もしも玉手箱が割と開けてはいけないパンドラの箱だったら
むかしむかし、あるところに浦島太郎という男がおりました。
浦島太郎が釣りをしていると、子ども達がカメを虐めて遊んでいました。
「これこれ、弱いもの虐めは止めなさい」
浦島太郎は子ども達にパロスペシャルとキャメルクラッチを次々と決め、子ども達を虐めました。
「助けて頂きましてありがとうございます。お礼に竜宮城へお連れ致しましょう」
浦島太郎はカメの背中に乗り、海底深く聳える竜宮城へと向かいました。当然辿り着くまで息は出来ません。浦島太郎は酸欠で意識を失いました。
浦島太郎が目を覚ますと、目の前に謎の肉の塊がおりました。トドかアザラシかオットセイが人工呼吸で助けてくれたようです。
「ようこそ竜宮城へ。私はこの城を預かる乙姫と申します」
浦島太郎はその艶容な美貌を携えた乙姫に一目惚れし、ドンチャン騒ぎの大宴会で盛り上がりました。そして乙姫を必死で口説きましたが乙姫は首を縦に振りません。浦島太郎は時を忘れて乙姫を口説き続けました。
「む、そろそろ帰らねば……」
家に残してきた年老いた母親が心配になり、浦島太郎はカメの背中に跨がりました。
「これをどうぞ。しかしこれは開けてはなりませぬ。開けてはなりませぬ。絶対に開けてはなりませぬ」
乙姫が帰り際に玉手箱を差し出しました。
浦島太郎は再び海の中で意識を失うと、次に目覚めたときは地上でした。カメの顔がやたらと近く、妙に頬を染めておりました。
「では……」
カメが去ると、辺りの様子が違うことに気が付きました。浦島太郎の家は無くなっており、村の様子も何処か変でした。村人に話を聞いても浦島太郎の事は誰も知らず、どうやらココは100年後の世界のようでした。
「これは一体どう言う事だ!? もしかして竜宮城に居る間に―――」
浦島太郎は玉手箱を置き、ヒモを解きました。
一息ついて蓋を開けると、中から白い煙がもくもくと立ち上がり、浦島太郎を包み込みます。
そして浦島太郎はおじいさんになってしまいました…………。
「な、なんと……!!」
年老いた母を失い、村の仲間を失い、果ては自らの若さを失い、浦島太郎に絶望の波が続々と押し寄せます。
しかし、玉手箱の底には一つだけ希望がありました。
「……そうか、乙姫は枯れ専だったのか!」
浦島太郎は覚束無い足取りで虐められているカメが居ないか探し始めました。
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