四年後の夜
俺の時間は、高校生で止まっている。
視点 神谷優路
「なぁ、どうしてあいつはいなくなったんだと思う?」
俺の時間は、いつだって巻き戻る。
どんなことをしていても。どんなに楽しいことをしていても。
好きなことをしているはずだ。
あの時ーーー「高校生」の時に、今、こうしていられることなんて、考えられなかった。本当に奇跡のような時間を過ごしている。
でも、それでも。
あの時、一緒にいた「あいつ」が、俺の隣にいない。
どこを探してもいない。
「なぁ、どうして・・・・、お前がいないんだよ・・・」
いなくなって、気づいた。
失ってから、気づいた。
いつか。
俺の隣からあいつがいなくなることなんて、分かりきっていたことだった。
ずっと一緒だなんて、無理だ。
それは、いつまで続くんだ。
いつか。
「あいつ」は俺の隣ではなく、他の人を選ぶかもしれない。
そんなこと、分かりきっていたはずだった。
その「いつか」がくることなんて。
それなのに。
自分のグラスに残った酒を煽る。飲むのが早すぎたのか。氷がカラン、と音を立てた。
その氷を眺める。その氷の向こう側、俺の向かいに座った男を視界に入れた。
「なぁ、お前だってそう思ってるだろ・・・・おい、ユウ、聞いてるのか?」
「聞いてる聞いてる」そう言いながらもメニューに手を伸ばす。
「もう耳にタコが出来るほど聞いてる、暗唱も出来る、ついでにこの後の台詞だって分かってるからさ」
流石、我が悪友。
(はは、冷めてー)
行儀悪くテーブルに顔をつける。冷たいテーブルが、心地いい。
我が悪友は、俺を放置して店員を呼ぶと、メニューを注文する。
酔っ払い独特のジト目でしばらく眺める。
「ん?」
と、我が悪友は笑顔でこっちを見た。
まだ、言い足りないことがあるんだろ、さぁ言ってみろよ、聞いてやる。
そんな顔だ。
ああ、言ってやるよ。今日はその為にお前を呼んだんだからな。
「・・・・なぁ、どうしてだよ・・・なんでいなくなったんだよ、あいつは。」
言い飽きた台詞を口にして、ぐいっと酒を煽る。
今夜も長くなりそうだった。