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タイム・シークレット・バンド  作者: 鈴原さきこ
そして「タイム」
4/14

四年後の朝


「伝説ってさ、伝説になる前から伝説なの?おかしくない?」


 そう、彼女は言った。

 そのときに俺は、なんと答えたのだろうか。


視点 神宮貴人


 ぴぴぴぴぴぴぴぴ・・

 変わることのない電子音が、朝の目覚めの時間を教える。


(これ、弱いな・・・・)


 この目覚まし時計では、そう遠くない未来に寝過ごすことは確実だ。


(だけど)


 不思議なことにこの目覚まし時計に変えてから寝過ごしたことがない。

 逆に、この目覚まし時計では起きられないから、自分自身で起きてる。

 強力な目覚まし時計にすると、逆に起きられるだろ、と慢心して寝過ごした事がある。


(結局、自分自身の気の持ちようって事かね・・・)


「・・・・・・・・」


 気の持ちよう、自分の気持ち・・・。


 今日は「彼女」の夢を見た。

 一年前までは毎日見ていたのに、最近ではとんと見なくなって・・・

 いい兆候だと思ってたのにな、


ーーーーーーー悪夢だ。最悪だ。


ドンッ


 壁に目覚まし時計がぶつかる。

 軽い音を立てて、目覚まし時計が割れた。



ーーーー壊れた。


「壊れたなぁ」


 目覚まし時計、壊れちゃったな。

 自分で投げたから、仕方ないけど。


 壊れたなぁ。

 高校生の時の、自分を思い出す。

 「今日は夢で彼女に会えた」そう喜んでいた、馬鹿な自分を。


 手に取った目覚まし時計。どうしようもなく壊れた時計。

 ゴミ箱にも入れる気がしない、目覚まし時計。


「坊ちゃん?どうかしましたか?」


 物音を聞きつけてからか、ドアの向こうでお手伝いさんの声がする。

 中年のおばさんが、ドアの向こうでおろおろしている様子が伝わってくる。


 不安なんだろうな、はは、わずらわしい。


 ある意味、伝説だったよ。

 今ではもう、「キミ」が存在していたことさえ、分からない。

 本当におこったことなのかさえ、分からなくなる。


 あれは「伝説」にももっとも、近い。

 そんなことを考えている、自分自身が無意味だ。


 ーーーーーもう全部、消えてしまえばいいのに。



 


 


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