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第八百十七話 異変って言うのかな?

「いやー、あの世界はいいねー! 論文の締め切りを忘れてゆーっくり羽を伸ばせるよ」

「2週間まるっとお休みみたいなものだもんね!」



 アナズムから地球に帰ってきて早々、お父さんが伸びをしながら嬉しそうにそう言った。



「大変そうだね」

「いつもチャチャっと済ませちゃう叶とは違うの! まあ、あとは英訳だけだしなんとかなるかぁ」

「アナズムに持ち込んで書けばよかったのに」

「え、そんなことできるの?」



 叶はお父さんにあの世界への物の持ち込み方を教えた。お父さんは嬉しそうにその話を聞いている。

 


「へー、そんなことが……」

「そうそう、時間を広く使えるのもアナズムのいいところだからね」

「じゃあ次からはそうするかな。とりあえず今は目の前のことこなさないと」



 バタバタしながらお父さんは自分の仕事部屋へと行ってしまった。どうせもうすぐ朝食を食べるのに呼ばれるんだけどね。見届けたお母さんは何気なくテレビのリモコンをとり、電源をつける。



【グッドモーニンジャ! ニンニン!】



 いつもの番組がやっている。いまならあのテレビの中にいるやけにテンションが高い忍者にもついていけそう。

 画面は即座に真面目な感じに切り替わり、今日のニュースが映された。



【とても不可解なことが起こりました。昨日、午後9時頃、○○県☆☆市☆○町の一軒屋がまるごと氷漬けと成っているところが発見されました。周囲の家に被害はなく、そのその家のみが、まるでまるごと冷凍したように凍っていたとのことです。幸運にもその民家に住んでいた夫妻は日帰りの温泉旅館に行っており、無事だったとのことです】



 いきなり民家が氷漬けねぇ。そんなことってあるもんなんだね? しかもそこだけって……まるで魔法を使ったみたいじゃないか。

 まさか○○街は光夫さんのサーカス団がいま滞在してきる場所で、また光夫さんがやらかしたとか?

 いや、それは流石にないだろうね。



「うわー、なんか魔法みたいね」

「こんなことできるのってアナズムに行ったことがある人くらいじゃない? 私たちのうち誰かやった……? まさかね」

「でも自然現象でこうなるだなんてことはないでしょ」



 家がまるごと凍ってしまった夫婦、どんな気分なんだろう。画面にはその凍った家の写真が写ってるけれど、なんかほんとうに冷凍庫から取り出したお肉みたいな霜のつきかたしてるよ。

 家自体は解凍されたらまた普通に住めるかもしれないけれど、中の家電とかたくさんダメになってるんだろーなー。



【えー、いきなりよ、なんか寒気がしてよ、見てみたら隣が凍ってんだもん。そうそう、前触れもなく突然。えー、驚いたのなんの……】



 隣人だとかいうおじいさんがインタビュー受けている。つまり気がつかないほど一瞬か、少しずつゆっくり内部から凍っていったかだよね。



「叶、魔法じゃなかっならどうやったんだと思う?」

「液体窒素……いや、それでも無理だろ……なんなんだろ」

「叶でもわかんないか」

「俺だってわかんないことくらいあるよっ」



 確かにいくら大天才でも流石にテレビの情報だけでわかるわけないよね。

 それはそうと朝食ができたらしいから運ぶの手伝ってから頂く。真・料理のスキルを手に入れてるから、かなり美味しくはなってるけど、お母さんの味の特徴自体はなんら変わってない。

 このスキルの良いところってそう言うところ。

 だから無論、今まで作ってもらっていた美花の手料理も美花の特徴が残ってる。


 朝ごはん食べたら準備を済ませて家を出る。いつものように美花と鉢合わせ。



「おはようっ!」

「おはようあゆむぅ!」



 ガバっと抱きついてきた。甘えてくる美花の頭を撫で、放してもらったら学校に向かって歩き出す。



「今朝のニュースみた?」

「ああ、みたみた」



 やっぱりその話題になるよね。

 美花は困惑している様子。



「あんなの、魔法か何か使わないと無理よね?」

「うん。科学的に解明しようにも、流石の叶でも今の時点では何もわからないみたい」

「なんだろなぁ……あれ」

「さっぱりわかんないや」



 そのまま普通に学校に行き、ついたその先でクラスメイトも同じように凍った家の話をしていた。

 やっぱり不可思議だよねぇ。もしかしたらこのまま都市伝説とかになっちゃうのかしら。

 家が凍った場所って、ここからかなり離れてる……っていうかそもそも他県だから幻転地蔵が関係してるとも言えないんだよなぁ。


 クラスメイトの話を聞く限り、陰謀説や宇宙人説、大掛かりの自作自演説などもあがってるね。

 なにか自作自演して良いことあるのかな?

 


「やっぱり家の中にいたら凍ってたのかな」

「それはわかんないよ美花」

「もし凍るんだとしたら、有夢と抱き合ったまま冷凍保存されたい」



 一体なんという願望なんだそれは。

 


「裸で?」

「あ、さなちゃん……それについてはノーコメントで」



 会話に入り込んできた佐奈田に対し、美花はそう答えた。本当は裸同士が良いんだろうなぁ。

 でも一緒に凍らされる状況なんてないと思うけど。

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