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私は転生前はごく一般的な主婦をしていた。

タイミングは入浴中という何とも不思議な転生後、公爵家の令嬢として生きている。生まれてきた頃の記憶と転生前の記憶がごちゃ混ぜであるが、ローゼ・ティアドロップとして生きることは確定していたので貴族教育もローゼが元々持っていた才能を活かし何とかやってきた。表情が乏しいのは考えを悟られない為、とか今思うと転生前のローゼは日々色んなことに頭を悩ましていたようだ。

そして、婚約破棄からの新たな婚約。

そこら辺にいる、公爵家や男爵家でもない隣国の王族との婚約を結ぶ運びとなった。

自国領に帰り書状で正式に結ばれた。

家族には大変喜ばれ、リザは泣いて喜んだ。


私自身、中身は成人を過ぎたいい大人だったが、こんな日が来るとは思わなかった。

あるはずがないと思っていた

〝一目惚れ〟をしてしまったのだ。

白銀の艶やかな前髪の隙間から覗くアイスブルーの優しげな瞳。紳士な振る舞いに胸が高鳴った。私にとってアルフィス王子はキラキラと目に映り大変美しかった。

平静を装い、表情を崩さないように気を張って会話をした記憶しかない。頭の中はパニック状態で彼に魅了されていた。

そんな、お伽話から出てきたような王子様からの求婚。大変驚き自身の脈が速くなるも嬉しさが先に走った。

公爵令嬢として、はしたなく無いよう心掛けながら返事をした。彼は私の返事の早さに驚きながらも喜んでくれた。

彼からは公爵家を利用しようという気持ちが感じられなかったのと、本当に私を求めているのが伝わり、恥ずかしながら胸が熱くなった。


帰国する時も帰りの馬車へ乗り込む際、アルフィス王子に左手を取られると手の甲にキスを落とされた。かぁっと熱くなる顔を何とか隠し淑女の礼をして別れた。

頭の中では彼にされる全てのことに動揺していた。どうにも今回の婚約は私にとって途轍もない弱みにも似た喜びで舞い上がっている。





「リザ、私、ちゃんと笑えてるかしら?」


自室。

表情の乏しい〝荊棘〟と陰で呼ばれているのは承知で最も信頼しているリザに表情の作り方を聞いた。

リザは少し寂しげな顔を一瞬見せたが直ぐに私に向き合うともっと力を抜いて下さいませ。と、お手本のように笑って見せた。


「そう、そんな風に笑ってみたいですわ。」


自分の頬を撫でて見ては笑顔の練習をしてみた。

全てはアルフィス王子の隣に居るのが相応しい王妃となるため。ハルア国の妃教育も始まるのだ今からできる事は何でもするべき。私は凍った自分の表情と戦った。


「ローゼ様そんなに気負わないで下さいませ。ご心配されている程ではありません。どうか一時でも気を抜いてみて下さい。自然とお顔は緩んでくるはずです。」


香りの良いハルア国原産の紅茶を淹れてくれながらリザは苦笑した。


「そうかしら…?力が入り過ぎているのかしら…。」


ありがとう。と、紅茶に口をつけホッと一息。笑うだけで疲れるなんて、先が思いやられる。



「ローゼ様宛にお手紙をお預かりしておりますので、後でご確認をお願い致します。」


リザからセリス嬢より届いた手紙を受け取る。初めて届いた手紙に戸惑うが、少し分厚い手紙に何かあったのだろうと予想する。後でゆっくりと読むことにする。



昼食後、お父様に呼ばれて告げられたことに絶句した。元婚約者のクリス・テーゼ様より婚約破棄の了承と嫌味の手紙が返ってきたそうだ。

要約すると〝本当の愛に気づけて良かった〟らしい。

聖女様と婚約でもするのかと思えばそうでもなく。かといって他にご令嬢との婚約もしないとか。〝何を考えているのかわからない〟私より心優しく神聖な聖女様を支えて生きたいという内容。

お父様は手紙の内容を私に伝えるかどうか迷いながら、私宛ではあった為要約して教えて下さった。


「婚約破棄をして正解であったな。可愛い薔薇よ、これからはアルフィス王子と妃教育の事だけ考えると良い。」


手紙を蝋燭の火で燃やしながらお父様は言った。

仮にも元婚約者に宛てるような内容でない、全く嘆かわしい手紙にお父様も怒っていたようだ。

メラメラと燃えていく手紙を暖炉へ投げ入れると全て燃え滓となる手紙。私の気持ちも少しばかり晴れていく。


「聖女様と婚約される方はきっと心が海のように広い方なのでしょう。」


呟いた言葉にお父様は苦笑した。


「多くの貴族の男達を侍らせているのだから婚約はしないのだろう。聖女の存在で婚約破棄を公の場で告げられた者もいるらしい。ローゼの判断は間違っていなかった。」


やはり私の想像通りの展開があったらしい。

一歩間違えたら私が婚約破棄を言い渡されているところだった。社交の場、大勢の目線に晒されて断罪が如く婚約破棄を突き付けられる。そんな想像をし、ゾッとする。


「はい、お父様のご判断も早く助かりました。感謝しておりますわ。」


身震いする自分を叱責し、背筋を伸ばして淑女の礼。お父様の書斎から出ていく。


ハルア国へ輿入れする準備等やる事は山ほどある。妃教育の先生への挨拶もしなくてはならない。

過去は燃やした手紙で済ませて私は未来の幸せに希望を持った。











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