第八百二十一話 デイスってどんな人?
「やあ」
「オぅ、おゥ! カーナタクゥンの方から呼んでくれるなんて、嬉しいじゃねェか!」
スルトルの映像をコケシから出してやった。ショーはあからさまに不機嫌になり、カナタはそれを気にしながらスルトルに話しかける。
「実は……」
「ああ、聞いてた聞いてた。デイスのことだロォ?」
「うん。そうだよ」
「んなら、サマイエイルの奴も出してくれャ。一応な」
「にいちゃん……」
「ぷくー、仕方ないなぁ」
本当はすこぶる嫌だけど、俺はコケシからサマイエイルを出してやった。これで三柱揃う。
そういや全魔神とちゃんとお話しできるいつものメンバーの男性陣ってカナタだけだよね。
「出したよ」
「……………」
「ァー…………」
「…………」
むっ、出してあげたっていうのにサマイエイルは一言も喋らないよ。それどころかスルトルもシヴァも黙ったまま動かなくなっちゃった。
1分くらい経ったころ、カナタの手にはいつの間にかグングニルが握られており、その矛先をスルトルのコケシに向け始めたんだ。
「え、カナタ?」
「……三人ともさ、黙って何か考えるふりしてさ、メッセージで会話したりしてないよね?」
「アッ、バレちった?」
「テメェ……」
「やん、カナタクンもショークンも、二人ともコワーイ」
め、メッセージで会話してたなんて! それは盲点だったよ! そりゃ、俺たちに使えるものを一応この世界の神様であるシヴァ達が使えないわけないか。
そんな、俺に隠れてこっそり話してたかもしれないなんて……ぷくーだよ、ぷくー!!
「あらあら、アリちゃんまでほっぺた膨らませチャッテ」
「なにを話していたか言ったらどうだ?」
「言うくらいだったら最初っから言ってるゼ」
「おい、スルトル。あんまり助長するんじゃ……」
「サマイエイルは黙っててよ!」
「理不尽な……」
今大嫌いな人に喋られるだけでもイラってきちゃいそうだからね。ただでさえメッセージが使えるなんてことに気がつかなかった俺にイライラし始めてるんだから。
「ねぇ、シヴァ。何か言ったらどうなの? 話してた内容をいうか、地球で起こってることに何か知ってることをいうか、あるいはどっちも。とにかくなにか話さなきゃ……そうだね、シヴァもコケシに格下げするよ?」
「だってよ、シヴァ。どうする?」
「私はスルトルにデイスのことについて話してもらうために呼んだんだ。あゆちゃん、本当に申し訳ないが、私から言うことはない」
「むっ、そっか。じゃあスルトル」
しかし今日のスルトルの態度から考えてなにかを真剣に答えてくれるような気はしない。
俺らの話をちゃんと聞いてたならすぐに答えてくれてもいいものなのに。やっぱり倒されたことを恨んだりしてるんだろうかな。今までそんなそぶり見せなかったけど。
「いいのか、言っちまって。ああ、でもテメェーらに支障がない程度なら構わねーんだよな?」
「ああ」
「ちなみにアリムよ、我々が先ほどメッセージで話していた内容は、そのことについて言うかどうかだ」
「サマイエイルうるさい!」
「そんな理不尽な」
とりあえずサマイエイルに八つ当たりして、スルトルの言うことに耳を傾けることにした。デイスって人が一番よく関わっていたのはスルトルのはずだからね。
「初っ端から言う。実はデイスはアリちゃんも会ってるダーゼ?」
「え、そうなの?」
「我は喋ってもいいか」
「む、てことはサマイエイル関連で、だね? 仕方ないからいいよ」
「アモンという悪魔を覚えているか?」
「ううん、まったく」
サマイエイルとスルトルはずっこけた。なんだよ、覚えていないことが悪いのかよぉ。
「自分の奪った命くらい覚えてろよナァ」
「えー、一番最初にクリアしたダンジョンのボスとか……印象に残りやすいものしかいちいち覚えてないよ」
「……つっても覚えてろなんて言う方が無理な話か」
「うんうん」
特に悪魔なんてみんなを助けることに必死だったから、光夫さんとサマイエイルくらいしか記憶にないや。
それはそうとして。
「そのアモンって悪魔がどうしたの?」
「あれがデイスだ」
「カナタ達の話では綺麗なお姉さんだったって話だよ、ねぇ?」
「うん、まあね。桜ほどじゃないけど」
「まあ、リルほどじゃねーが……どっちかっつーと美人だったな」
悪魔たちの中で綺麗なお姉さんがいたら覚えてるはず! カルアちゃんのお母さんはサマイエイルに取り憑かれてたけど綺麗だったから戦ったときのことちゃんと覚えてるし。
「悪魔の中にそんな人いたかな?」
「アホかァ? そのままの姿のわけねーだろーが。テメェらだってしょっちゅう変装してるだろォ?」
「むっ、アホじゃないもん!」
「あゆちゃんはアホじゃないぞ、ちょっと注意力が散漫なだけだ!」
「あんましフォローになってねーぜ、それ」
アホじゃないもん! 注意力散漫でもない……あー、ちゃんと注意してたらまず死んでアナズムに来てないんだった。それに関しては言い返せないや。
 




