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131.主従関係②

「剣には、他の従者を付ける予定だ」

「男じゃないですか!女じゃないと――」


 僕の従者となった春乃さんに対する非礼な言動に、腸が煮えたぐっている。初対面なので、大人しくしておきたいと思っていたが、どうやって仕返しをしようか考えている。どうやって、やり返すか方法はある程度の方向性は決まっているが、後はタイミング次第だろう。


 春乃さんの考えは否定できない。むしろ、この考えが当たり前だと思う。だから、清孝さんも春乃さんや春乃さんの実家の住吉家に最大限の配慮をしている。

 剣くんは、そこら辺の事を良く解っていないようだ。君のその行動自体が、春乃さんを自分の従者にして貰えなかった理由ではないのか。


『従者として黒宮に仕えているが、人としての立場は同等』


 従者として黒宮とは主従関係にあるが、人としては同等と言う主張に反論するつもりはない。僕は、春乃さんの考えを尊重するし、春乃さんの主人になった以上、守らないといけない。


「だから、春乃を――」

「何だい、詩季くん?」


 僕は、手を挙げた。


 周りをよく見ていると評判の清孝さんなら気が付くと踏んでいたが、予想通りに気が付いてくれた。


「剣くん。従者と言うのは主人につき従う者。つまりは、主人のサポ―ト役です。そして、そのサポ―トは常識的な範囲内に限ると思っています」

「な、なんなんだよ……!」

「あなたは、さっき女じゃないといけないと言いましたが、自分のサポ―トなら男性でも問題ないでしょう。それに、さっき、春乃さんの方を見る時……春乃さんの胸を見ていましたね」


 ここでも、清孝さんは表情を変えない。誠子さんの頬が引きつったのが、唯一の変化だ。


「な、なんだよ。俺は、女がいいんだよ」

「否定をしないという事は、春乃を性的な目で見ていたという事ですね。いいですか、職業柄、従者と僕たちは主従関係にありますが、人としては対等なのですよ」

「何が言いたいんだよ」

「春乃に性的な奉仕をお願いする事はできませんよ。むしろ、従者を持つ身としてはやってはいけません。あなたが、春乃の事を露骨に性的な目で見る事が、春乃を従者にして貰えなかった。男性の従者を自分に付けられる事になったのではないでしょうか。何せ、初対面の僕が一瞬で解った位です。普段から春乃が味わってきた恐怖の感情は計り知れないでしょう。僕からの意見は以上です。反論があるなら、どうぞ」


 剣くんは反論のよちが無いのか、もしくは、反論出来ないからか黙り込んでいる。


「詩季くんが、全て言ってくれたの。剣、君が望む従者を付けなかったのは、こういう理由じゃ。お主だと、春乃が嫌な思いをする。主従関係の主人として仕えてくれる者には、最大限の配慮をしないといけない。いいか、従者と主人は対等でないといけない。これを忘れるな」

「お父様に、詩季くん。愚息の愚行、申し訳ない。春乃も普段からすまなかった。私が、もっと早くに気が付いていれば……」

「いえ、全て私の主人の詩季様が言って下さりましたので、ここまでの件は水に流そうと思います」


 春乃さんも言葉の使い方が、上手いと思う。今回の1件ではなく、ここまでの事は、水に流す。つまりは、剣くんが、今後同じ事を繰り返し行ってきた場合は、容赦しないと言う事だ。


「すみませんでした」


 恐らく、剣くんは、春乃に恋というものをしたのだろう。しかし、アプロ―チの仕方を間違えた。だから、春乃さんに拒絶されてしまった。


 恋と言うものをよく分からない僕からして、こう結論付ける。


「お見苦しい所を見せてごめんね。私は、まとい。聡兄さんの妹で次女です。こちらは、息子の真司郎」

「よろしくお願いします」


 まといさんに、紹介された真司郎くんは、立ち上がって一礼した。


「真司郎は、詩季くんと2つ歳が離れてるけど仲良くしてくれたら嬉しい」


 次女という事は長女が居るはずだが、この場では姿が伺えない。


「長女の小夜は、今日も来てないか。詩季くん、私と誠子にはもう1人の子ども居てな、聡とは双子の妹で長女の小夜じゃ」


 父親は、双子だったのか。


 父親の実家に来て、色々新たな情報が入る。


 昼食が終わると、母さんは、清孝さんと話があるようで、僕は、春乃さんに連れられて控え室ぽい部屋に案内された。


「疲れましたね」

「うん。疲れたよ」

「詩季様、先程はありがとうございました」

「春乃さん。ここには、僕たちだけですし、今まで通りで」

「うん!」


 やっと、いつもの明るい表情になっていた。いつも通りの春乃さんで安心する。


「それで、清孝さんは、何を考えているのかな?春乃さんはわかる?」


 僕の黒宮への復縁にあたり、諸条件など至れり尽くせりだ。


 清孝さんと誠子さんが、父親よ僕と羽衣の子育てに関して怒っている事は聞いていた。だから、僕と羽衣が黒宮と復縁する事が、父親への見せしめになると。


 だけど、それなら、従者を付ける必要も無いし何なら、黒宮と縁を切った人間の子どもを皆の前で紹介すらしなくてもいいだろう。


「う〜んとねぇ。 大前提に清孝様は、詩季くんと羽衣ちゃんを孫として見ているのには違いない。けどね、孫と黒宮としては別物なんだよね」


 春乃さんの説明を聞く。


 黒宮の内情に関しては、春乃さんの方が詳しいだろう。


「剣様は、あの性格。真司郎様は、体調面で不安を抱えている。その上、聡様が黒宮と縁を切った事で、後継者不足。清孝様はずっと聡様を後継者として育ててきましたからね」


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