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魔法少女が異世界にやってきました!  作者: そら・そらら
第2章 炎の魔法少女

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2-14 高級な宿

 城から出た頃には、空は白み始めていた。


 普通の街の人たちはそろそろ起きて朝食の準備をしている時間。


 夜通し起きてたことになる。

 いろいろありすぎて眠気を感じる暇もなかったけど、さすがにそれも限界。


 解放されたからには、とりあえず寝ないと。あと食事も取らないと。


 幸いにしてと言うべきか、司政官は宿を手配してくれた。

 城に近い場所にある、かなり格の高い宿屋。

 宿代は城が持ってくれるとのことだし、そこまで馬車で送ってくれるという高待遇。


「突然のことなのに部屋を用意できるあたり、お城にとっては御用達な宿なのでしょうね」


 馬車の座席でシャロが静かに言う。


 眠気に耐えられなかったらしいライラは、ウトウトしながらシャロにもたれかかっている。

 シャロはそんなライラの身を抱きながら、起こさないための配慮なのか小声で話した。


「こんなふうに部屋を用意させられるだけではないでしょう。きっと城の人間が、わたしたちを監視しやすい体制になっているのだと思います」


 だから宿を指定してくるのか。シャロが小声なのは、あまりおおっぴらに話したくない話題なのもあるだろう。


 監視というなら、馬車を動かしている御者も城の息のかかった人間だ。

 この会話に耳をすませていてもおかしくない。


「監視ね……あんまり気持ちのいい状態じゃないわね」

「でも、街の処置としては穏当なものかもしれません。わたしたちを捕縛して、ヒカリさんのブレスレットを没収するとかではなかったのですから」

「そんなことされたら、わたし怒って抵抗するよ? お城の中で暴れまわるよ? 破壊神の力、見せつけちゃうんだから」

「ええ。破壊神はともかく、城も警戒しているのでしょう。街の中心、統治の中枢部で暴れられても困るでしょうから。優しくしておいて金を渡して、それでおとなしくなるならそれに越したことはないと」


 表向きに、あの司政官やさらに上の人間がヒカリをどう思ってるかは別。

 なんらかの企みや悪意があってもおかしくはない。というか、態度を見るにそれは間違いないと思う。


 明らかに、魔法少女の力を欲しがっている。


 強力な力なのは間違いないから、軍事力として使えそうとか考えているのかも。だったらほしいに決まってる。


 正体がわからないし、僕たちから奪っても扱えるかも不明だろう。

 だから手元に置いて、監視することにした。


 けど穏当な関係を築けているなら、こちらもそれを維持した方がいい。

 下手な動きをして街の権力と対立するのは得策じゃない。


「向こうも、わたしたちのことは、お金で動く単なる冒険者と思ってるでしょうし。そう思わせ続けましょう。このまま、あの魔法少女と謎の泥棒を捕まえて報酬を貰ったら、さっさと街を出ましょうか」


 ああ。さっき割高な報酬を依頼したのも、こっちを過小評価させて油断を誘うためか。

 僕たちに対して、大した処置を必要としないと思わせるため。


 いいさ。今のところは、街の監視を受け入れておこう。




 宿で通された部屋は、僕がこれまで眠ったどの場所よりも綺麗で華やかな場所だった。


 比較対象が屋敷の粗末な部屋か、清掃は行き届いてるけど古くて狭い教会の寝所か、先日泊まった村の宿屋だから、街中の少し高めの宿がそれよりも良い場所なのは当然。

 それでも驚きは驚きだ。


「すごい! ふかふか! ベッドも広い! あたしもこんな宿初めて!」

「ねえシャロ! ほんとうに、ここにとまっていいの!?」


 旅をしていたリーンたちにとっても、初めての経験らしい。


「冒険者が泊まろうとは、なかなか考えない価格帯の宿ですからね。商人や、道楽で旅をしているお金持ちが泊まるような宿です。よその街の領主や王都の官僚が泊まるには、もう少し高めの宿になるでしょうけど」

「そうなんだ。高級ホテルって感じの場所はこの世界にもあるんだ。でもうん、確かにこの世界に来てから、やっと寝心地がいいベッドで寝られるって気分かな」

「ヒカリの世界だと、こういうベッドは普通なの?」

「うん。普通だよー。質のいいベッドも布団も工場で大量生産してるから。誰だって安く買えるの」


 ヒカリの世界が羨ましく感じることは多いけど、今もだ。

 こっちの世界では高かったり珍しかったりするものが、ヒカリの世界には当たり前にあるというから驚きだ。


「それよりも! 五人で泊まる部屋にベッドが三つ! ひとつはシャロとライラが一緒に寝るってことでいいわね?」

「ええ。それでいいですよ。ライラ、関わり合いにならずに、さっさと寝ましょう」

「わーい。シャロといっしょ!」


 リーンの質問にシャロはため息混じりに答える。

 無邪気なライラを抱いたまま、布団の中に潜ってしまった。


 女の子四人と一緒に僕も同じ部屋に泊まるって状況は、前に村の宿に泊まった時にも、これでいいのかと問題になった。


 ちなみに問題提起したのは僕で、他の四人は特に気にしなかった。

 なんなんだろう。冒険者ってこれが普通なのかな? 確かに野宿する時は男女混ざって寝ることもあるだろうけど、宿に泊まるときも同じなのか?


 そういう物なら仕方ないと受け入れることもできた。

 一応、ヒカリと僕は一緒の部屋にいた方が、不測の事態に対応しやすいって理屈はわかる。


 けど、ヒカリとリーンが僕と一緒のベッドに寝ようとするのは、明らかに変だと思う。


「大丈夫大丈夫。冒険者はそれくらい普通だからさ、ギル。安心してわたしと一緒に寝ようよ!」

「ヒカリ、冒険者についてそんなに詳しくないよね? なんで普通がどうとか言えるの?」

「え? えっと……リーンも同じこと言いそう、だから?」

「ここであたしを頼れる面の厚さがわからないけど、でもヒカリの言うとおりよ。パーティーといえば家族も同然。わたしとギルは姉弟みたいなもの。一緒に寝るなんて普通よ普通」

「姉……」

「わ、わたしだってギルのこと弟みたいって思ってるし!」

「それは知ってる」


 僕とヒカリの亡くなった弟が似てるというのは、前にも教えてもらった。だからヒカリは、僕を守るために戦ってくれる。


 それは嬉しいけど、だから同じベッドで寝ようって話にはならない。


「というか、ふたりでベッド使えばいいんじゃないの? 僕がベッドひとつ専有するのは、なんか気が引けるけど」


 どう考えても、これが最適解としか思えない。

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