129.復縁
清孝さんと誠子さんの2人と話している間、春乃さんと松本先輩は、2人の後方に立っていた。
空いている席に座ったらいいと思うのだが、色々と複雑なルールかしきたりでもあるのだろう。
「んじゃ、そろそろ2人の事を紹介するか」
「そうですね。詩季くんと春乃は、学校でも親しい間柄みたいですし」
清孝さんと誠子さんが、2人に手で合図を出すと、2人は前に出た。
「2人とは、学校で面識があると思うけど、それぞれから自己紹介してもらいましょう」
先に、松本先輩が前に出た。
「最初に私から。松本優花と申します。生徒会で関わりあるから名前は知っていると思うけど」
「はい」
「そして、白村くん……ここでは、下の名前で呼ばせて頂きます」
あれ、松本先輩の口調が丁寧になった。学校ではない振る舞いだ。
「詩季くんが、1番気になっているのは私と黒宮家の関係だけど、私の一族は、代々、黒宮家に秘書として仕えている家系です」
松本先輩は、秘書として代々黒宮に仕えている家系のようだ。
羽衣は、初対面なので、少し警戒しているように見える。
「私は、住吉春乃と申します。詩季くんとは、学校で友人として仲良くしてもらっています」
春乃さんは、先日顔を合わせているので大丈夫かと思ったら、羽衣は、尚も警戒心を強めたようだ。
「私と黒宮家との関係だけど、代々従者として仕えている関係です」
本当に、今まで聞いた事もない単語が飛び交っている。
秘書は、大丈夫だ。
代々だとか、従者だとか、一族だとか。
黒宮家と言うのは、かなり奥深いのだろう。
「驚きですね。まさかお2人。特に、春乃さんが予想外の所で、僕に強い関わりを持っていた人物だったとは」
「うふふ、世間は狭いね」
「それで、何処からが仕込み何ですか?天然ぽい振る舞いも計算のうちですか?」
春乃さんの行動は、最近になって表立ってきた。これまでの天然な行動自体、彼女の計算の内かもしれない。
そんな、詩季の話す姿を清孝さんと誠子さんは、ニッコリとした笑顔で眺めていた。このニッコリ笑顔がある意味怖いという物だ。
「計算とはなに?」
「えぇ〜と、陽葵さんの術中にはまってスカート捲って中のスパッツを――」
「あわわ、詩季くん。ストップ!清孝様の居る前でやめて!お母さんに伝わっちゃうよ!お母さん、その手に関しての弄りがしつこいんだよぉ〜〜」
この反応を見るに、あれは素の春乃なのだろう。元々、天然な要素を持っていると思っていたが、間違いないみたいだ。
「なに、春乃。詩季くんに、スカートの中見せたの?……あなた、まさか!」
「奥様、そんな事はございません!なんと言うか、女の子の友人と話していて流れでつい見せてしまったと言うか……」
「でも、見せたんでしょ?」
春乃さんは、誠子さんに弄られて顔を真っ赤にしている。
春乃さんは、いじられキャラとして、定着しているように見える。
「ゴホン!」
清孝さんの咳払いによって、誠子さんは、春乃さんへのいじりを止める。春乃さんも後方に移動する。
「では、しずかくんから聞いているが、詩季くんに羽衣くん。黒宮家と縁を結ぶ……いや、聡が縁を切っておるから黒宮的には、復縁になるが、よろしいな?」
「詩季、羽衣。訂正するなら今だけど、どうする?」
「僕は、黒宮との縁を結びたいと思います。復縁と言う事になるのでしょうけど」
僕は、黒宮との復縁を正式に承諾した。正直な所、この脚の事もあり、少しでも人脈を作って起きたいのだ。
「私も、復縁したいと思います」
羽衣も、黒宮との復縁を承諾した。
「わかった。春乃」
「かしこまりました」
春乃さんは、清孝さんに命じられると僕と羽衣の前に1枚の紙を見て置いた。書類は、清孝さんの手書きのようだ。
〇 今までの生活は、保証する
〇 黒宮家と復縁する際には、他の黒宮の人間と同じ扱いになる(詩季、羽衣の両名に無理矢理な婚約者やお見合いは、用意しない)
僕と羽衣に、無理矢理な婚約者やお見合いは、用意しないという事を明言してくれた事は、僕にとって安心材料だ。羽衣には、自分が選んだ人と結婚して欲しい。まぁ、相手のチェックは怠らないけど。
すると、清孝さんと誠子さんは、立ち上がると、僕と羽衣の近くに来て手を出してきた。僕は立って握手をしようとするが、座ったままで良いという事で、そのまま握手をした。
「これからは、聡の長男である詩季には、春乃が従者になる」
「えっ春乃さんがですか?」
春乃さんは、僕の隣に移動して来た。
春乃さんは、僕に一礼してきた。何だろう、これまでの友人としての対等な関係だったのが、黒宮と復縁した事で、主従の関係という上下関係が出来てしまった。
「詩季様、これから、誠心誠意仕えていきたいと思います。よろしくお願い致します」
「春乃さん、出来れば今まで通りの接し方でお願い出来ませんか?様付けはいいです」
春乃さんに、様付けはいいと言う。命令は嫌なので、お願いする。
「う〜ん。プライベートな所では、今まで通りの関わり方で大丈夫だと思う。だけど、ここに来る時や黒宮関連施設に訪問する際には、主従を重んじた方がいいかもね」
誠子さんからの提案は、確かな物だ。プライベートでは今まで通り。黒宮関連の事の時には、主従を重んじる。
これも、黒宮と復縁する事で受け入れないといけないだろう。
「では、春乃さん。そういう事でいいですか?」
「わかりました」
春乃さんと誠子さん安定で、約束した。
「2人とも、何か合図を決めとけば?普段は、プライベートだけど、黒宮としての主従に切替える合図とかあったらよくない?」




