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第八百十六話 無理なんじゃないか?

「ホー、何じゃ。呼びましたよね?」

「デイス……話がある」

「ォゥイ、なんだなんだァ!?」



 デイスはまたアリムの屋敷にやって来ていた。全魔神と意思疎通できるようにしてから、その場に正座をする。



「無理に何かやろうとしてるだろ」

「ええ、ちょっとこちらの世界で色々と試しておりました。今日はその報告をするために来たのですが……なぜご存知なのですか?」

「アリちゃんとミカちゃんから聞いたからだ!」



 シヴァはキレ気味にデイスに向かって吠えた。吠えられて居る本人は、その吠えて居る相手が犬のロボットなのでちっとも怖くない。 

 が、しかしそのシヴァから発せられた言葉で少々青ざめる。



「ま、まさか私が感知されてしまいましたかな? もしそうなら勇者も、瞬間移動ができる賢者もおりますから逃げるのは不可能……」

「いや、向こうの世界……地球に影響が出ているらしい。その話を盗み聞きしたんだ」

「盗み聞きしたならしたと、最初から言えばよかろう、シヴァ」

「いや、なんだか悪くって。それに盗み聞きだけじゃない、あいつらが直接聞いてきたのはお前も知ってるだろ!」

「クカカカカカ!」



 バツが悪そうにしているシヴァに対し、スルトルは大爆笑をしている。映像ながら犬型になってしまっているシヴァのところに歩み寄り、その頭をつついた。



「お前、地球に毒されてんなぁ。人間のモラルなんてどうでもいいだろ。俺なんて暇だから最近は覗きまくってるゼェ?」

「なっ……!」

「そういや、昨日のアリちゃん、いや、君とミカちゃんは激しかったナァ。何時間も抱き合って、昨日だけでお互い7回は……」

「やめてやらないか!!」

「クカカカカカ! いつガキができてもおかしくねーよ! クカカカカカ!」



 シヴァはスルトルに向かって噛み付く。もちろん、映像ではなくこけしの方に。



「いてェ! 痛くないけど!」

「はぁ……シヴァよ。仮にも神ならあまり人の子の恥事をのぞいてやるのではない。たしかにあの二人は少し控えた方がいいかもしれないが……」

「チェ、オメーまでなんだい」

「別に。我は神として威厳を持てと注意しただけだ」

「一番ボッコボコにされたけどな」

「むぅ……」



 この日のスルトルはなんだか上機嫌なようで、よく笑いよくからかう。三人はその時のスルトルがどんな性格かをよく知っているのか、ため息をつくことしかできていない。



「それよりじゃ。地球の方で現れているとは、どのようなものなんじゃ?」

「ああ……俺が入っていた封印具、それをさらに封印するための石像……そこにあるだろ、それと全く同じ容姿のものだ」

「たしか地蔵と呼ばれてるんじゃったな。それがどうかしましたかの?」

「首がしょっちゅう取れるらしい」

「ほ?」



 シヴァの説明だけじゃよくわからなかったデイスは首をかしげる。彼女の首は柔らかく、人としてはかなりの角度で曲がっていた。



「デイス、それはアモン……フクロウの悪魔の時の名残か」

「おっと、つい癖で。未だに首をかしげると変なところまで行ってしまうからいかんわい。それで、首が取れるのに何か問題でもあるのかの?」

「……この世界で何か、そう……神やそれと同等の存在が何かをしてる時、あの地蔵は首が取れたり、周囲に地球で対応できる程度の低ランクの魔物を召喚したりするんだ」

「ほほー、なるほど。つまりワシが何かしているかどうかはそれでわかってしまうと、そういうことじゃな?」

「そうだ」



 デイスはそれを聞くと、ため息をつき、実に不満げな表情を浮かべる。



「試すのもダメか……」

「いや、それに関しては、うまくごまかしておいた。おそらくそのまま実験を続けていても大丈夫だろう」

「アァン? テメェ、どっちの味方なんだよ。いつもわけわかんねーな」

「一応、あの子達全員の味方ではある! でもやはりここから出たいのは同じだ」

「ま、結局はそういうこったな」



 シヴァはやれやれと肩をすくみ、わざとらしく息を吐いた。そしてまたなにか考え付いたのか、ニヤリと笑う。



「だから俺もわがままで、人間どものあれこれ、のぞいちゃっていいよな?」

「それとこれとは別だ!」

「品位に関わる……やめておけ」

「……のぉ、サマイエイル殿や」

「な、なにごとだアモ…デイス」



 ジトッとした目で見つめてくるデイスに、サマイエイルは冷や汗をかいた。デイスは構わず話し続ける。



「貴方様は……ミカにアスモデウスという悪魔をけしかけましたよな? 品位についていうのはどうかと思いますぞ。嫉妬と性欲の悪魔……あれで、無理やり発情させ、もしあの勝負にアスモデウスが勝ったならミカは無理やり……」

「あ、あ、あれは悪魔を率いていたメフィストファレスがけしかけたのだ! 違う、私ではないぞ!」

「クカカカ! んなこと言うなら、俺もあのバカ王がサクラちゃんを無理やりアレコレしようとしてたしよ、そんな気にするこね……ェ……あー、シヴァ?」

「き……さ……ま……ら……!」

「許してくれよ、ほら、俺のもサマイエイルのも俺らじゃなくてシモベがやったことだし……な、な?」



 この後喧嘩が起こるだろうと察したデイスは、黙って一人だけその場から消えてしまった。いや、逃げた。

 そのあとシヴァによる、サマイエイルとスルトルへのコケシ越しの粛清があったのだった。

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