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私は荊棘姫と呼ばれる公爵家の令嬢だ。

意識の中ではついさっきまで家事をこなしていた主婦であったが、気がついたら入浴介助されており泡で塗れた頭をお湯で優しく流されていた。

衝撃的な目覚めだったが、私はこの令嬢に転生したのだと後々に自分で自分を納得させた。



薔薇が咲き乱れる庭のガゼボで紅茶を飲む。

一体何が引き金で私は私に転生したのかは謎のまま私は日々を送っていた。

何も言わずに紅茶のおかわりが置いたティーカップへ注がれる。メイドは失礼します。と一言だけ話したらまた距離を取り私の菓子や茶が無くなるのを見届けている。


「ありがとう。今日の紅茶も美味しいですわ。」


私の一言でホッとした表情を浮かべるメイド。名は何というか知らない。けれど知る必要もなかった。毎日私の傍に居てくれる彼女達は日替わりで交代するのだった。


ゆったりとした時間が流れる。

本当は今日、婚約者を交えた数人参加のお茶会であった。

だけれどもそれが皆んな来れなくなった。いや、来れないようある人物に仕向けられている。


私個人ではどうでも良いが、公爵家として虚仮にされていると執事が憤慨していた。


私が招待した方々は皆、聖女様のお茶会かお祈りの儀に参加しているのだ。権力としては公爵家が上だが国家で考えると聖女様の存在の方が大きいのだと知らしめられる。


それは別にどうでも良いが私が荊棘姫と呼ばれる所以。それは私が特段口が悪いだとか、物言いが上からだとか、そういう訳ではなさそうだ。

ただ、纏う雰囲気が皆にそう呼ばせてしまっているだけ。

ローゼ・ティアドロップこれが私だ。


「お聞きしてもよろしいかしら?」


メイドはピシッと背筋を伸ばして私の側へ寄ると緊張の面持ちでごくりと喉を鳴らした。


「はい!何でしょうか?」


「私、一体いつから聖女様に嫌われてしまったのでしょうか?何ならお茶会に聖女様もご一緒にいらしたら良かったと思いませんこと?」


それは…、と口籠るメイド。何やら考えて前向きな答えを見つけたようだった。


「きっと、偶然が重なってしまったのかと思われます。」


出てきた答えはハッキリしないもので、私も苦笑いを浮かべる。


「そうですか…。」


一般市民で主婦であった私は荊棘姫へ転生した結果、最初は何のトラブルも無く平和な日々を暮らしていくのかと甘い考えでいたが、どうやら勢力争いや権力、そして聖女様問題があるようだ。

普通、婚約者を差し置いて祈りの儀になんて行くことはない。それは私との約束より大事なのか。いや、違う。聖女様との時間が大切なのだと暗に示しているのだ。

転生当初はお姫様みたいな暮らしが出来るのか、と心躍らせたがマナーや公爵家のなんたるかを家庭教師に毎日叩き込まれ辟易していたが悩みのタネは他にも出来てしまった。


これは、物語でよくある〝婚約破棄〟を公の場で言われるパターンなのでは?、と考えに至る。


そうと決めたらやる事は一つ。私から婚約破棄を促すことだ。公爵家としてパーティー等の公の場で婚約破棄を告げられたら瑕疵がつく。そもそも結婚等求めていないのだから丁度いい。名案が浮かんだ、と思いつき、お父様の書斎へ足を運んだ。


コンコンと、失礼の無いくらいの力で扉をノックする。


「入りなさい。」


部屋からお父様の返事が返ってきたことを確認してから扉を開ける。淑女らしい所作でお父様の前に向かった。



「お父様、お願いがあって参りました。私の婚約のお話なのですが、解消させて頂きたいと思っております。」


お父様は一瞬、目を大きく見開いたが、直ぐにいつものにこやかな表情に戻る。


「私の可愛い薔薇よ、急にどうしたんだい?」


私を溺愛するお父様は私を薔薇に例えるのが癖だ。

私の転生した容姿は髪は黒髪で胸辺りまで長く緩く巻き髪。長いまつ毛で縁取られた大きな瞳は薔薇のような真紅だ。よく瞳の美しさを褒められている。

お父様もお母様も私の瞳を見ては可愛い薔薇、と言うのだ。

その可愛い娘が婚約を解消したいと願い出たのだ驚きもするだろう。


「失礼ですが、現在の婚約者様であるクリス様は聖女様が大切なご様子です。以前よりも何度も約束が守られなくなりました。これでは公爵家として黙って待っていられないと思っております。延いては隣国との貿易のため、新たな縁を隣国の方と結ぶ方が公爵家として良いのではと考えに至りました。」


ふむ、と考え込むお父様。きっと、お茶会がキャンセルされている事実は執事から聞いているだろう。

王族との婚約でもないのだからきっとこの話を考えてくれるだろうとお父様にお願いが届くよう両手を胸の前で組んで祈るように返事を待った。


長い沈黙の後、溜息混じりにお父様は答える。


「…可愛い私の薔薇がずっと我慢を強いられていたのは知っているよ。わかった、テーゼ家には文を出しておこう。」


顎髭を撫でながら私の表情を見て可哀想な事をした、と少し後悔を見せてくれたお父様。


「ありがとうございますわ!」


この時、これから隣国の王族とのお見合いが待ち受けているなんて思いもよらない私は自室に戻り万歳をしながらベッドへ飛び込み喜びを爆発させていた。








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