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124.動き

 ピンポーン♪


「はい」

「住吉春乃です」

「今でますね」


 翌日のもうすぐ11時になるタイミングで、春乃さんが訪れた。


 祖父母は、お茶とお菓子の準備だけして2階の自室に移動している。祖父母も、陽葵さんと陽翔くん以外の友人の急な訪問に戸惑っているのかもしれない。


 羽衣をリビングに待たせて僕は春乃さんを家に招き入れる。


「ようこそ、春乃さん。安心してください。陽葵さんに奈々さんは、居ませんよ」

「うん。詩季くんなら約束守ってくれると思ってたから。それに、ここに来るまでには、周囲を警戒して来たからつけられている心配も無いよ」


 普通の友人宅への訪問に際して、道中、自分の周辺の人影を警戒するか?


 本当に、春乃さんは何を目的として僕と羽衣に会いに来てのだろうか。


「こちらへどうぞ」


 春乃さんをリビングに案内して、羽衣が座っていた席の向かい側に座らせて、僕は羽衣の隣に座った。


 「とりあえず、自己紹介ですね。私は、詩季くんのクラスメイトであり友人と住吉春乃と申します。詩季くんの妹さんとは、初対面ですが大変可愛らしい」


 何だろう、学校に居る時よりも丁寧な凛々しい挨拶をしている。


 そんな春乃さんに、最初可愛い女の子が来て驚いた後に、「詩季にぃさんは、女たらし」と言う視線を僕に向けてきた羽衣が固まってしまった。


「羽衣、挨拶」

「――はっ!」


 羽衣は、僕の指摘で我に戻り姿勢を正した。


「白村羽衣と申します。兄が日頃からお世話になっております。住吉さんも可愛いと思います」

「ぐすぅ!」

「詩季にぃさん、何笑っているんですか?」


 あのハチャメチャな羽衣が、丁寧な言葉を使って挨拶をしているのは、何とも面白い光景だろうか。


 笑いを堪えるのに必死だったが、無理だった。


「それで、話を戻すけども、春乃さんは羽衣に用事があるんだよね?」

「そうだね、詩季くんの妹さんが帰国してきたみたいで、どんな人なのか会ってみたかったんです!」

「それなら、皆と居る時でも良くないですか?」


 頼まれれば、羽衣を連れて皆と遊ぶことだって嫌では無い。

 それなのに、春乃さんは他の友人たちがいない間に会おうとしてきた。


「だって、羽衣さんはイギリスで生活していたのでしょう!しかも、イギリスにおける名門中学に通っていたと……本場の英語を直に学べるチャンスじゃん!」

「なるほど、そう言う目的でしたか。なら、羽衣。少し春乃さんと話して見てください」

「……うん」


 学校のテストで高得点を維持するために、英語圏で生活していた羽衣に英語を学びに来た。


 まぁ、テストにおいてトップ高順位、特に僕が指定席としている首席に拘っている春乃さんなら納得のいく理由になるだろう。


 だけど、そこにおいて不振な点がいくつもある。


 春乃さんは、羽衣に英語を聞いているようだが、何やら羽衣の人柄なのか人格を見計らっているように見える。


 一体何をしているのだろうか。


 春乃さんは、1時間程羽衣に英語を聞くと満足したようで英語の参考書を閉じていた。


 春乃さんは、スマホを取り出すと何処かにメッセージを送っていた。


「春乃さん、スマホ変えたのですか?」


 春乃さんは、「油断した」と言った表情をしていた。


 スマホのケースだけを変えたなら説明がつく。春乃さんが取り出したスマホは、普段の学校生活では型落ちのスマホを使っているが、先程使っていたのは新型のスマホ。

 春乃さんは、弟さんにお金を残したい意向を持っている人物だ。そんな人が、高校入学後に最新型のスマホに変えるとは思えない。


「それで、春乃さん。ここ最近、色々動いているみたいですけど……何か企んでいますか?」

「企んでないよ」


 僕の問いに対して直ぐに返事をしたので、友人間の空気を悪くしたい意図は無いようだ。まぁ、女子3人間で空気が悪くなってしまったのは、失態だったと思った様だ。


「それで、デートの件で陽翔くんに謝ったのに、また動いていますよね?」


 奈々さんに指摘されて、奈々さんと陽葵さんと陽翔くんにデートの際の態度の謝罪する事で和解したはずだ。この前のプールで遊んだときに謝罪していた。


「あはは、詩季くん怖いなぁ~~」

「それで、本題は何かな?」

「はぁ~~詩季くんからは、逃げられないかぁ~~陽葵ちゃんと奈々ちゃんは逃げられたけど」


 春乃さんは、どんな目的を持って動いているのだろうか。


「ごめんね。今は、家庭の事情で言えないけど……近いうちに解るよ」

「そうですか」


 春乃さんは、詳しい事を話すつもりはないようだ。それに付け加えて、近いうちにわかると。


 春乃さんは、それだけを言うと帰って行った。


「はぁ~~何か、あの人、何考えているかわからんなぁ~~」

「根は良い人ですよ」

「それは、解るよ。詩季にぃさんが友人として認めてるんだから」


 緊張の糸が解けた羽衣は、ソファに腰かけてだらけている。履いているスカートがはだけていてもお構いなしな様子だ。


「春乃さん天然な部分もあって良い人なんですけどねぇ~~」

「本当に天然なのかな?」

「羽衣もそう思いましたか?」


 春乃さんの天然は、本質的ではない。多分、陽葵さんの術中にハマってスパッツを僕に見られた行為も天然を装った行動かもしれない。


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