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2-33 権力者への処罰

 街の上流階級とか指導者層とか、あるいは領主様の知り合いと言っていいかもしれないけど、そういう人の中に怪物の仲間がいる可能性は考えたくないだろう。


「わかった。兵士を街中に巡回させる。商人が大きな荷物を持っていた場合は中を改めさせる。誰かの屋敷の中に怪物がいる想定は……むう。考えさせてくれ」


 その想定をしたとして、相手は金持ちだ。そう簡単に屋敷の中を改めさせてくれるとは限らない。


 領主自ら命令すれば、金持ち連中も渋々ながら見せてくれるかも。

 けど、関係性に齟齬が生じて今後の施政に影響が出るかも。それを懸念してるのかな。


 お金持ちも大変だ。


 けど、僕たちにはあまり関係のないこと。

 ヘテロヴィトの捜索をとりあえずしてくれるなら嬉しいけど、そのやり方は任せよう。


「わかりました。では、ヘテロヴィトが見つかればわたしたちで対処します。相手の実力は不明ですが、わたしたちなら勝てるはずです。領主様からわたしたちに依頼したいことは、それが以上ですか?」

「いや。可能ならブレイズの件も対処してほしい」


 遠慮がちに言ってきたけど、それもなんとなく理解できる。


 誘拐されて行方不明とはいえ、危険な存在なのには変わらない。

 夜な夜な市民の顔を焼く、強い力を持つ少女とか、普通の兵士では対処できるかわからない。


「わかりました。正直、お金持ちの息女と関わりを持つのは面倒だと考えていますけど、必要とあれば受けます。ご存知の通り、バレンシア家とはわたしたち関係が悪くなっているので」

「ああ。もちろんだ。配慮しよう」


 あの家の当主とは対面したくない。それを領主様もよくわかっていた。


 それから、もう少しだけ話す。

 依頼されたヘテロヴィトとブレイズの対処をどうするか。


 ヘテロヴィトやブレイズの所在が明らかになった時にすぐに呼びに行けるように、指定した宿に泊まってほしいと言われた。

 外に出る時は行き先を告げた上、城の職員を一名同行させるとの要請も。


 仕方ないから受けるけど、これは司政官に言われたことと同じ。監視だな。


「ねえ。そういえばあの男、どうなったの? 司政官だっけ」

「屋敷にて謹慎を言い渡している。処分はまだ下されていないが、後任に引き継ぎの後、職を解かれることは確実だろう。それから数年は牢に繋がれるか、莫大な額の罰金が課されるかだ」


 ヒカリが思い出したように尋ねた所、領主様はためらいなく答えた。


「それ以上の処罰が下るかはわからん。独断専行とはいえ、奴も規律から大きく外れたことをしたわけではない。旅の冒険者に薬を盛ったり、兵を動員して拘束しようとしたことは問題があるがな」


 けど、どちらも未遂。兵を率いること自体も、彼の権限でできることではある。これで精一杯の処分なのだろう。


「お前たちにとっては不服かもしれないが……直接、恨みを晴らすことはできただろう?」


 だからあの男を、僕たちの前に放置したのか。


「わたしたちに薬を盛ったのは、バレンシア家と共謀ですよね? あの家に関しての処分は」

「同じく検討中だ。フェリクスも城において役職を持っていたが、それは降格となるだろう。それから、バレンシア家と司政官の家にで結ばれる予定だった婚約も、私の手で破棄されることとなった」

「婚約ですか?」

「そうだ。両家の結束を深めるために行う政略結婚で、私にも根回しの上、口添えを頼まれていた案件だ。私の手で無効にしても問題はなかろう」


 政略結婚のことは知らなかった。けど、司政官がバレンシアの家と妙に親しかった意味はわかった。


「まさかとは思いますけど、結婚するのはフレアさんですか?」

「いいや。長女と、司政官の息子だと聞いている」

「そうですか。あの人が」


 フレアが結婚に関わるならちょっとだけ事情が変わる。けど、直接関係ないなら別にいいか。


「相手の男とも、お前たちは会っていると聞いたがな」


 領主様はふと、そんなことをつぶやいた。

 その意味を僕たちは測りかねたけど、領主様はそれ以上なにか言う様子はなかった。


 一応は街の上層部の個人的な話。やたら詳しく語るのも変か。

 おおかた、城ですれ違ったとかかな。




 領主様との会談も終わり、城から出る。既に日は傾いていた。


 とりあえずは城の用意した宿に泊まろう。そしてそこで待機だ。

 ブレイズたちの捜索は兵士に任せる。出てきたら対処する。

 今夜にもさっそく、ブレイズかヘテロヴィトが暴れるかもしれない。休息は大事だ。


 僕たちのあとを、城の職員がついてくる。なんとも堂々とした監視だ。

 なにかあれば知らせてくれる要員だから、無碍に扱うこともできない。これなら司政官に見張られていた時と何も変わらないけれど。


 さらに言えば城の用意した宿屋も、司政官に通された高めの宿と同じだった。


「城の御用達の宿ですから、当然といえば当然なんでしょうね……」


 シャロが少し疲れ気味に言った。高い宿屋に泊まれることに文句はないけど、やっぱり気になるよね。



「ねえねえ。カミリアさんがいるよ!」

「あら。あなたたちは」


 高い宿屋に入ろうとしたその時、ライラが見知った顔を見つけた。向こうも同時に気がついて、挨拶した。

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