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127.恩

 ここ最近、僕の周りの動きが慌ただしくなっている。


 母さんが、父親が切った黒宮家との縁を僕と羽衣と戻そうとした。これは、子育てにおいて心強い後ろ盾だろう。父親の会社の主要取引先だったり、設立に黒宮が関わっていたと聞いた時は、父親に対して本当に呆れという感想を覚えた。


 結果的に、僕と羽衣は黒宮と復縁する事を決めた。


 母さんだけなら、まだわかるが他にも大きな動きを見せている人物が居る。


 春乃さんだ。


 春乃さんに関しては、理由が全くもって分からない。陽翔くんに好意があるのは、陽葵さん情報で仕入れていたし、プールの時に、チラチラと春乃さんを見る陽翔くんは、何処からどう見ても両片想いをしているように見える。


 だけど、ここ最近、春乃さんは僕の事や僕の周りの事を探っているように見える。


 それが原因で、陽翔くんに嫌な思いをさせてプールの時に謝っていた。だけど、先日、羽衣に会いたいと家にやって来た。


 僕の事を知って、羽衣の事を知りたがった。もしかして、僕に関連する事で動いている?なんの目的があって?


 そして、母さんが黒宮家との僕達の復縁を動いていた事。


 そして、春乃さんの言った「近いうちに解る」という言葉は、相当なヒントだ。


 総合的に考えると一つの仮説が完成した。しかし、その仮説が正しいかは分からない。


「詩季にぃさん、髪のセット終わったよ」

「ありがとう」


 今日は、黒宮家に訪問するに日だ。何時もは、髪は陽葵さんの役目だが、今回の訪問は陽葵さん達には極秘の訪問なので、髪は羽衣にしてもらっている。


 羽衣は、僕のオーダー通りの髪型にしてくれたが、やはり、陽葵さんの方がしっくり来る。


「にしても、将来の奥さんに隠し事とは、浮気ですかにぃさん?」

「僕は、まだ付き合ってないんだけど?そっちは、付き合ってるなら浮気になるんじゃない?」

「か、隠し事だけなら浮気にならないもん」

「なら、僕もならないでしょう」

「1本取られた」

「2人とも、もうすぐ迎えの車が来るから」


 母さんから注意を受けて数分したタイミングで、家のインターフォンが鳴らされた。


 母さんが出て、訪問者を確認すると僕と羽衣を手招きで呼んだ。


 僕は、羽衣に手助けて貰ってから靴を履いて外に出ると、一目見て、お金持ちが乗っているであろう、黒塗りの高級車があった。


 そして、車の周りには黒服に黒サングラスを掛けたいわゆる黒服さんが居た。僕と羽衣は、アニメの中の世界にしか居ないと思っていた黒服さんが、現実に居る事にワクワクが隠せない。


「詩季にぃ、実際に居るんだね黒服さん」

「そうですね。実際に見るのは初めてですが、ある意味カッコいいですね」

「2人とも、車に乗るよ」


 黒服さんが、後方の扉を開けてくれたので乗り込む。最後に母さんが乗り込んだのを確認して扉が閉められて黒服さんは運転席に移動した。


「では、黒宮邸に向かいます。1時間ほどかかりますので途中、お手洗い等あれば遠慮なく申し付けて下さい」


 車が発進された。


 流石高級車だ。いつも乗せて貰う陽葵さんの家の車とは全く違う。座席にもお金を掛けているのだろう。恐らく、車のボディは防弾加工しているのだろう。


 車は、高速道路から降りたらのどかな田舎町に出た。


「黒宮邸は、田舎町にあるんですか?」

「し、詩季――!」

「大丈夫ですよ、しずか様」


 僕は、思った事を口にした。そしたら、母さんが止めようとしたが助手席に座っている黒服さんが母さんを宥めた。


「まぁ、過去に国家に恩を売るために、ここに本家を移したんですよ」


 昔は、兵庫県内で発展している都市に本家の屋敷を置いていたが、再開発により県と国にお願いされて都市に置いていた本家を解体して土地を売却して兵庫県内の廃校になった中学校と廃業になった施設の土地を買い取って新たな本家の屋敷を建設したそうだ。


「それが、国からどんな恩が返されると言うんですか?」

「それはですね。国家や県における黒宮家としての発言力が増すという事ですよ。つまりは、国家内における黒宮家の地位向上に繋がります」


 何はともあれ。


 黒宮には黒宮なりの生き方という物があるのだろう。


「黒宮がここに来た事で、ここの人口が増えることに繋がりましたし、土地開発もされました。人の動き=土地の発展かもしれませんね」

「そうですか」

「あれ、御興味を惹かれません?!」

「すみません。多分、緊張しているのだと思います」


 まぁ、緊張していないと言ったら嘘になる。


 最初は、田舎だと思った街並みもマンション等が立ち並び初めて様相が変わった。これも、黒服さんの言う通り、黒宮が移って来た恩恵なのだろう。


「と言うとこは、ここの市長は?」

「鋭いですね。ここの市長になるには、黒宮家の支持が居るというのが、ある種の暗黙の了解ですね」


 やはりそうだった。そりゃ、黒宮が移ってきた事で、市が発展したなら黒宮家が発言力を持つのは仕方ない。


 そして、車は大きな門をくぐって屋敷の中に入った。


 そして、屋敷の前に到着すると黒服さんに扉を開けて貰って車から降りた。


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