彼女とクラスメイト
「おはようっ」
そう、いつも通りだったんだ。
いつも通り。
そのはずなのに。
ーーーーーえっ?
こちらを向いた、クラスメイト。
知らない。
知らない、知らない、こんなの。
知らない、顔が並んでる。ーーーーこんなの。
「・・・・・誰?」
誰か、の呟きが耳に入った。
・・・・誰。
誰。
そんなのーーーーあなたが、誰?
どうして、ここにいるの?
ここは、私が三年間通っている教室。
ーーーー違う?
見慣れたはずの教室の景色が違う。違和感。疎外感。
日常のはずの景色が、異なっている。
教室の壁。ポスター。机の配置。そこにいる人間。空気。カーテン。
違う。違う。猛烈な、違和感。
教室の後ろ。
後ろの黒板に、昨日、落書きをしてーーーそこには、何もない。
そこにあるはずの、何気ないものが無い。
私の席。
ーーーーーそこには誰かが、座っている。
眠っている、誰か。
キーンコーンカーンコン、聞きなれた電子音がなる。
音が、歪む。
頭の中の眩暈と共鳴する。
どう、何ーーーーどうして?
今まで感じていた違和感。空気感とでも言おうか。
それが。
ーーーーパッチリと、はまった気がした。
「おーい、中に入れーーーー!席につけーーー!!席ついてない奴、遅刻だからなーーー!!」
聞きなれた、声。音がした。
その音源。
私を見て、驚愕に目を見開いた。
「・・・・・・お前、咲原・・・・・か?」
「・・・・・先生?」
間違い探しをするように。
ーーー今のその人の顔と、何かが合わさった。
自分で言ったはずの言葉なのに、信じられない。
「せんせい、先生、なんですか?」
この音域、この喋り方。
この人以外いないはずなのに。
その沈黙を破ったのは。
「えっ、先生今、咲原って・・・・もしかして・・・・、もしかして本当に!?」
「今、Sakuって言った?」
「あ、いや・・・・」
いやーーーーっ、嘘ーーーっ、本当にーーー!?とあっという間に騒がしくなる教室。
「ちょっと待て。おい、少し話を聞きたい。ちょっと外に出てろ」
ぽいっと、教室からつまみ出される。
先生の「ちょっと落ち着け!」だの何だと言った声がここまで聞こえてくる。
教室内は大騒ぎになっていた。
「・・・・・どう、して?」
私の呟きが、空気に溶けて消えていく。