自分自身を見つめて
『さがしもの」をテーマに書きました。
あおい達の日常をちょっことのぞいてみました。
突然ですが、皆さんは、自分の気持ちを素直に伝えられていますか?
伝えられる方も、苦手な方も読んでいってください。(少し長いけど、すぐ読めると思います。)
それでは、いってらっしゃい!
雨が街をゆっくりと濡らしていく。
真夜中だから人の動きが少ない。家の中も家族が起きている気配はない。雨の音だけが部屋に響いている。
「おやすみ」
そうつぶやいたが、私の声は雨の音にかき消されてしまった。
私の名前は磯山あおい。中学三年生。私は今、雪が舞う中、傘を差している。現在気温は一度。寒い、とても寒い。吐く息が白い。なぜ、こんなに寒い雪の日にただ一人で立っているのかというと、友達を待っているのだ。早く来て欲しいと思っていたら、
「あおい、おはよう!」
「ちょっとさとみ、転ぶよ?おはよう、あおい。」
来た。私の友達。
「おはよう、二人とも。さとみは相変わらず元気だね。」
「私はいつでも元気です。」
こちらは神長さとみ。いつでも元気で場を盛り上げてくれるムードメーカーだ。
「さとみ、元気なのはいいけど、滑って転ばないでね。」
「わかってるよ、かなみ。相変わらずお母さんみたい。」
こちらは、長谷川かなみ。落ち着いていてみんなのお母さん的存在だ。
「それじゃあ、さとみは妹だよ。まあ、学校行こうか。」
「「うん。」」
三人で肩を並べ、歩いていたら、さとみが
「そういえば、昨日のテレビ見た?お笑いのやつ。」
「見た見た。」
「あおいは?」
「うん、見たよ。」
「私さ、あの三人組が好きなんだよね。二人同時にボケるやつ。」
「わかる。そして、鋭いツッコミ。」
「わかる、わかる。」
二人がそんな話をしている時、私は
(私はあの二人組の方がおもしろいと思うけど、、、)
なんて考えていたから、急に話を振られて驚いた。
「あおいも、好き?」
「えっ。あ、、、好きだよ。」
「やっぱりあおいもそう思うよね。」
またやってしまった。昔からそうだ。自分の意見を言わず、他人に合わせてきた。言いたいことはあるけれど、言わなかった。変な目で見られると思うと、怖いのだ。皆と違うのが怖い。自分に自信が持てないから他人と合わせてきた。だけど、このままでは自分を見失いそう。というか、もう見失った。自分が何をやりたいのか、何が嬉しくて、何が悲しいのか、それすら分からない。そう、私は今、暗くて長いトンネルの中にいるのだ、いままでずっと。多分これからも。だけど、抜け出したい、このトンネルから。そして、自分自身を探したい。
キーンコーンカーンコーン 始業のチャイムが鳴った。
「はい、席について。授業を始めるよ。」
国語の小池先生の声で皆席に着く。
「今日は皆に短い作文を書いてもらいます。」
えー、何それ。できないよ。楽しそう、などの声が上がる。その声を静止しながら小池先生は説明を続けた。その内容をまとめると、先生がくれる指定の言葉を必ず使い、短い物語を作れ、ということだった。指定の言葉は、一人一人違うという。それぞれ違う物語になるので、あとで他の人と交換して読み合うそうだ。原稿用紙と指定の言葉が書かれた紙が配られた。
「正義」
それが私の指定の言葉だった。
正義 磯山あおい
女の子が泣いている。周りには三人の男の子。見たところ皆、小学校低学年だろう。男のたちは、女の子に石を投げ、悪口を言い、いじめていた。なんとかしなくては、そう思っていたら、体が勝手に動いていた。
「やめなよ。」
「あんた誰。」
「やめるって何を?」
男の子たちが口々に言う。
「その子に石を投げるのを、だよ。」
「なんで?どうして?」
「女の子が嫌がっているからだよ。」
「やめないよ。」
「どうして?」
「こいつはみんなと違うから。」
「みんなと違うと何がいけないの?人はそれぞれ違う。個性があるの。だから面白いの。みんな同じ考えで同じ行動をしていたら、つまらないよ。」
「それは、そうだけど、、、。」
男の子たちは口をつぐんでしまった。そして、
「その、ごめん。もうやらない。」
女の子に謝った。
「偉い。偉いよ。よくがんばったね。さあ、向こうで遊んできな。」
「うん、分かった。」
そうして、男の子たちは走り出した。その背中に
「若いうちに色々と間違え、そこから何かを学びなさい。その経験は大人になった君たちを進むべき
道に導いてくれるはずだよ。」
と叫んだ。
「分かったよ、姉ちゃん。」
と元気のいい返事が返ってきた。
「大丈夫?」
「うん、ありがと、お姉さん。」
「どういたしまして。今度は、自分で嫌だからやめてって言おうね。」
「頑張る。あの、さっき男の子たちに言った言葉って?」
「私のオリジナル名言だよ、気に入った?」
「うん!」
「それは良かった。気をつけて帰ってね。またね。」
そう言って私はその場を離れた。わたしはよく、正義感が強すぎて疲れると言われる。だけど、この世界からいじめが無くなるまではこの正義感を持っていたい。私の正義で世界を平和にするのが私の夢だ。私は今日も、平和のために走り続ける。 〜終〜
「あおい〜、これすごい、泣ける。」
「うん、かっこいいこの主人公。やっぱあおいすごいわ。」
「ありがとう。」
今、書いた物語を二人に読んでもらった。上手く書けたか分からなかったけれど褒めてもらえたから良いだろう。ちなみにかなみの指定の言葉は「心」内容は母と娘の心の距離についてだった。さとみの指定の言葉は「妹」元気いっぱいの妹と兄の不思議な体験についてだった。二人ともとても感動できて笑いあえるものだった。
「あおいさ、これ、どのくらいで書いた?」
「うーん、けっこうすらすら書けたと思うよ。」
そう、この物語、思った以上にスムーズに書くことができた。まるで夢で体験したかのように、、、。
その日の夜、ベットに入った私は作った物語について考えていた。やっぱりどこかで体験した気がする。どこだろう。なんなのだろう。
「あっ!」
私は飛び起きた。思い出したのだ。
「あの時だったのか。」
私が一番忘れていけないこと。だけどなぜか忘れていた出来事。今、はっきりと思い出した。あれは、私が小学校一年生の時のことだ。桜が綺麗に舞う中、私は、いじめられていた。石を投げられ、悪口を言われ、つらかった、苦しかった。嫌だ、やめてと言いたかった。でも、言えなかった。今と同じで自分の気持ちを伝えられなかった。だから泣いた。泣くことしかできなかった。そこに現れたのがあの人だった。名前も学年も知らないその人に私は救われた。あの人の言葉が、笑顔が、頭から離れなかった。私もあの人見たいに強くなりたいと思った。桜が舞う中で見せたあの人の笑顔を私もしたかった。けれどこの出来事をいつのまにか忘れていた。
「なんで忘れていたのだろう。」
分からない、だけど思い出せて良かった。今日はもう寝よう。良い眠りにつけそうだ、そう思い私は、目を閉じた。
「おやすみ。」
「おやすみ、あおいちゃん。そろそろいいよね。」
「えっ」
今のもしかして、、、!目を開けようとしたが、私の意識は眠りの闇へと落ちていった。そこはまるで、深く暗く、先の見えないトンネルのようだった。
「若いうちに色々と間違え、そこから何かを学びなさい。その経験は大人になった君たちを進むべき道へと導いてくれるはずだよ。」
「分かったよ、姉ちゃん。」
あれ、このやり取り、どこかで、、、?
「君、名前は?。」
「磯山あおい。」
「いい名前だね。」
夢、、か。あの出来事の夢だ。
「あの、お姉さん。助けてくれたのは嬉しいけど、言いすぎちゃダメだよ。男のたちが傷ついちゃう。」
「はははっ、面白いね。でも悪いことは悪いって言っていいんだよ。嫌なことは嫌だって言っていいの。」
「でも、そんなこと言えないよ。」
「どうして?」
「みんなに嫌われちゃう。」
「なるほど、、。あおいちゃんよく聞いてね、嫌われてもいいんだよ。」
「ええっ!」
「クラス全員と仲良くする必要はない人は大勢いる。だから、気の合う人も合わない人もいる。そんな中、全員と仲良くなんてできるかな?それに、わたしは、君は、誰かに好かれるために、嫌われないように生きているのではない。人は意思のある生き物でそれを伝える術がある。言えばいいの。誰かに合わせる必要はない。ただ一人気の合う人がいればいい、と私は思う。だから言っていいんだよ、自分の気持ち。私はずっとあおいちゃんの味方だから。一人になんてならないよ。」
優しいお姉さんの声。なんだか眠くなりそうだ。だけど
「お姉さんの言っていることよーく分かったよ。」
「よかった、、、。」
「だけどやっぱり言えないの!言ったらまた、いじめられる。人の傷つくこと言わない方がいいし、年上の人の言うこと正しいから言うこと聞いた方が、、、」
「甘えんなよ!」
ビクッ 体がそう反応した。
「君はこれから先、ずっと年上の人の言葉に左右されながら生きていくのか。人の意見に流されっぱなしでいいのか!自分の、君の人生それでいいのか!人と合わせて、私悪いことしていませんみたいな顔しているけど、そんなのただの甘えだ。一人になったら何もできなくなる!たしかに、年上の人は経験が多いから言っていることが正しいことが多いかもしれない。だけど、それが全てではない。年上の人が間違っていることもあるの。そう言う時は指摘しなければいけないの。自分の頭で考えて、いい、悪いや正しい、間違っているを判断するの。間違っている時は言うの。もちろんその場の状況を見てからだけどね。」
「ど、どうやったら、、、身につけられるの?」
私は泣きながら尋ねた。
「普通に生活するの。いろんな人と触れ合い、間違え、教えてもらうの。大丈夫、あおいちゃんならできるよ。」
思い出したくなかった。今までで一番怒られたから。嫌な思い出だ。心に何本もの矢が突き刺さる。だけど向き合わなくてはいけない。今まで目を背けてきたから。あの人の言う通りだ。自分で良し悪しを決められないといけない。一人になったら何もできなくなる。あまり良い目覚めとは言えない。だけど、自分自身ときちんと向き合う覚悟が出来た。この出来事を乗り越えられた時、本当の自分に出会える気がする。長く暗いトンネルに一筋の光が差し込んだ。
「おはよう。」
始めての投稿です。上手く書けたか分からないので色々な意見、よろしくお願いします。
これからも少しずつですが、小説を書いていこうと思います。応援してくださったら嬉しいです。
皆様と過ごせる日々に感謝を込めて・・・