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〜 公爵家主催のガーデンパーティー 〜


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




「時間です。殿下、帰りましょう。」


「すまない。伯爵との挨拶だけが残っている。……出入口近くに居られるな。そのまま会場を出られるからな、もう少し耐えてくれ。」




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 そんなやりとりが耳に入る。


 黒髪黒眼。生真面目な性格がそのまま顔と立ち姿に出ている伯爵令嬢の、背後4、5メートルの距離。


 ふたりは連れ立って件の伯爵の元へと立ち去った。


 ふたりが立ち去ってから間も無く、伯爵令嬢は10数名のご令嬢方に周囲を取り囲まれる。


「伯爵令嬢ごきげんよう。詳しくお聞かせ願えるかしら?」


 深い紅色の髪の毛を波打たせながら距離を詰めてきた美少女が、取り出した扇子で口許を隠し、目尻がきゅっと吊り上がった金眼を細める。


「侯爵令嬢様。かしこまりました。」


 ふたりの言葉を正確な熱量、正確なリズムで再現する。その声だけが、取り囲む令嬢方の鼓膜を震わせる。


 一拍の後、10名程度のご令嬢方はそれぞれに隣にいる方にもたれかかるように、身を寄せ合うようにほろほろと崩れ落ち座り込んでしまう。

 手で顔を覆ったり、耳を塞いだり。湿り気を帯びた吐息があちらこちらで漏れるばかり。


 生き残ったのはわずか4名。


「大層けしからん状況であったことが察せられます。私にもお教えいただけますでしょうか?」

 脱落した令嬢方の様子から期待値は跳ね上がり、ハンカチを握る手に力が入る。


「ええ、もちろんです。」

 公爵令嬢が扇子を仕舞う。


 パチリ。



 17歳。身長190センチ。広い肩。厚い胸。どっしりと安定した腰回り。服の上からでもわかる逞しい体躯。野生味のある顔立ち。動作は指先まで美しく優雅。相まって醸し出される色香。短い黒髪にブルーサファイアの瞳。

 この国の王太子殿下である。


 同じく17歳。身長175センチ。引き締まった体躯。胸下までの銀髪。エメラルドグリーンの瞳。女性よりも美しい顔立ち。見せる表情は常に鋭く冷ややか。幼少の頃より行動を共にする王太子殿下の側近である。



 側近が右後方から殿下に半身を寄せ、右手で殿下の右肘に手を添える。


「時間です。殿下、帰りましょう。」


 側近は潤んだ瞳で見上げ、くたびれたような甘えるような声音で懇願する。



「すまない。伯爵との挨拶だけが残っている。……出入口近くに居られるな。そのまま会場を出られるからな、もう少し耐えてくれ。」


 自らに添えられた側近の右手を左手で押さえ込み、労わるように更に握る。

 殿下の表情からは申し訳なさや狼狽が見える。

 視線が絡み合う。

 側近は悲しげに項垂れる。

 側近の顔を覗き込む殿下。

 再び視線を絡め、お互いに手を離す。

 労わる殿下の表情に愛情の深さを見る。


 急かすように追い立てて歩く側近。

 僅かに歩幅を広げる殿下。


 触れるか触れないかの距離を器用に保ち、ふたりは急ぎながらも優雅に歩み去る。



「……んっっ」

 手汗で湿ったハンカチを目に押し当てる。

 声にならない嗚咽が漏れる。


 その反応に侯爵令嬢は満足気に何度も頷く。

「貴女があの場所に居てくれたおかげね。」


「……勿体なきお言葉っ」

 侯爵令嬢が背中を優しく撫で、宥る。


「発言してもよろしいでしょうか?」


 見つめる瞳はタイガーアイ。髪色と同じ栗色の睫毛は小枝が乗りそうなほどに豊か。頭ひとつ分低いところから見上げる小さな可愛らしい顔の子爵令嬢。顔の半分を覆ってしまいそうなほどに大きなレンズの入った丸眼鏡の位置を直しながら精悍な顔で発言の許可を求める。


「もちろんです。どうぞ、子爵令嬢。」


「ありがとうございます。まず先の側近様の発言より。殿下に時間を知らせる必要性から検討します。ひとつ、次なる御予定の時間が決まっている。ふたつ、予め滞在時間を限定していた。みっつ、のっぴきならない事情が出来た。の3通りです。但し、続く言葉が『帰りましょう』ですので、次の予定が公務であったとしても次の行き先は王宮であると予測されます。また、一般的に帰る場所とは自邸などの極めて私的な空間であることも思い出してみてくださいね。

 そして殿下のご返答。真っ先に出た言葉が時間超過に対する謝罪です。次なる御予定が公務であれば謝罪は必要ありませんし、側近様は部下ですから尚更です。

 そして、もう少し耐えてくれと『お願い』しています。殿下は公務の最中です。いくら仲が良かろうと公の場です。命令で良いはずです。また殿下は公私混同や身内贔屓をなさらない潔癖な御方。それらを踏まえての『お願い』。導き出される答えは……


 次なる御予定は公務ではなく私的なもの。

 御相手は謝罪と労いを受けた側近様。

 向かう先は王宮またはおふたりの極めて私的な空間。

 焦れたご様子の側近様。

 そのご様子にも満足そうな殿下。


『手荒いな』

『待たされたんです。乱暴にもなりますよ』

『ならば甘んじて受け入れよう』


 という会話があるかもしれませんね。」


 子爵令嬢が分析した結果を淡々と述べ、きりりと頷く。


 聞くにつれ呆然としていた表情が段々と深い感銘に変わってゆく侯爵令嬢と伯爵令嬢。


「………大変素晴らしくってよ。」

 先ほどまでは表情に余裕のあったさすがの侯爵令嬢も、目元に朱が差す。その微笑みは艶然である。


「そして次回の新作も期待できそうですわ。こちら、男爵令嬢です。現在はこの様に廃人と化しておりますが、脳内では鋭意創作中なのです。こうなってしまうと自分のことさえ何もできなくなってしまうのですが…。もし見かけた際には保護と介護要請をお願い致しますわね。」


 侯爵令嬢の隣に佇む男爵令嬢は、ゆるりふわりとしたピンクブロンドの髪にルビーの瞳。愛らしい顔立ち。しかしその美しい瞳には何も映ってはいない。ただただ虚ろである。そして口許は緩み少し開いている。


 侯爵令嬢の目配せで侍女2人と騎士2人が駆け寄る。


「男爵令嬢を自邸まで送り届けます。歩行は困難なのでどちらか抱き上げをお願いします。私の騎士が男爵令嬢に触れることを許可いただけますか?」


 尋ねられた男爵令嬢の侍女は、高貴で美しい少女からの丁寧な対応と言葉に恐れ慄きながら、なんとか了承の意を示した。


「貴女たちも侯爵家へ参りませんか?そこで改めてお茶会でもいかがでしょう?」


 侯爵令嬢は伯爵令嬢と子爵令嬢に向かって手を差し出した。


「「よろしくお願いします!」」


 元気に返事をしたふたりはその手にそれぞれ手を添え、侯爵令嬢にエスコートされ会場を後にした。


「生き残った私たちだけで、"殿下と側近様を見守る会"2次会ですわね。」




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




「やっぱり殿下が帰るとなるとご令嬢たちも意欲が下がるんだな。」


「当然だろー。」


 出入口へ向かう殿下と側近。

 一箇所に集まったご令嬢たちを遠目に見やる。


「俺たちみたいな次男三男、下位貴族には見向きもしないよなー。」


「違う。殿下と側近は格が違いすぎるんだ。身分だけじゃない。もし彼らの身分が私たちより低くとも、頭脳、魔法、剣術の全てで俺たちを軽々と凌いでいくだろう。だから身分じゃないんだ。」


 身長は側近と変わらないが、筋肉の存在を主張する体格のため側近よりもかなり大きく見える男爵令息。剣術を得意とし無骨な手をしている。髪色と同じチョコレート色の瞳には遠くに居られる尊敬する殿下が映っている。本人も殿下の退場で意欲が下がったように見える。


「そうだな、例え全てに適性があったとしてもそれを伸ばす努力をしなければ学院での魔法実技、剣術実技を含む全ての試験で首席を取り続けることは困難だろう。さらには公務もこなしておられる。我々より鍛錬に割ける時間は少ないだろうに。」


 男爵令息より僅かに高い身長、痩せ型。黒髪黒目。魔法士らしい体型に、性格の几帳面さを底上げする眼鏡を掛けた伯爵令息。


「そうなんだけどさー、でもやっぱりモテたいなー。集まったご令嬢たちは何の話をしてるんだろうなー。」


 男爵令息、伯爵令息よりひとまわり小さいく、ふわふわのハニーブロンドの髪に瞳。可愛らしい見た目と愛嬌の良さに定評がある子爵令息。


「伯爵令嬢と侯爵令嬢が話してるように見えるな…侯爵令嬢が扇子を持ってるから唇の動きは読めないが、よくある話なら


『貴女、殿下の目に留まろうと画策なさったのかしら?』


 …とか嫌味でも言ってるんだろうか?」


 男爵令息は真剣な眼差しで令嬢たちの空気を読む。


「おい!伯爵令嬢の返答を聞いて他の令嬢たちがくずおれたぞ!!」

 伯爵令息が青ざめてゆく。


「それなら、


『私は今度お茶会に誘う許可をいただきました!』


 これで嫌味な侯爵令嬢に対しての宣戦布告だな。許可だけでも取れれば大したものだ。他の令嬢たちが落胆するのも頷ける。」


 男爵令息はさもありなんと、訳知り顔をする。


「侯爵令嬢、更にやり返してるみたいだね!」

 子爵子息は令嬢たちの戦いを嬉々として観戦している。


「扇子を外してくれたぞ!ありがとうございます!


『お茶会ごとき、許可ごとき、でしてよ。参加するとは言われていないのでしょう?寵愛を得られると舞い上がっているなんて、お可愛らしいですこと。』


 …予想だけで騙っていたが、大体の話の流れは合っていそうだな。」


 男爵令息が読唇術を使える事実にふたりの令息は沸き立つ。

「伯爵令嬢、泣いちゃったよ!」


「侯爵令嬢は、勝ち誇っているようだな…」


 子爵令息は楽しんでいるが、伯爵令息は気遣わしげにしている。


「あれは…子爵令嬢か、話に割り込んだぞ。


『恐れながら申し上げます。こちらの伯爵令嬢様は殿下ではなく侯爵令嬢様をお慕い申し上げておられると推察いたします。殿下とのご挨拶でも侯爵令嬢様にあまり構いませんようにと果敢にも牽制されておられました。そしてかく言う私も侯爵令嬢様を誰よりもお慕い申し上げております。殿下にも伯爵令嬢にも身分では劣りますが、想いの強さでは引けを取りません。どうか私と伯爵令嬢様のこともお心の片隅に留めておいてはいただけないでしょうか。』


 そんな…そんな……」


 男爵令息は目を見張り、手で口元を覆う。

 苦悶し動揺する様子に伯爵令息、子爵令息は困惑し目配せをする。

 普通ではない様子だが、今はそれどころではない。

 あぁ、侯爵令嬢の返事が知りたい。

 友人の心配よりも顛末だ!

 逸る気持ちが勝った結果、正気を保たせなければとふたりは男爵令息の背中をばしばしと叩く。


「…うっ……くっ……


『その願い聞き入れましょう。』 」


 妖艶な微笑みというものを人生で初めて目の当たりにした男爵令息の心は震えた。


「侯爵令嬢、両手を出したよ!?」


 軽いキャラの子爵令息もさすがに驚いたようだ。興奮し伯爵令息をも叩いている。


「 『では、3人で楽しみましょう?』 」


 そこまで視界を確保する為に何とか堪えていた男爵令息。もはやこれまでと言わんばかりに涙を流す。すでに腰は死に絶えた。両手を膝に突き腰を支える。


「だ、大丈夫か?」

 慌てて背中を摩る伯爵令息。

 上擦った声は心配からか興奮からか。


「もしかして侯爵令嬢狙ってたの?」

 失恋かと訊ねる子爵令息。

 その笑顔は揶揄いなのか興奮なのか。


「違う!お前たちこの後の展開がわからないのか!?この後3人で侯爵家の馬車で侯爵邸に向かうんだよ。3人で2人席にぎゅうぎゅうに座るんだ。それから3人で湯浴みをして、ネグリジェに着替えて、3人で髪を乾かし合い、3人で髪を梳かし合い、それからケーキなんかを食べさせ合い……3人で仲良くひとつのベッドで眠るんだよ!!」


 涙を流し、熱い息を吐きながら息も絶え絶え訴える。

 いまだ腰は死んだまま。膝に手をついた状態だがまだまだ語れると意気込み、言葉を続けるために荒い息を整える。なんの反応も返して来ない令息ふたりを不審に思い、ふと見やる。


 伯爵令息は綺麗に立っていた。直立不動。

 ただ眼鏡は驚くほどに曇っていた。


 子爵令息は地面に膝立ち状態。無表情。ただ鼻血はしっかり流れていた。


「君たち、静かに。」


 異変に気付いた侯爵令息が近寄ってくる。


「近寄るな!今ここは非常に危険な前線だ!」

 男爵令息はふたりの状況から全てを理解した。


「あぁ、わかっている。私も話は聞かせてもらった。」


 話を聞いていたと宣う侯爵令息は無傷である。かすり傷ひとつ付いていない。


「なぜ、無事でいられるんだ!見ろ!このふたりの様を!これまで扉を薄目で眺めていた私でさえこの有り様だ。今まで扉の存在さえ知らなかったふたりが生きて帰れるはずもないんだ……それなのに君は!なぜ平然としていられるんだ!」


 男爵令息は怒りを爆発させた。立っていることもままならず、地面に這いつくばる。行き場のない怒りと興奮を拳に込め地面を殴る。

 幼少の頃より少しずつ、少しずつ認識してきた扉のカタチ。認識することに恐怖を感じる反面、背筋をぞわりとさせる昂りを感じることもあった。それが今!さっき!この瞬間!勢いのまま大きく開かれ、力強く招き入れられたのだ。


「私が無傷なのは、こなした場数の違いだよ。僕も思春期の頃に今日の君たちと同じように扉の向こう側へ放り込まれてね……懐かしいな。6歳くらいだったかな。あの瞬間があったから私は幸せを見つけることができたんだ。ようこそ、こちら側へ。

 今日まで世界と志を共にする者を得られずひとりきりだったんだよ。今日からは友が3人も居る!君たちに出会えてよかった!

 これまでに私が出会った崇高なストーリーは、ひとつも漏らさず書き留めているんだ!それもいずれ聞かせてあげるよ!」


 金髪碧眼。綺麗な顔立ちに爽やかな笑顔。すらりとした手脚に細身だが筋肉も付いている体型。これぞ正に王子様といったような造形をしている侯爵令息。長いまつ毛や目尻には透明な雫が、鼻の下には拭き取り損ねた赤い雫がきらきらと光ってきれいである。


「「「よろしくお願いします!」」」


 ようやく呼吸を思い出し眼鏡を懸命に磨く伯爵令息。

 鼻血をハンカチで拭き取り立ち上がった子爵令息。

 3人の手を借り、嗚咽しながらも立ち上がった男爵令息。

 お互いに肩を叩き合い健闘を讃え合う。


 彼らの表情は晴れやかで、瞳は強く煌めいていた。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




「殿下、気になる報告書が入っていましたよ。」


 側近の呼び掛けに王太子殿下は執務中の手を止め、先を促す。


「先日の公爵家主催ガーデンパーティーでのことだそうなんですが……

 まずひとつ。ご令嬢方10数名程が歩行困難、意識混濁、酩酊の状態で保護されました。

 そしてふたつ。ご令息方も同じく10名程が歩行困難、意識混濁、号泣の状態で保護されました。

 そしてみっつ。これが最も重要です。異常状態の彼ら全員に治癒魔法を施しましたが、効果がなかったそうです。その後一週間、経過観察として全員に診察伺いをした治癒術師によると『回復の兆し無し』との報告あり。変わらず治癒魔法の効果は顕れず、回復手段さえ不明。『時折恍惚とした表情を浮かべる』と報告を上げている要観察者の家族及び使用人多数。

 治癒魔法が効かない特異点。問題が大き過ぎるため陛下自らが調査の指揮を取られたわけですね。

 私たちがいる間は特にそれらしい変化などはなかったように思うのですが、いかがでしょう?」


「普段通りにしか見えなかったな。もし違いがあるとすれば、私たちよりも彼らの方が滞在時間が長いことか?陽射しがそこそこ強い日だったか?日射疲れなども考えられるだろうか?……それでも治癒が効かないということはないはずだが。……魔法特異点か。

 これが何か大きな事件の一端あるいは流行り病の前兆で無ければ良いのだが。

 陛下がこの報告書を私たちに回してくれたのは、解決せよとの命令ではないのだな。」


「ではまず原因ではないにせよ、日射疲れは危険ですので各家に、ガーデンパーティー開催時の配慮として日除けを設けることを共有しておきましょう。

 そして魔法特異点。陛下の真意。これらは深淵です。必要以上に覗き込み、自滅。それは御免です。私たちは勅命あるまで控えておきましょう。」


 ふたりは思案顔で頷き合う。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 公爵邸のロータリー。


 王家の馬車に乗り込もうとする殿下を後ろから押し込む側近。


「おっと。手荒いなっ。」

 座席に手をつき崩れかけた体勢を整える殿下。


「あなたが私を待たせるからです。」

 どかりと隣に腰を下ろし息巻く。


「悪かった。今度埋め合わせしよう。」


「当然ですね。それで、執務室と私室どちらです?」

 馬車が動き出すや否や急かしてくる。


「私室に頼む。」

 側近に指先を下から握られる。


 途端、視界に靄がかかる。


 およそ3秒後、

 明瞭になった視界に入るのは私室。

 馬車に乗っていた時と同じ姿勢のまま柔らかなソファにふたり並んで座っている。


「では、私はこれで。」

 側近は立ち上がり退出しようとする。

 その手を掴み、留める。


「これを持って行け。」

 専属侍女に用意させておいた包みを目前のテーブルから持ち上げ、手渡す。


「これは、以前もいただいた紅茶でしょうか?」

 包みを開けると香ばしく華やかな香りが立つ。


「ふたりの好みだっただろ?」

 香りを嗅ぎ、目を輝かせる側近。

 つられて頬が緩む。


「ありがとうございます。」

 側近の顔から不機嫌さが消え、本日初めての笑顔を見せる。


「あぁ。急ぐといい。」


「今度は殿下も参加してくださいね。」


 それでは、と軽く頭を下げてから再び転移魔法で消える。


 きっと今頃彼は蕩けるような笑顔になっているだろう。それを考えると自身の気持ちもふわりと浮き上がるようだ。


 着替えたら執務に戻らなければ。


 その時には私も同じ紅茶を淹れようか。




お読みくださりありがとうございます。

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