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1-47 教会への襲撃

 そんなことを考えていたその時、教会の扉が開く音が聞こえた。

 こんな時間に誰だろう。神父様が立ち上がり、様子を見に行った。僕とヒカリもなんとなくついていった。



「こんにちは。ヒカリちゃんって子はどこかしら? ああ……あなただったのね?」


 夜の闇を背に異形の怪物が立っていた。人間の女の形をしている上半身を支える、六匹の狼。それから触手。


 狼のヘテロヴィトは扉をくぐり礼拝堂へ入りながら、ヒカリに目を向けて言った。


「まさかこっちまで追ってくるなんてね。悪いけど、一緒に来てくれるかしら?」

「無理! あなたはここで死ぬから! ライトオン! ルミナス!」


 向こうはヒカリの名前こそ知らなかったようだけど、お互い顔は知っているらしい。つまり、あれがヒカリの探していたヘテロヴィト。


 変身しながらヘテロヴィトの方に突っ込んでいくルミナスと、異形の狼のたるミーレスを次々に作り出し応戦するヘテロヴィト。


 因縁ある敵ゆえに、ルミナスの怒りも理解できる。だけど考えなしに突っ込んでいく危うさを放っておくわけにはいかなかった。


 それにもうひとつ心配なことが。あのブレスレットに魔力の補充を最後にしたのは、いつだったっけ。


「神父様、シャロと一緒に子供たちを奥へ! リーンとライラをこっちに連れてきてください!」

「わ、わかりました!」


 子供たちの方へ走る神父様を見送りながら、僕もルミナスの後を追う。


 ルミナスは既に戦闘に入っていて、ミーレスの一体を光の剣で切り捨てていた。

 次に飛びかかってくる狼の首根っこをつかんで、近くにある礼拝堂の椅子に叩きつける。木が砕ける音と共に、ミーレスは動かなくなった。


「今日こそあんたを殺す! 絶対に!」

「ルミナス! 落ち着いて!」


 いつものルミナスと様子が違う。感情的で怒りに支配されている。


 光の矢を数本放ち、前からくるミーレスを一掃する。けれどすぐに次が来た。ヘテロヴィトの背後に隠れていたらしいミーレスが飛びかかってくる。


 ルミナスはそいつを蹴飛ばし、次のミーレスを剣で刺していく。

 蹴飛ばされた一匹は椅子に激突したもののまだ生きていて、ルミナスの背後に回って襲いかかろうとした。

 すかさずそいつの背中を剣で刺し、阻止する。ルミナスはといえば相変わらず、ヘテロヴィトを守るミーレスに対して怒りを露わにしていて。


「いつもいつもしつこいの! シャイニーシャワー!」


 掲げた右手に光る球体が生まれ、それが細かな光の矢となり周囲に一斉に降り注ぐ技。


 前にルミナスが使った時は、僕はルミナスに抱えられ一緒に跳んでいた。つまりすぐ側にいた。そうでなければ光の矢が当たってしまう。


 ルミナスは僕の存在を忘れているらしい。このままでは技の巻き添えに。


 咄嗟に、横にあった椅子の下に潜る。礼拝堂だから長椅子ならいくらでも並んでいる。

 直後、矢の雨が降り注ぐ。周囲の椅子が破壊されるのが見えた。僕が隠れた椅子もかなりの損傷を受けながらも、ギリギリ僕のことは守ってくれた。


 周囲のミーレスは当然、無事では済まない。ヘテロヴィトもそのはずだけど、自らが生み出したミーレスを何体も触手で引き上げ、傘にして防いだ。

 光の矢が刺さって絶命したミーレスを放り投げながら、狼の女は笑う。


「ふふっ。その技は強いわね。でもいいのかしら? 周りが見えてないみたいだから教えてあげるけど、後ろにはお友達がいたんじゃないの?」


 椅子から這い出ようとしていた際、ルミナスの背中がぴくりと震えるのが見えた。


「ギル!?」

「僕は大丈夫! それより戦いに集中――」


 椅子に潜って難を逃れたのは僕だけじゃなかった。通路を挟んで向かい側の椅子の下から、狼が二体飛び出してきた。


 すぐに起き上がって剣を構える。飛びかかってきた一匹の頭部に剣を振り下ろして殺す。

 が、その体に剣が深々と刺さり抜けなくなった。そしてもう一体がこちらに飛びついて。


「ギル! 今助けるから!」

「待って! ルミナスは自分の戦いを!」

「そうよ。あなたの相手はアタシ」


 複数のミーレスを従えたヘテロヴィトがルミナスに襲いかかったから、そっちに集中しなければならない。

 それにちらりと見たら、ルミナスのブレスレットの光はかなり弱くなっていた。このままじゃ戦えなくなる。


 けど、僕は僕の心配をしなきゃいけない。


 僕に飛び乗った狼は、やたら裂けた口を開けて噛み付こうとしてくる。両顎をそれぞれ掴んでそれを阻止しているけど、力負けしそうだ。狼の口が徐々に迫ってきて。

 感じていた重みが不意に消えた。乗っていた狼の体が横ざまに倒れる。


「大丈夫ですか!?」

「は、はい! 大丈夫です! リーンたちは!?」

「教会の裏口からも狼が入り込もうとしています! 皆さんはその対処に!」


 棍棒を持った神父様が助けてくれた。とはいえ、まだ危機は継続中。

 ルミナスの加勢に行きたいのに、新しいミーレスが来た。さっき切った狼から剣を引き抜き応戦。


 飛びかかってきた狼を剣の側面で叩き落とし、床に激突したそれの頭を蹴って止めを刺す。

 次いで大口を開けて迫ってきた狼に剣を噛ませて受け止めたところを、神父様が棍棒を振り降ろしてその頭部を砕く。


「ルミナス!」

「こっちは大丈夫! ……じゃないかも!」


 ヘテロヴィトがなぜルミナスを執拗に狙うのかはわからない。けど、大量のミーレスがルミナスの、しかも魔力を貯めている右手のブレスレットを執拗に狙っていた。


 ルミナスも必死に応戦しているけど、押され気味なのは明らか。今日の森の探索で疲れているというのもあって、動きが鈍いようにも見える。

 ブレスレットの光も消えかけていた。


 髪を結ぶリボンを解いて剣にして、応戦していた。けど、その剣もすぐに折れる。服を魔力変換するのは、そう長く持つやり方じゃない。


 そこに、ヘテロヴィトが自ら襲いかかってくる。触手を伸ばしてルミナスを絡め取ろうと試みている。剣でなんとか振り払おうとするルミナスだけど、その隙に横からミーレスが一体飛びかかった。

 それはルミナスのブレスレットにがっちりと噛みつき離さない。

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