1-30 森の中の戦闘
ルミナスは、先頭の馬の頭部を小さな光の矢で貫き殺す。その屍に跳び乗りながら、今度は光の剣を作って次の馬の首を切り裂いた。
血が吹き出すのをさっと避けながら、前方に向かってさっきのような大型光球を放つ。またひとつの木をへし折った。
残念ながら、そこに敵は隠れてないようだけど。
馬がもう一頭走ってきたため、ひきつけてから光の矢で射殺す。さっきの馬の死体の上にこいつを積み重ねて、身を隠す壁にしつつ再び大型光球を放つ準備に入った。
「おいおい。なんだこれは……」
「見ての通り、馬の怪物です! これがミーレスです!」
駆けつけたライネスが、絶命した単眼の馬を見て目を丸くしている。けれど驚いている時間はない。とりあえず、怪物の存在を直接見てもらえればそれでいい。
「ギル! 魔力が!」
「うん」
あれだけ大きな光球を連続して何発も放てば、当然魔力の消費は激しいはず。
ルミナスの隣に駆け寄り、手を握る。直後に弱い倦怠感に襲われながらも、ルミナスのブレスレットは眩い光を放ち始めた。
「よし! 行ける! このまま森の木、全部へし折れそうな気がした!」
「それはやめてほしいな……」
戦いで高揚しているのか無茶苦茶なことを言う。破壊神ってこのことかな。
すべての木を折るのは不可能でも、魔力の充填された直後のルミナスの攻撃が強力なのは間違いない。
敵が隠れていそうな木に対して、三発同時に大型の光球を放つ。そのうち一本は当たりだったらしく、光球が木に当たる直前に男がひとり、慌てて退避した。それをライラの弓がすかさず捉え、足を射抜いた。
ぎゃあという叫びと共に倒れる男。
「あの男に見覚えありますか!?」
「わからない! 近くで見ないと!」
昨日護衛と喧嘩していた冒険者の男に尋ねたけど、当然の答えが返ってくる。ここからじゃ距離がありすぎるし、敵はうつ伏せに倒れているし。
近づこうと前進を試みたところ、また馬が前から襲いかかってきた。ルミナスは木に放つつもりだったそれを、馬へと目標変更。馬の首から上が血しぶきとなって消えた。
「うあー。グロい。我ながら残酷なことするなー」
「ルミナス! 次が来る!」
「ギルさん! 敵が散開を!」
「そっちはライラ、おねがい!」
「うん、わかった」
敵も、木々に隠れるのはまずいと悟ったらしい。かといって馬に混ざって、正面からこっちに斬りかかる度胸はなく、左右に分かれて挟み討ちにする作戦らしい。
ところがそれには、隠れた木から身を晒す必要があるから。
「すごいな、嬢ちゃん……」
ライネスの感嘆の声が背後から聞こえた。ライラが短時間で弓を次々に放ち、左右から側面に回り込もうとする敵を次々に射貫いていた。それも器用に足だけ狙って無力化。
「あ! こいつ! 昨日酒場にいた!」
「間違いないな!?」
敵のうち、比較的近くに倒れた男に駆け寄った冒険者のひとりが、そう声を上げた。ライネスの確認にも大きく頷く。
「よし! 商人の護衛と馬の怪物の関係が確認できた! お前、領主様にこのこと知らせてこい! 商人を拘束しろとな!」
足の早い冒険者に命じて街へ走らせる。ライネスが声を張り上げながら出したこの指示は、護衛たちにも聞えただろう。そして焦りをもたらしたはず。
まだ無力化されていない護衛が数名剣を抜いて、走る冒険者を追いかけるのが見えた。その試みは無謀と言う他ないけれど。
「させませんよ」
穏やかな言葉と共に、神父様が護衛のひとりの前に立ちふさがる。そして手にした武器を振った。普段の様子からはちょっと想像しにくい、無骨な棍棒が彼の武器。
それで相手の剣を殴打して取り落とさせる。それに驚いた相手の腹を思いっきり殴って、地に伏せさせた。
直後に護衛がもうひとり迫ってきて剣で斬りかかってきたけど、神父様はそれを華麗に避ける。そして棍棒すら振るわず、相手の腕を掴んで体勢を崩させ、地面に叩きつけるように転倒させた。
彼はすぐさま次を倒そうとしたけど、その必要はなかった。
他の冒険者たちが、ひとりの敵をよってたかって袋叩きにしていた。少し可哀想だけど、酒場で言いがかりのように冒険者たちを馬鹿にしたのも事実。その報いを受けるのは必要かも。
「ギル。敵はあと何人?」
「わからない。ほぼ倒したと思うけど」
こっちが一方的に敵を無力化している戦況ではあるけれど、敵の残りの人数は不明。ルミナスは今も、前方から無尽蔵に迫ってくるミーレスを手当り次第に矢で殺している。
異形の馬の死骸が山を作る中、本命のヘテロヴィトの姿は見えない。奴こそがルミナスの狙いなのに。
ミーレスが来続けている以上は、この戦場にいるのだろうけど。
「向こうが動かないなら、こっちから行くしかないか。ギル、ついてきて! ライラは援護して!」
言うが早いか、ライラが頷くのすら待たずに、立ち上がって壁にしていた馬の死骸から姿を晒すルミナス。直後、矢が一本だけ飛んできた。咄嗟に光の剣でこれを弾き飛ばす。
「まだ人間も残ってたか。よし、まとめて片付けよう」
「そっちはまかせて。あたしが対処する。ルミナスは倒すべき敵を」
「ありがとう、リーン。行くよ!」
剣を抜いたリーンとルミナスが並んで前へと走る。その後を僕も剣を構えながら続いた。




