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タイム・シークレット・バンド  作者: 鈴原さきこ
そして「タイム」
2/14

四年後の夜


 俺の時間は、高校生で止まっている。



 視点 神谷優路


 「なぁ、どうしてあいつはいなくなったんだと思う?」


 俺の時間は、いつだって巻き戻る。

 どんなことをしていても。どんなに楽しいことをしていても。

 好きなことをしているはずだ。

 あの時ーーー「高校生」の時に、今、こうしていられることなんて、考えられなかった。本当に奇跡のような時間を過ごしている。

 でも、それでも。

 

 あの時、一緒にいた「あいつ」が、俺の隣にいない。

 どこを探してもいない。


 「なぁ、どうして・・・・、お前がいないんだよ・・・」


 いなくなって、気づいた。

 失ってから、気づいた。

 いつか。

 俺の隣からあいつがいなくなることなんて、分かりきっていたことだった。

 ずっと一緒だなんて、無理だ。

 それは、いつまで続くんだ。

 いつか。

 「あいつ」は俺の隣ではなく、他の人を選ぶかもしれない。

 そんなこと、分かりきっていたはずだった。

 

 その「いつか」がくることなんて。

 

 それなのに。


 自分のグラスに残った酒を煽る。飲むのが早すぎたのか。氷がカラン、と音を立てた。

その氷を眺める。その氷の向こう側、俺の向かいに座った男を視界に入れた。


「なぁ、お前だってそう思ってるだろ・・・・おい、ユウ、聞いてるのか?」


「聞いてる聞いてる」そう言いながらもメニューに手を伸ばす。


「もう耳にタコが出来るほど聞いてる、暗唱も出来る、ついでにこの後の台詞だって分かってるからさ」

 

 流石、我が悪友。


 (はは、冷めてー)


 行儀悪くテーブルに顔をつける。冷たいテーブルが、心地いい。

 我が悪友は、俺を放置して店員を呼ぶと、メニューを注文する。

  

 酔っ払い独特のジト目でしばらく眺める。


 「ん?」


 と、我が悪友は笑顔でこっちを見た。

 まだ、言い足りないことがあるんだろ、さぁ言ってみろよ、聞いてやる。

 そんな顔だ。

 

 ああ、言ってやるよ。今日はその為にお前を呼んだんだからな。


「・・・・なぁ、どうしてだよ・・・なんでいなくなったんだよ、あいつは。」


 言い飽きた台詞を口にして、ぐいっと酒を煽る。

 今夜も長くなりそうだった。



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