彼女と兄
目が覚めた。
目が覚めたら、点滴が目の前にある。
ああ、そうか。あれは夢だったのか。
怖かった。怖くて、壊れそうになる夢だった。
ここは、病院?
幾度となく訪れた事のある、清潔感と、病院独特の染み付いた匂い。
そして。
「・・・・兄さん?」
ばっ、と。
ベットの横、椅子に座った人物が顔を上げた。
「・・・・・・」
呼吸が止まった。
兄さん?
兄さん、だよね?
また、顔が違う。面影が。ーーーーこれは、兄、なの?
ぽろり、と大粒の涙が、彼の頬を伝った。
「お前、お前・・・・ちづ、千都なのか?」
ぎゅうううっ、と肩甲骨、そして上半身全てを抱きしめられた。
く、苦しいよ、放してよ。
彼の顔がある右肩辺りが、湿ってきてる。
うわわわ、泣いてる?
どうして?
うわっ、ちょっ、点滴をうたれた腕が痛い。針が変なところに入ったんじゃないか?ちょっとやめて。
「やめてよ、兄さん!痛いっ、痛いってばっ!!これ痛いから!」
離して!
思いっきり引っ叩くと、ようやく離れてくれた。
「千都、千都か。お前、千都なんだな」
「は?」
何か。私は千都ですけど。
「・・・・・」
何だ、これ。さっきの、夢の続きみたいだ。
「・・・・・」
「・・・・・」
「えっと、兄さん」
「千都」
声が重なった。
「あ、ごめんなさい、そっちからどうぞ」
「いや・・・」
そして、兄さんは。
「お前、この4年間、どこで何していたんだ?」