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魔法少女が異世界にやってきました!  作者: そら・そらら
第1章 光の魔法少女

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1-44 破談

 ドレス姿のリーンが部屋に入る。その後ろに、できるだけ気配を消したヒカリも続いた。


「あまつさえ、最初は盗品をあたくしに贈るつもりでしたの? 全部聞いていましたわ。ガイバート様、あなたのことはどこか信用ならないとは思っていましたが、まさか盗みまで働くお方だったとは」

「ま、待ってくれマリリーン。これは誤解だ」

「誤解? ガイバート様は盗んだことを否定いたしませんでしたよね?」

「それは……そ、そうだ。マリリーン。渡したいものがある。君の為に作った物だ」


 君の為。今更そう繕っても無意味だろうに、兄はさっき手に入れたばかりのペンダントを渡す。

 無駄な抵抗、というよりはそれこそが罠だけど。


 ペンダントを一瞥したリーンは、それを忌々しげに床に叩きつける。


「よく見なさい。細工の中に、ドワーフ特有の文字で"豚女"と刻まれていますわ。そんなこと、一見して見破れませんでしたの?」

「な……」


 万が一ガイバートが盗みを否定した時でも破談に持ち込めるよう、リーンを侮辱する内容のペンダントをルベルノさんに作ってもらった。


「作らせた、ですか。こういう風になるように、あなたが指示いたしましたの? それともこのドワーフ様による、作れと強いた結果の意趣返しでしょうか。だとしたら、それを見破れなかったガイバート様の教養の無さには呆れますわね」


 リーンもこの男の行動を腹に据えかねていたのだろう。そして最後に宣言した。


「このような方と婚約など、家名に泥を塗る行為は受けかねます。お父様や他の方々に話して、破談にさせてもらいますわ」



 破談。その言葉を聞いたガイバートは、意味を理解しかねたようで曖昧な笑みを浮かべた。

 まさか、リーンからそんなことを言うなど思ってもなかったらしい。


 そうだよね。ガイバートは街で一番の魔法家の嫡男で、いずれ家を継ぐ男。領主様の補佐官になるのはほぼ確定。順風満帆な人生を送れるはず。


 当然、街の中に自分に逆らう者などいない。

 結婚も好きな相手とできるに決まっている。


 けど、リーンはそんなガイバートを拒絶した。



 作戦はうまくいった。破談ときっぱり言い切れた。僕の家は大変な不名誉を被ることになるけど、知ったことじゃない。


「ではガイバート様、ごきげんよう」


 そう言ってリーンは部屋を出ようとした。しかしガイバートはそれを許さなかった。


「吹け、風よ!」


 ガイバートの詠唱と共に室内に風が舞い、扉がバタンと閉まった。初歩的な風魔法。

 ガイバートは続いて、リーンに迫って両腕を掴み壁に押し付けた。


「勝手なことをするな、マリリーン。俺たちの結婚は決定事項だ。お前が何と言おうとな」

「ああっ! ガイバート様。そのような乱暴はやめてくださいまし……」

「ねえリーン。その口調むかつくから、そろそろやめない?」

「あ。ヒカリもそう思ってた? あたしもなのよ」


 強引に引き留めようとしたガイバートに対して、リーンもヒカリも冷静だった。もちろん僕もだけど。


「兄上。見苦しい真似はやめてください。自分の家の力を過信して、ルベルノさんに無茶を命令したのは兄上の失態です。その責任は取らないといけません」

「黙れ異常者が! 家のことに! 俺に口を出すな!」


 ガイバートはリーンを片腕で抑えたまま、片手を僕に向けた。そして詠唱。


「応えよ、大地の呪縛よ!」

「ぐっ!?」


 体が重くなり床に膝をついた。

 基本的な重力魔法。一定空間の重力を増し、相手の動きを封じるもの。


 この程度の魔法、ガイバートには造作もないこと。そして僕はそれで動けなくなった。


「全部お前が仕組んだことだな? 俺を嵌めようなど生意気な。身の程を知れとあれだけ言っていたのに学習しないとは。所詮は異常者、言葉も満足に理解できないか」


 好き勝手言うガイバートに、言い返す余裕など無かった。

 床に手をつき、倒れ込まないように耐えるしかない。顔を上げて睨み返すことすらできない。


 けれど負けるつもりはない。このどこまでも傲慢な男には報いを受けてもらわないと。


「口で言ってわからないようなら、痛い目を見させるしかあるまい。おいお前たち。この異常者を好きなだけ殴れ!」


 状況についていけず、部屋の隅で固まっていた手下たちに命じた。けど彼らが動く前に遮る声が。


「ちょっと待って! ねえヒカリ、あたしに何かするのならちょっとは我慢しようって思ってたけど、ギルを痛めつけるって言ってるわよこの人。どうする?」

「ライトオン・ルミナス!」

「やっぱりそうなるわよね。よっと!」


 ヒカリが変身する音を聞きながら、リーンは軽く体をひねって自身を押さえつけている腕から逃れた。そしてガイバートのガラ空きの胴に対して当て身を食らわせる。

 それだけで彼の体勢は崩れ、僕に向けていた魔法も解除された。


「ルミナスはあの三人をお願い! リーンと僕とでガイバートを捕まえる!」

「えー! わたしもそっちがいい!」


 なんて不満を言いながらも、ルミナスは男三人の前に立ちはだかる。


 真ん中のひとりの腹を殴り、あいている片手で向かって左側の男の胸ぐらを掴んで強引に引きずり倒す。哀れその男は、顔面を床にしたたかに打った。

 その勢いのまま片足で左側の膝を蹴り、バランスを崩して姿勢が低くなった所で、再度顎を蹴り上げた。昏倒して動かなくなる男。


「よし倒した! ギルのお兄さん覚悟!」


 一瞬で勝負をつけたルミナスだけど、その間にこっちも終わっていた。

 ガイバートが何かの魔法を詠唱する前に、至近距離にいたリーンが顔面を思いっきり殴る。さらに側面から僕が体当りして、彼の体を押し倒した。

 そのまま地面に押さえつけ馬乗りになる。


「兄上。いえ、ガイバート! あなたみたいな卑劣な男に、僕はひれ伏したりしない!」


 さっきリーンがやったように、顔面を思いっきり殴る。もう一度。さらにもう一度。

 それなりに端正だった顔に醜い青痣ができたけど、かまうものか。再度拳を振り上げて。


「そこまでです、ギル。やりすぎれば、憎む相手と同じ所へ堕ちますよ」


 凛としていて、でも優しい神父様の声。それを聞いて手を止めた。

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