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妃教育。

その中には〝番〟の話も重要な事としてよくよく説明された。それは自分が想像していたよりもとても深いもので、〝番〟である相手を生涯で見つけられる事が奇跡という。

その奇跡が起きて此度、ハルア国第一王子アルフィス様との縁が結ばれた。

私としては〝一目惚れ〟であったが白銀龍であるアルフィス様には様々な変化があるという。

動悸や眩暈等、軽いものから重いもの。全て私の影響だという話だ。

緊張していたのは私だけで無いのが何よりだった。アルフィス様も同じく緊張していたのだ。そして〝番〟という不思議な縁に振り回されていただなんて思わなかった。

〝番〟には伝統的な給餌がある。

私は今、その伝統的な給餌に目を白黒させながら自国領にやって来たアルフィス様とお茶会をしている。


「さぁ、どうぞ。」


白銀に輝く光を身に纏うアルフィス様は今日も大変美しい。だが、手に持っているカットされた果物を差し出され、それを羞恥心マックスで口にする。


「あ、あの、これって、必ずしなくてはならないのでしょうか?」


もぐもぐごくん、と飲み込んでは次が運ばれる前に口を挟む。

とても残念そうな顔をしながらアルフィス様は答える。


「いえ…ヒト族との〝番〟なので無理強いは致しません。ですが、私は是非とも給餌がしたいです。」


アイスブルーの瞳が強く主張する。

寂しそうに揺れる瞳に、うっ、と罪悪感が湧き起こる。

そんな顔をされて断れるはずがない。

恥ずかしさからハンカチで口元を一度拭うと再び羞恥心マックスで口をあーん、と開けた。

すると、見てわかる程とてもとても喜んで果物を口に運んでくるアルフィス様。


「んっ、もう、お腹いっぱいですわ…。ご馳走様です。」


「それは良かった。また給餌、楽しみにしてます。」


にこにこと機嫌良くアルフィス様は私の頭を優しく撫でた。

ゆっくり、ゆっくり、優しく。

その心地良さに、あぁ、まぁいっか。という気持ちにさせる何かが私の中で生まれた。

給餌でこんなに喜んでもらえるならば恥など捨てて伝統的なものなのだから婚約者として受け入れるべきもの。

私も練習した微笑みを溢した。


「な、何て顔をするんだ!?」


「えっ!?」


私のリザ仕込みの微笑みは練習通りのはず。驚かせる何があったのか。


「他の男の前では絶対に笑わないでください!その笑顔は私だけのものだ。幼稚だと思ってもらっても良い。ですが〝番〟というものはこういうことです。」


紳士で優雅なアルフィス様が焦ったように私の頬を大きな両手で挟んで子供に言い聞かせるように言った。


「幼稚だなんて、思いません。私が〝番〟を理解しきれてないだけですわ。ごめんなさい。」


しゅん、と謝ってみると更に焦ったアルフィス様は今度は謝り始める。


「い、いや、私に余裕がないせいで…すまない。」


今度は両手を握られ温もりが伝わって体温が高いのがわかった。そして、私の手をアルフィス様の胸元に引かれる。

ドキドキと高鳴っている鼓動に驚く。


「私はローゼ嬢の虜です。この胸の高鳴りが全てです。」


少し潤んだアイスブルーの瞳が煌めいて美しい。

余裕が無いのは私も同じ事。

アルフィス様の手を引いて自分の胸元に持っていく。

どくん、どくん、鼓動は早い。

私だって緊張や恥ずかしさでいっぱいで余裕がない。


「わ、私も、この胸の鼓動の、通り、です…。」


すると、かぁーっと顔を赤くしたアルフィス様。一瞬固まってから胸元から手を滑らせて耳元に手がやってきた。

そして、小さく囁かれる。


「〝番〟として、この上ない幸せです。早く妻として迎え入れたい。」


その発言に私も赤面し囁かれた耳を押さえた。

ムズムズとする耳が恥ずかしい。


側で控えているリザはグッと握り拳を作り何か満足そうな顔をしていた。





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