どこまでも天然な令嬢の波乱万丈伝
自分がダメ人間に分類されると思ったルイーゼは前世の女子力を生かし、今世の魔力を使って、人のために生きることを誓います!
令嬢の5歳が片づけとかできる訳ないし、そんなにわがままでもないのに、勝手に一人でわがまま令嬢だと思い込み、人の為に頑張り始めることで、なんだか色々巻き込まれてしまう令嬢の話
5歳
お気に入りの熊のぬいぐるみを散髪をしようとしていた時のことだった。膨大な量の情報が頭の中に流れ込んできた。
「え?なに?これ?」
なんと私は前世日本という国に住んでいて、平凡な公務員の両親と姉と弟と平凡な暮らしをしていた、大学を卒業後は公務員になり、市役所の受付をしていた。仕事帰りに事故に巻き込まれて、気がついたら熊のぬいぐるみを散髪していた。うん。日本人だった時も熊のぬいぐるみを散髪して、熊を虎刈りにするなー!と姉に怒られた。すごく怖かったので覚えている。そして、私に前世の記憶が蘇ったのは熊のぬいぐるみの恨みなのかもしれない。そう思ったら思わず熊のぬいぐるみに謝っていた。もちろん熊からのお返事はなかった。
「さてと。」
熊に謝って周りを見渡すと私の部屋の凄まじい散らかりっぷりにびっくりした。あれ?これ?ヤバくない?なにこのダメな子。というのも前世の私は片づけ大好き、お料理大好き裁縫大好きちょっと度を超す女子力高い女子だったのだ。よし、片づけよう。そう決めてあっという間に素敵な女子部屋が出来上がった。天才だ。何故かイメージ通りにあっと言う間に片づいた。その時の私は今世の自分のもつスペックにまだ気がついていなかったのだ。
コンコンと音がして怯えた侍女の声が聞こえた。
「お、お嬢様、よ、よ、よろしいでしょうか?」
「はーい、どうぞ。」
怯えた声かけになんとも間抜けな返事に対して明らかに微妙な顔をして侍女が入ってきて、そして、ものすごーく片づいた部屋を見てびっくりしていた。
「お嬢様!?お部屋どうなさったのですか?」
どうやら若干5歳にして私はわがまま放題に育ち、使用人たちに意地悪放題だったらしい。相当なダメ人間だったことがわかり脱力してしまった私はそこから3日間熱をだした。
目が覚めるとなんだか知らないがものすんごーい美形の夫婦が覗き込んでいた。
「ルイーゼ、気がついたのね?」
ふむ、なるほどママだね。
「ああ、良かった、心配したよ。」
パパだね。美しい夫婦に揉みくちゃにされながら鏡を見るとものすごーい美少女が映っていた。
目が覚め、改心した私はスクスク成長し、10年の時を経て、ちゃんと本当にちゃんとこの世界の淑女と成長した。
「おはよう。ルイーゼは今日も元気だね。」
日課の魔法剣技の練習をしていると幼なじみであるレンがやってきた。レンとの出会いは7年前の事だった。
その日は領地で作物が育たない場所があり、なんとかできないかと両親が視察に行くというので、せがんで連れて行ってもらっていた。大人たちがなぜ作物が育たないのか悩んでいた所に私の一言は衝撃だったらしい。
「なぜこんなにバラバラに植えているのかしら?水を撒くのも肥料をやるのもこれでは二度手間ね。」
私にとってはなんて事ない事だったが、彼らには衝撃だったらしい
「お嬢様??種子を撒いたらこうなりますよ?」
そりゃ撒いただけならこのようにバラバラに生えるわな。そこで芽が出たら苗まで育てて、畝に植えたら、効率よく水や肥料をやれるのでは、と提案した。すると作物がどんどん成長し、今では国一番の収穫量を誇るようになった。作物がどんどん成長したところがポイントで、実はこの世界には魔法があり、なんと、畝を作り、間引きするなど植物や土地の気持ちに寄り添ったかたちになったらしく土の精霊に愛されたのだ!すごい!え?なんで?てなもんよね。びっくり。その精霊の魔力量の多さを感じ取ってやってきたのがレンってわけ。どこの誰か?わからない。わからないけど精霊が仲良くしているから悪い人じゃないって事でこうやって話す仲になっている。それにレンがいると、何故かみんな調子がいい。だからなんかみんな仲良くなっているのだ。
「ねぇ、ルイーゼはさぁ、5日後のお城で開かれる舞踏会はどうするの?」
先週届いていた招待状のことかしら?
「うーん。着ていくドレスがあれば考えるけど、別にそんなに行きたいわけでもないから気が向いたらいくわ。」
何も考えていない発言だった。そもそもドレスを着るためにキッツキツに縛られるのが嫌なのだ。ご飯が食べられないじゃないか!だから着ていくドレスがないのだ。絞めないドレスってないのよね。はぁ。それにごはん食べると周りの女の子たちから蔑視されるのも嫌。王太子様の婚約者を決める会らしいから噂の見目麗しく大魔法使いという王太子を見てみたいかもとは思うけどまぁ無理はしなくてもいいかな。なんてそんなことを思っていたら
「ルイーゼってお城とか王太子とか、なんも興味ないんだな。行く気ねーじゃん。」
とレンに笑われた。
「興味が無いわけではないのよ。(みてはみたいぐらいには。)」
何故かその言葉にレンが反応した。
「じゃあさ、その舞踏会僕がエスコートして出てもいい?」
思わず赤面してしまった。え?レンのエスコート?いいのかしら?こんな剣技なんかやってる食い意地の張った私で。しかもドレスないしね。と思っていたら、
「僕がドレス贈るから!ね!」
有無を言わせずあれよあれよと計画を言われた。そこからが早かった。なんだかすごいドレスや装飾品が2日後に届いた。ドレスは絞めないけれどスタイルよく見えるつくりだ、ちょっと嬉しかった。でも、なんでサイズぴったりなのかしら?オーダーメイドっぽいのに。私のサイズは一般向けなのね。
「お嬢様大変お綺麗です。」
私を着飾ってくれた侍女が感無量と褒めてくれた。そこへレンがやってきた。
「レン、素敵なドレスをありがとう、どうかしら?」
褒めてくれると思ったのに無反応だった。あれ?私失敗したのかしら?黙って馬車に乗り、お城に着いた。何故か正面から入らずに裏から入った。レンは相変わらず何も言わない。なんだか、つまらなくなってきた。しかも舞踏会が始まったのにまだ控え室にいる私。なんだろ、ムカムカしてきた。そこへお城の騎士が来て何かをレンに伝え、レンは足早に出て行った。何も言わずに!もう一回言うけど何も言わずによ!だから、私も何も言わずに帰ることにした。だってレンってば何も言わないから!ちょっとぐらい綺麗だよとか言ってくれればまただかもしれないのに。待っててね、とか言えば待てたのに、言わないからよ。でも、すぐ帰るのは勿体無いからお城の中を探検しちゃうことにした。そこでまずは動きやすいようメイドの服を借りメイドになりすましたのだ!そこで味をしめた私はリゼと名乗って暫くメイドとして働くことになっちゃうのだけど、それはまた別のお話。でもって、私が居なくなって大騒ぎしたのはレン、改め、この国の王太子レオナルドだったのだけど、大魔法使なんだからなんとかすれば良さそうなものだけど、精霊の愛子の私は、精霊の思わぬ力でレンから隠されてしまい、どうにも探せなくなり、再び出会うのはなんと!一年後なのでした。そこまで私ってば行方不明でメイドさんしてたのよ、しかもレンの近くで。笑えるわー。
そして1年と2日ぶりの今日。
「ルイーゼ、綺麗だよ、誰にも見せたくない、隠しておきたい。」
と愛を囁かれてます。あの日そう囁いていれば1年の空白はなかったのよね。でもまぁ、色々経験できたから、私的には良かったかな。
「軟禁は嫌です、大魔法使い様。」
「君が僕のての中にいつも居てくれるとは思っていないよ、逃さないけどね。」
さらっと怖いこと言われました。まぁ、私も逃げる気はありませんけどね。