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魔法少女が異世界にやってきました!  作者: そら・そらら
最終章 同盟の最後

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15-15 ヘテロヴィトの潜伏場所

 よかった。とりあえずは一安心だ。敵のいない壁の向こうで一息つけるという意味で。


「この街の門は軽くて開閉に時間が掛からなかったから良かったですけど、王都の重厚な門では同じ手は使えませんよ」


 馬車から降りたシャロがやってきて忠告。わかってる。王都は、敵がいない方角から入ろう。そんなのがあればだ、けど。


「し、死ぬかと思ったわ……」


 荷台ではエイラが、母に抱きしめられながら震えていた。なかなか刺激的な体験だったらしい。


「ごめんね。けど、もう大丈夫だから。ここで待っててね」


 僕たちには、兵士たちの目が向けられていた。いきなりやってきた不審人物だもんな。


「僕たちは旅の冒険者です。王都に向かう途中でした。学術院と協力して、この怪物騒ぎの原因に対処するつもりです。彼女は学術院の、サラニカ・レンフィールの妹です」


 シャロをそう紹介すれば、兵士たちの警戒もかなり緩和された。

 サラはやはり、この街に来ていたのか。


「ハーピーの隣に女の子がいたと思います。彼女は魔法少女です。怪物に対抗できる力を持つ者。王都にいる彼女たちと合流して、怪物を一掃します。その前に、この街を救いますけど」


 怪物が隠れていると思しき場所を知りたいと言えば、彼らは兵舎へと案内してくれた。


 道中、壊滅した村について話すと、兵士たちは一様に沈んだ顔を見せた。領民を守る立場の彼らが、村一つを見殺しにしてしまったこと、悔いているのだろう。

 状況が好転すれば生存者の救出を行うと約束してくれた。


 そして状況を変えるためには。


「ヘテロヴィトですが、ここに潜伏していると思われます」


 兵士たちの指揮官と思われる壮年の男が、地図の一点を指した。


 これは領内の詳しい地図。真ん中にこの街があり、周囲の様子が描かれている。


 指されたのは、僕たちが来た方向とは反対側。街の西側で、王都に続く方向だ。

 街の西門を出るとすぐに、農地が広がっている。小麦を栽培していて、領民の食料事情を支えている。その農地の持ち主の家が点在しており、さらに農地を向けると牛を飼育している牧草地がある。

 その牧場の持ち主の家に潜伏していると思われる。


「この家は物見櫓からは見えません。ですが農地にある建物はなんとか視認できます。ミーレスは西側から来ますが、農地の建物付近から出た様子はありません。さらに向こう側から来ました」


 つまり、牧場の方から。主に飼育しているのは牛とはいえ、労働力として馬もいるのだろう。もちろんそれは農地も同じだけど、潜伏場所としては牧場の方が適しているか。

 街の櫓から見えるということは、そこから矢が届くかもしれない。敵に、その危険を冒す理由はない。


「農地の住民はどうなりました?」

「生存は確認できていません。人影は見えませんし、夜間も灯りがつく様子はありません」


 そしてミーレスは、その家々のある地点を通り越して柵まで迫っている。生存は絶望的か。


「数世帯分の人間と馬。ヘテロヴィトが食いつなぐには十分すぎる量ですね。ミーレスの出現はどれくらい前のことですか?」

「二日前です。門の中に入ろうとするように突進を仕掛けた後は、柵の周りをうろつくばかりです」

「積極的に攻撃は仕掛けてこない、と……」


 シャロは少し考える様子を見せてから、結論を話す。


「ヘテロヴィトは食料には困っていません。しかし日数が経てばその状況も変わります。その時に備えて、街の人間をここから出さないようにミーレスを展開した」


 捕らえた馬や人を食いながらミーレスを作り続ける。食い尽くしたら、街に一斉に襲いかかって新たな食料を得る。長時間外部との関わりを絶たれて食料の供給も滞った街は弱り、簡単に制圧できるだろう。


 つまり、時間が経つほどこちらには不利な状況だ。一方で希望もある。


「捕らえられた方たちは、まだ生きている可能性があります。死ぬと腐敗して食べられなくなりますから。……すいません、領民の方々をこんな風に呼ぶのは失礼ですよね」

「いえ、構いません……それなら、早く救出しなければ」


 シャロの、冷淡さと気遣いが混ざった言い方に兵士たちは明らかに困惑していた。けれど今は、対策を考えるべき。


「兵士も冒険者も王都に取られて、満足に戦力はありません。猟師の皆さんにも協力は取り付けましたが、それでも足りない。今は、住民から志願者を募っています」

「どれくらい来ましたか?」

「十人ほど……」


 少ないな。そりゃ誰だって、怪物とは戦いたくない。この街の住民はヘテロヴィトを知っているからこそ、対峙にためらいがある。


「仕方ない。集まった方々には、十分な装備を与えてください」

「ん? ギルはこの街の人にも出てもらうつもりなの?」


 僕の言葉に、ヒカリが不思議そうな声を出した。


 まあ確かに、魔法少女だけで動いてもいいと思う。兵士はともかく、戦いの素人が同行しても足手まといになりかねない。守るのも楽じゃない。

 けど、出させた方がいいと考えた。


「単純に人手が足りない。狙っている建物にヘテロヴィトがいるとも限らないからね。違う建物に移動して身を隠しているかも」


 全戦力でひとつの建物に突入している隙に、まんまと逃げられでもしたらまずい。複数の建物を一斉に攻撃したい。

 そのためには、少しでも多くの戦力が必要だ。


「それに、僕たちはずっとここにいられるわけじゃない。期間がどれくらいかはわからないけど、この街の人間だけで街を守らないといけない瞬間はある」

「だから、ここの街の人の手で怪物を殺したって実績がほしいのね。みんなの自信になるように」

「そういうこと」

「ふ、ふん。そんなこと、わたしだってすぐ理解したし! 巨乳に説明されなくてわかるし!」


 リーンが肯定してくれた途端に、ヒカリもわかってくれた。

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