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 この小学校で働きはじめてもうすぐ一年になる。清心(しょうこ)は左手にゴミ袋、右手にからの鉢をもって、体育館裏の暗がりにふみこんだ。

 鉢をおろし、石を入れ、地面をシャベルで掘りかえした。土、生ゴミ、さらに土を入れ、ビニール袋でふたをする。ふたにはシャベルの先で小さな穴をいくつかあける。あたりをみまわし、壁際の木陰の、じめじめしていて人目につかない場所に鉢をすえる。数日前の雨がまだ乾ききらず、やわらかくなった土の上である。


 ――うまくいくかわからないが、やってみよう。


 生ゴミをどうにかして菜園用の肥料にしたいのだった。しかし知恵も道具もないので、まったくの暗中模索である。同じ木陰にあとふたつ、そういう鉢がならんでいる。どれも清心がここ数日、少しずつやりかたをかえてつくったものである。


 清心は顔をあげ、校庭の外、道路の向こう、荒れた畑の方をみつめた。

 (あぜ)、土の上、木々の陰。人影のひとつもなく、野放図にのびた草をなまあたたかい風がなでている。空にはうすいろの雲がひろがり、日のさす位置がはっきりしない。

 うごくのは草木ばかり。本当にそうか、たしかめてから、足早に校舎へひきかえした。不用意に外に出るのは、いまではとても危険なことだった。


 体育館と北校舎をつなぐ渡り廊下にはいり、通用口に鍵をかける。サッシに括り付けの簡単な鍵だが、ないよりはよほどいい。靴底を雑巾でぬぐい、廊下を体育館のほうへすすむ。手前の体育用具室のドアノブをひねり、入り口近くにシャベルを放りこむ。

 用具室の闇には、跳び箱や体操用マットが埃をかぶって(うずくま)っている。

 ひんやりと湿ったような、()えたような臭いがする。たまに使わないと(いた)むとは思うが、使っているひまがないのだ。

 戸をしめ、北校舎の廊下に向かった。内履きのスニーカーは、足音がほとんどしなかった。


 去年の六月、教師としてこの学校にきて、日をおかずここで生活をはじめた。

 片手でたりる数の子どもたちと、もう一人の教師。清心がきたときここにいたのは、たったそれだけだった。

 皆、それぞれの事情で行き場をうしない、この小学校以外に、くるべき場所もいられるところもなくなっていた。

 九十七年の夏、流行を始めた原因不明の伝染病が、それまでの日常を磨耗させてしまった。

 同時期に世界中で発生した、日本では人口の十八パーセントがその病によって減少した。清心がしっているのはそこまでだった。

 病のしくみは解明されず、流行はおとろえる気配がなく、老若男女わけへだてなく、人がぱたぱたと死んでいった。

 そのうち新聞、テレビ、ラジオが機能しなくなり、憶測すらきかれなくなった。人の噂は、かろうじて、数少ないインターネット端末からひろいあげられるのみである。

 そんな中、清心が教職につけたのは、幸運としか言いようがない。

 地元だが母校ではない。ただ一時、教育実習をした学校である。

 清心がかよった隣の校区は、小学校も中学校も、とうにすたれてしまった。近隣ではこの学校だけが続いていて、随分簡易的な実習だったけれど、きちんと受け入れてくれたのだ。

 そのときは教員が二人と用務の小父さんが一人、児童たちも二十人強、残っていた。それが、二年弱のあいだにほんの五、六人になり、帰る家もなく学校に住みついているときき、心配と縁がからんだ。正式な辞令はなかったが、市の、さらに小さな町内会の許可と依頼をとりつけて、ほんの少しでも力になれればとやってきたのである。


 (ひと)り残っていた教師は、清心を歓迎した。久野(くの)という二十九の男性で、四人の児童の身の回りの世話を一手にになっていた。実習のとき指導してくれた教員の一人である。

 久野の口添えと、新たに身寄りのない児童がみつかったらそれを引き受けるという条件をのむことで、町は清心をみとめた。


 どこの町も、伝染病におびえてよそものを避けたい反面、人口の維持に必死だ。食料の確保のため、団結し武装しては、人がきえていくというあえかなありさまなのである。

 それでも、清心たちは、決定的に飢えてはいない。

 流通は、特に食料に関して、弱いながら持続している。

 水道、ガス、電気も使える。お金の意味はかなり薄くなり、物々交換が主となっているが、住む場所も、着るものもある。必要以上の欲を出さなければ、生活に支障がない。

 治安は悪い。暴力や盗みが、前よりずっと日常的になっている。しかしそれが幅をきかせることはない。伝染病が団結をはばむからだ。

 皮肉でも不都合でもない。

 善悪も是非もかかわりがない。

 あらゆる集団をすりへらすのが、その病の役割のようだった。

 人間の生産的ないとなみをこそげおとすのが、その病だった。


 ――だからいま、まもられ生きているということが、何より貴重なのである。


 北校舎の廊下をあるいていくと、行く手から、にぎやかな声がひびいてきた。正面玄関のある、東側の廊下のほうである。


「先生、トマト大きくなるかな?」

「そうだなぁ、大きくなるといいなぁ。収穫できたら何が食べたい?」

「トマト」

「そうだな、そのままいくか」

「俺カレーがいい、カレー」

「お前は本当カレーが好きだな」


 廊下の曲がり角から、清心は声の方をのぞきこんだ。

 東校舎一階の廊下は暗い。校舎の東面にある児童昇降口のガラス扉を、すべてベニヤ板でふさいでいるからだ。

 廊下の中ほどに、児童たちが群がっていた。丁度、中庭の菜園の手入れからもどったばかりなのだろう。

 清心はそちらへ歩をすすめた。児童たちの中心にいた久野が、いち早くこちらに気づいた。


「ほら、八時半までに教室にいないと、清心先生に怒られるぞ」


 皆をみまわして久野が言う。はーいとこたえて、子どもらは手をあらうのもそこそこに走りだす。すれちがいざま、こちらへ向かって、先生、あとでねと声をかけてくれる子もいる。

 清心は手洗い場へ歩み寄り、独り残った久野の隣に立った。

 ときどき、こういうやりかたで、久野は自身と児童たちの輪に、清心をうまく入れてくれる。


「トマトは順調なんですね」


 Tシャツの袖をまくり、軍手をベルトにはさみこんで、久野は手をあらう。話しかけながら、清心は彼をみるともなしにみる。そらいろのシャツの背に、うっすらと汗がにじんでいる。

 うごきまわると暑くなる季節になったのだ。


「うん、このまま行ったらね。でも、人よりカラスがきそうだよ」

「網で覆ったら、やっぱり日当たりが悪くなりますよね」

「そうだなぁ、ただでさえ少ないからね。田んぼのあの目玉みたいな風船、効くかなぁ」

案山子(かかし)とか?」

「案山子はあれ、スズメ()けでしょう」


 そうですねと清心は(うなず)いた。農業に関する知識は、残念ながら、清心も久野も五十歩百歩である。

 栽培は試行錯誤だ。小学生向けの理科の実験では、アサガオやヘチマしかそだてない。しいて食べられるものといえば、ヒマワリの種くらいである。飢えを満たすにはたりない。

 久野の得意科目は数学だし、清心の専攻は古典だった。両方、実生活には不向きなのである。

 図書室に役に立ちそうな本があるかしら。清心が考えていると、軽い足音が、暗い廊下の奥からきこえた。

 ふりむくと、女児が一人、清心たちのもとへ近づいてきていた。

 信乃(しの)だ。三年生である。

 顎の高さまでの、丸っこいラインをえがく黒髪を、不自然にゆらしている。

 あるきかたがいつもと違った。


「どうしたの?」


 清心は駆け寄って問うた。

 信乃は片足のスニーカーを脱いで、かかげた。


「先生、くつひも切れちゃった」


 清心は切れた紐をみ、ほっと息をついた。本当だといってスニーカーを手にとった。

 信乃は靴下だけになった片足を浮かせ、もう片方でぴょこぴょこ跳ねている。


「代わりの紐をさがさないとね。ちょっと待ってて」

「じゃぁ、信乃は教室にもどって自習だ。ほら、行くぞ」


 きゃぁと歓声があがった。久野が信乃を肩にかついだのだ。

 いつもなら朝自習の監督は清心の役だが、交代してくれるのだろう。


「トミー先生、ぐるんぐるんして」

「そんなんやったら飛んでっちゃうぞ」

「飛びたぁい」

「飛ぶのは鳥と虫にまかせようなぁ」


 久野は児童たちからトミーという愛称でしたしまれている。それがほほえましく、清心にはちょっとうらやましい。

 二階へ行く二人とわかれて、清心は北校舎一階の被服室へ向かった。続き間の準備室に入り、棚をあさった。年長の子が履けなくなったスニーカーを何足かとってある。その中から紐を一本、抜きとって通してみると、ちゃんと使えた。

 幅と長さが違うから、左右不揃いになってしまうけど、そこは目を瞑ってもらうしかない。新しい靴を用意するより、現実的で手っとり早かった。

 きっとゆるしてくれるだろう。信乃本人も、まわりの皆もすぐ慣れる。わがままや厭味をいう者はいない。

 子どもたちは明るい。

 一日一日がにぎやかに、あわただしくあっという間にくれていく。

 みるみる大きくなる。

 一番年長の子はことし五年生だ。この地域の中学校は、うまく機能していない。

 ここも、いまは生きることが第一で、教育が行きとどいているとはとてもいえない。

 でも何より、(すこ)やかでいてほしい。

 十分な食事と睡眠、必要な衣類と住居。

 いつか、外に出るとき、できるだけ不自由のないように。

 駆けまわっていてくれるといい。突然、倒れてうごかなくなるということが、ずっと頭から離れないから。

 学校より、合宿所より、いまは家であればいいと思う。あの子たちが生きものとして、正しくすすんでいくための。

 清心は棚の戸をしめた。感傷的になりすぎるのはよくない。

 子どもたちは元気だし、仕事は山ほどある。

 それが現状だ。






 五人の児童は、三年生の二人をのぞいて、学年がばらばらである。下は一年生から、上は五年生まで。教員は久野と清心の二人だけで、クラスをわける余裕はない。教科書通りの授業をするのは無理であった。

 そもそも学校で寝起きしているのだ。毎昼夜をともにすごして、単に児童としてあつかうのは難しかった。

 久野は、食べ物や道具類の調達のため、しばしば外に出る。清心は、料理や掃除、洗濯、裁縫と、やることが後をたたない。

 子どもたちはそれぞれ、できることを手伝ってくれるけれど、大人がするべきことをさせるわけにはいかない。子どもが手ぶらで出ていくには、外は物騒すぎるのだ。

 それに、公共物だという点で、学校は狙われやすいようだった。

 校庭からはサッカーのゴールの網や梅の木、陸上コースのビニール紐など、いろんなものが持ち去られた。南校舎のすぐ外の花壇の土もごっそり盗まれ、ホース、柵、花、いろんなものが(むし)られた。窓に目張りし、戸を封鎖して、校舎の中をまもるのが精一杯だった。

 その上、器物の分配をせまられて、校内もかなり殺風景になっている。コンロや食器、蛍光灯にストーブ、児童五人とその養育者を維持するには多いとみなされたものは、片っ端から接収された。

 それでも、いることをゆるされている分、ましである。


 北校舎の二階、中庭に面した教室のひとつを、いまは教室として使っている。被服室を出た清心は、紐を手に教室へ近づいた。

 戸のガラスごしにみえる室内に久野の姿はなく、児童たちは席について本やノートをひろげていた。自習に集中している様子ではなく、隣や前後に仲よくならんで、お喋りなどしてふざけあっている。

 戸をひいて清心があらわれても、あわてて居ずまいをただすということはない。ただ、いないあいだに大騒ぎして事故を起こすということもなかった。

 信乃は奥のほうで、知利処(ちりか)ととなりあってすわっていた。女の子同士、学年はちがえど、二人は仲がいい。

 清心が近寄ると、知利処が口をとざした。会話のとぎれた信乃は、左右ちぐはぐな足をぶらぶらさせた。

 清心は腰を低くし、スニーカーをさしだした。


「これしかなかったわ。左右別々になっちゃうけど、我慢してくれる?」


 信乃は紐をじっとみて、こくりと首をふった。スニーカーを両手で受けとり、もとの足にもどしながらいう。


「いいよ」

「なんだよ、信乃、くつかえたの? 変なの」


 昆陽太(こやた)が声をあげた。男の子の中では最年長の四年生である。

 こだわりがなく、活発で、男児らのリーダー的存在だ。彼の意見は、ともすれば男児ら皆の考えになることがある。

 清心はそちらへふりむいた。

 信乃が気にするといけないし、不公平があると勘違いされるのはなおまずい。


「靴じゃないわ。紐だけよ。前のが切れちゃったの」

「なんだ。それちがう紐じゃん」


 短く刈りこんだ頭をかしげて、昆陽太は席をうごかないまま信乃の足もとをみている。不躾(ぶしつけ)だが、悪気もないのである。

 話せばわかる子でもある。清心は丁寧にくりかえした。


「これしかなかったのよ」

「大してかわらないわよ。ねえ」


 強い声が昆陽太に向かった。清心はおどろいて声の主をみた。

 知利処である。

 五年生で、児童の中では一番年上だ。

 年長だという自覚と、性別、性格の違いから、昆陽太とはぶつかることが間々あった。

 大らかでお調子者の昆陽太にくらべ、知利処は細やかで、まがったことが嫌いなたちである。おとなしい信乃をかばおうとしたのだろうが、やや険が強すぎる。

 すっきりした目もとの、(まなじり)をつりあげて、昆陽太を(はす)にみつめている。


「信乃がいいっていってるんだから、いいのよ。アンタが気にすることじゃないわ。でしょ、信乃?」

「うん」


 信乃が応じると、瞬間、沈黙が降りた。昆陽太がぽつりと、何だよとこぼす。知利処はそれをきっと睨んだ。

 清心はいそいで二人のあいだに割ってはいった。


「こら、喧嘩しないの。何度もいうけど、紐が切れちゃって、これしかなかったのよ。わかった?」

「清心先生、ぼくも」

「ん?」

「ぼくも紐かえたい」


 一番年下の(さくら)が手をあげた。ことし一年生だが、去年の冬から特別にひきとっている男児である。

 素直な言いように、清心は苦笑した。


「信乃は紐が切れたから、しかたなくかえたの。代わりの紐がたくさんあるわけじゃないのよ」

「駄目?」

「もし切れたら代えてあげるわ、もちろん。でも桜はすぐ大きくなるから、紐より靴をかえる方が早いよ」


 何だぁとつぶやいて、桜は皆の靴をみまわした。それから鉛筆をころがしはじめ、この話題には興味をなくしたようだった。


「じゃ、皆、自習にもどって。まだ時間はあるわよ」


 清心は皆の机をまわり、それぞれの課題を確認した。書き取り、計算、本読みなど。全員が学習をはじめたところで、教室を出ようとすると、背後に小さな声がきこえた。


「それ、いいね」


 肩ごしにかえりみる。

 三年生の亮治(りょうじ)が、ななめ前の席から信乃の靴を指さしている。

 険悪になる心配はない。二人の様子は、いたって(なご)やかだ。

 軽く息をもらして、清心はドアを後ろ手にしめた。






 一階へ降りていくと、耳慣れない物音に気づいた。階段の近く、昇降口へ通じる廊下の端にある、給食室からである。

 給食室の中には、外へつながる出入口がある。外部の者がはいりこんでいるという危惧もないわけではない。

 一方で、日に三度の炊事に使う、勝手しったる場所でもあったから、清心は足音をひそめて近づき、そっと扉をあけた。

 調理用のテーブルやレンジがならぶ広い空間の、奥まったところに、久野の後ろ姿がみえた。

 外へのドアの手前である。しゃがんでいて、足もとには工具箱がある。

 ドアの鍵がゆるんでいると、けさ告げたことを清心は思い出した。


「久野先生」


 呼びかけて鴨居をくぐる。背後へ歩み寄ると、久野は清心に背を向けたまま返事をくれる。


「ちょっと待って。俺でも直せそう」


 ドアノブと格闘する背中をみ、清心はつかの間待ったが、終わる気配はまだなさそうだった。


「さっきはありがとうございました。自習の用意をしてくださって」

「ん、うん?」


 ガチャガチャと戸を()()てして、締めすぎたかと久野はこぼす。


「紐あった?」

「はい。使ってない物から抜きました」

「そうだね、そうするしかないよね」

「桜がうらやましがってました。紐をかえたいって」

「困ったな。靴だってすぐかわるのに」


 久野はやわく苦笑する。桜の要求をまともに取り合おうとする様子はなかった。

 安堵して、清心も口もとをほころばせた。


「次のサイズの靴があるか、確認しておきますね。昆陽太は履きつぶしちゃうけど、亮治の方は物持ちがいいから」

「うん、たのむよ。ついでに皆の分も」

「はい」

「清心さんは大丈夫?」


 一瞬、どきりとした。

 久野はこちらに後ろをみせたままである。

 こっそり、息をととのえ、清心は答えた。


「大丈夫です」

「靴じゃなくても、いつでも言ってね。すぐ手に入るわけじゃないから」

「はい。ありがとうございます」


 (つくろ)い物があるからといって、清心はなるべく自然にみえるように場を辞した。久野はドアの鍵に夢中で、清心の方をほとんどみなかった。

 薄暗い廊下にもどり、清心は深呼吸する。

 久野はときどき、清心を《先生》なしで呼ぶ。

 それは大抵、二人のときで、わすれたころに起こるから、清心はいつまでも馴染まない。

 児童の前とそうでないときと、使い分けているのはわかるのに、ひどくそわそわしてしまう。

 ドアの鍵の構造は、清心にはさっぱりわからない。ほかにも、湯沸かしの配管やら、一台だけある車のメンテナンスやら、そういう仕事は久野のつとめである。清心はその分、日ごとの料理や、衣類や調度の管理をする。子どもたちの世話もその一環となる。

 だから、あの場で役に立てることはない。

 これは仕事の分担なのであって、なにも逃げだしたわけではないのだ。


 いいわけが必要な自分が呪わしかった。清心は悩むのをやめ、ふたたび被服室にはいった。児童全員の靴のサイズを思い返しながら。

 常に入れかわる子どもたちの靴のサイズは全部おぼえているのに、久野のそれはしらないのだ。準備室の棚の前で、ふと、そんなことに気がついた。

 外に出て、久野がみずから調達しているにちがいないのだけれど。

 久野の靴がかわっていても、それが久野の元からの持ち物か、中古品をちかごろ仕入れたものか、清心には判別がつかない。

 久野が一人で外に出ることの方が多いから、当たり前なのだが。

 ……なんだか、いやに不思議だった。

 なにがそんなに不思議なのか、清心自身にもよくわからなかった。




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