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魔法少女が異世界にやってきました!  作者: そら・そらら
第1章 光の魔法少女

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1-53 狼よけ

 外から見た屋敷は異様に静かだった。

 死者が出た家は静かなものだけど、葬儀の準備も行われていないのはおかしい。何かあったと確信して、乗り込むことに。


 僕たちの来訪を、外に立つ門番は一応止めようとした。けれどこれも様子がおかしかった。

 狼の魔物に何か言われたのかと尋ねたところ、ガタガタと震え始めた。


 怪物を見て怖気づくとは、門番のくせに情けない。けどこれでほぼ確定。

 屋敷の正面の大きな扉を勢いよく開けた。


 直後、探していた相手の姿を見つけた。


「ヒカリ!」


 そう叫びながら、中に踏み込む。


 見慣れた屋敷の玄関ホール。ミーレスが床を覆っているけど、罠の類はなさそう。


 ヒカリとミーレス以外に、ヘテロヴィトとフローティアもいた。

 あと階段には見知らぬ男。背が高くて色白で、両目は青。


「クラウス! やはりそこにいたのですね!」

「シャロ。なぜここに……ああ。街で私が手配されていた裏には、あなたがいたのですか」


 同盟の人間の名前を、シャロが叫ぶ。

 それやヘテロヴィトと一緒にいたということは、やはりフローティアは同盟の関係者。


 姉に対して、裏切られたという気持ちも無くはない。けど、今はそれどころじゃない。


「ヒカリ! こっちに!」

「ギル! やっぱり来てくれた!」


 歓喜の表情を見せるヒカリに向かいまっすぐ走る。けど、敵だってそれを許さない。


 なぜか顔を押さえてうずくまるフローティアは動かないけど、ヘテロヴィトは僕を睨みつけていた。そしてミーレスに指示を出し、僕とヒカリに一斉に襲いかからせた。


 しかし異形の狼共は僕を襲わない。ただ遠巻きに見て、僕が近づけば道を開ける。


 うまくいった。ミーレス対策は機能しているようだ。



――――



「皆さん。これを服や体に塗ってください」


 屋敷に向かう前、シャロがお椀を見せながら言った。

 中には、緑色のどろりとした何か。


「狼が嫌う匂いを発する香草や、動物の脂を混ぜ合わせたものです。この街ですぐ用意できる材料としては、最良の物を作りました」

「なんか……確かに匂いがするわね」

「鼻のいい狼にとっては、きつすぎて近寄りたくない匂いです。全員が体中に塗る量は作れなかったので、手足や、首や心臓の上などの急所に塗るのが良いかと」

「これで、ミーレスはわたしたちを、こうげきしにくくなるよ」


 シャロが作ったなら間違いない。

 人の鼻にはそこまで気になる匂いでもないし、遠慮なく塗ろう。


「本気で狼避けをするなら、この手の香料を飲んだり、あるいは魔法を使って体質そのものを変化させたりもしますけど、そこまでやることもないでしょう」

「さすがに体質ごと変えるのはね。冒険者として、狼討伐の依頼も今後受けるだろうし」


 確かに、狼を狩る際はこの匂いは邪魔になるな。獲物が近づかないのだから。


 前にシャロが、砂漠にはそんなことをする者がいると口にしていたのを思い出す。リザードマンだっけ。


「逆に、狼を興奮状態にさせ引きつける香料も作りました。ミーレスをどこか一箇所に集めたい状況ができたら、使います」


 シャロが小さな小瓶に入った液体を見せる。


「そんなこともできるんだ……」

「状況や目的に応じて必要な装備を用意する。その知識を得るためにも、学問は重要です」


 知的な笑顔を見せるシャロ。戦いは不得手だけど、その知恵には助けられる。



――――



 狼が匂いを嫌がり飛びかかるのを躊躇っている内に、ヒカリへと急接近。その体を押し倒した。

 直後、ヒカリに背後から飛びかかっていた狼の体が、頭上を素通りした。


「ヒカリ。これを」

「これって……」

「直した。魔力も補充してある。だから戦って。それから……僕から離れないで」


 狼避けの香料をヒカリはつけてないから。そんな意味で言ったのだけど、ヒカリの受け取り方は違ったらしい。


「うん。もう絶対に離れない! 何があっても!」


 僕に身を寄せながら、ブレスレットをはめて叫ぶ。


「ライトオン・ルミナス!」


 すぐ隣でヒカリが変身していく。魔法少女の光って、こんなに温かかったんだ。


「闇を照らすまばゆい光! 魔法少女ルミナス!」


 その光に、周囲の狼は一層怯んだ様子。血を流す片目を抑えながらこちらを見上げるフローティアも同じ。


「その力は……失われたはずなのに」

「姉上。やはりあなたが……いえ。もうそんなやりとりは無意味ですよね」


 剣の切っ先を彼女に向ける。ルミナスも倣って剣を作った。


「怪物に協力していた罪、償ってもらいます」

「怪物じゃない! 燃えろ、炎よ! そして射抜け! フレイムアロー!」

「っ!」


 左目を押さえたままフローティアは立ち上がり、右手から炎の矢を放つ。ルミナスが光の壁を作りこれを防いだ。


「スキュラ!」

「ええ。アタシのティアの顔に傷を負わせた報い、受けてもらわなきゃね!」


 スキュラと呼ばれたヘテロヴィトが六匹の狼の足でこっちに迫りながら、触手を伸ばしてくる。

 ルミナスはそれを光の矢で牽制しつつ、僕の手を引き後退した。後ろにいた狼は飛びつく構えを見せながらも、匂いを嫌がり道を開ける。


「ギル。昨日はごめん。あいつを倒したいからって、周りが見えてなかった」

「いいよ。それより今は、あいつを殺そう。僕たちで」

「うん。わたしたちで!」

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