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106.身持ち

「一応、おかえりなさい。静ばぁとその他1人さん」

「ただいま」

「詩季やい、わしも名前で呼んでくれいぃ~~」


 健じぃは、名前で呼んで欲しかったようだが、陽葵さんの事は、未だに許していないので、可愛い孫からの罰だと思って貰いたい。


「それと、ようこそ。おじさんとおばさん。おじさんは、お久しぶりですね」


 祖父母と西原両親は、お家に入って来た。


 すると、おじさんと健じぃは、家中のゴミ箱を探し出した。


 僕と陽葵さんは、リビングのソファに腰かけて、静ばぁとおばさんは、椅子に座っていた。


「詩季くん、陽菜の勉強見てくれてありがとね。まさか、1日で3日分のノルマをこなすとは思わなかったよ」

「陽菜ちゃん、勉強頑張ってましたよ」


 僕と遊ぶ事が、モチベーションになったなら嬉しい限りだ。


 それで、勉強が捗っておばさんに褒められたのなら、一石二鳥と言った感じだろうか。


「陽菜ちゃんはどうしているのですか?」

「陽翔と一緒にお留守番中。夕方には、こっちに来るよ」


 どうやら、今日は、夕ご飯を家と西原家一緒に食べるようだ。


 すると、ゴミ箱を漁っていた、健じぃとおじさんが、帰ってきた。


「どうだった?」


 おばさんが、おじさんに何かを尋ねていた。


「無かったぞ」

「そう。それで、詩季くんと陽葵の関係性は、友人でいいのよね」

「うん」

「詩季は?」

「友人です」


 4人から凄い目線で見られているように感じるのだが、何でこんなに見られているのだろうか。


「詩季、一線は、超えてない?」

「超えていません」


 何となくだが、健じぃが僕に、おばさんが陽葵さんに、赤い箱を渡してきた本当の意味がわかってきたように感じる。


「良かったよ」


 おばさんが、安心したような表情になった。それに釣られるように、他の3人も安堵しているように見える。


「どうしたの?」


 陽葵さんが、疑問を解消しようと、おばさんに質問していた。


「う〜んとね。恋人同士じゃない異性同士が関係持っちゃったらそのまま拗らせる可能性高いからね。セがつくお友達も大人の社会じゃ、うじゃうじゃ居るし」


 なるほどね、両家の両親達は、陽葵さんと僕の2人のお泊まりを認めた。だけど、恋人関係で無いのに、一線を超えないかを心配していたのだろう。

 しかし、お泊りがキッカケで恋人関係になるかもしれない。そうなった時に、親が居なければ勢いのまま一線を越えてもおかしくない。だからこその赤い箱なのだ。


「友人関係が完全に破綻するのは、異性。異性関係が完全に破綻するのは、身体。陽葵に、詩季くんも、心の中に置いときな」


 おばさんが、かっこよく見える。


 それに、おばさんの言葉は、松本先輩が、僕に言ってくれた事の答えに思える。


「あぁ、もちろん。詩季くんを信頼してない訳じゃないよ。詩季くんは、しっかりと順序は守る子だと信じてたから、陽葵との2人のお泊まりを認めた。そこだけは、勘違いしないでね」

「はい」


 僕たちの年代は、心身の成長していき大人を意識しだす時期だ。

 そして、大人関連の事に関して、頭では理解していても、経験値が皆無。


 性欲を持ち出して、それが恋愛にも絡んでしまう。


 おじさんとおばさんや祖父母は、ある程度の覚悟はしていたのだろう。


 もし、一線を超えていた場合は、祖父母に怒られていたかもしれない。


 赤い箱は、万が一のために渡して来たのだろう。


 そして、4人の覚悟の凄さも伺い知れたと思う。


 この、お泊まりで何かあった時は、私達で責任を取るという、親としての強い覚悟を知れたと思う。


「それとねぇ〜〜」


 静ばぁが、強い呆れを込めた声を上げた。


「静ばぁ、何かあるのですか?」

「いやぁ〜〜ねぇ〜〜詩季」

「何ですか」

「鈍感なのは、罪だよ」


 静ばぁの言いたいことは、こうなのだろう。


 一晩、陽葵さんと1つ屋根の下で過ごして恋人にならなくとも、何かしらの関係性の変化は、あってしかるべきだろうと。


 しかし、それが無さそうだったので、僕が鈍感で、それが罪だと言うのだ。


 その時に、僕は、昨晩の出来事を思い出した。陽葵さんの方向を向くと、同じだったようで、頬を赤らめていた。




〇〇〇



 詩季には、旅行から帰るのは、夕方と伝えていたが、本当は、昼に帰る予定だ。


 駅で、西原さんに迎えに来てもらい、車で、家まで送ってもらった。


 年頃の男女を2人でお泊りさせるのは、保護者として心配だった。


 陽葵ちゃんは、女の子らしい身体をしている。出る所は出て、引き締まる所は引き締まっている。同じ女の私でさえ羨ましいのだから、男からしたら性的な目で見てしまうだろう。


 それに、陽葵ちゃんは、詩季に片想いしてくれている。しかも、あれは、詩季のお願いなら何でも聞くレベルで、詩季に惚れてくれている。


 孫が、可愛い女の子に好かれているのは、嬉しい事だ。


 詩季の身持ちの堅さを信頼している。前の幼馴染の女の子との恋愛で失敗しているから身持ちは、固くなっているはずだ。


 それを信じて、2人でのお泊りを認めた。もしもの時は、両家で責任を取ると桜さんと話した。


 恋愛の失敗と言うのは、身持ちが固くなる人も居るが、払拭しようとして身持ちが軽くなる最悪のパターンもある。


 今回のお泊りの提案に関しては、詩季にかかっていた。


 陽葵ちゃんは、完全に、詩季を堕としに掛かっている。だから、2人の関係性が健全な物になるのか、不健全になるかは、詩季の行い次第だった。


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