の言動に驚いてこっちを見た。奈々さんが、こういう事を言うので、僕が陽葵さんの事が好きだと認識していると思ったが、予想外だった。


「何ですか!まぁ、奈々さん。早速、頼み事いいですか?」

「なに?」

「オススメの美容院に連れて行って貰えませんか?」


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