第八百十四話 王と親 2
「それでどうなんですか」
「ああ、国王様。どうとは?」
「魔法が無い世界とはどのような感じで」
お、早速国王様がお父さんに話しかけた。気が緩んでるのか敬語に戻ってる。特にそれをお父さんに聞きたかったのかな。研究者だしね。
「あんまりこの世界とは変わりませんよ。魔法の代わりに道具や武器が発達した感じです。例えば私たちは地球では普通、土塊を魔法で作って放つなんてできませんが、そのかわり銃というものがありまして」
「ほう、ジューですか。その肉を焼いてる擬音のようなものは一体……?」
「鉄で作った弾を火薬で発射するための筒ですよ」
まあ、本当ならこの世界出身で地球にやってきたリルちゃんにそういうこと聞くのが一番早いんだけどね。
いや、でもやはっぱり専門知識とかならお父さんが上か。聞き分けが大事だね。
「魔法が無いからこそ技術でカバーか……」
「なかなか面白いですよ。科学と言うのですが」
「科学ねぇ。銃以外にはどんなのが?」
「そうですね、例えば車とか」
「クルマ?」
この二人は同じような内容を繰り返してるね。さて、他の人の会話も聞いてみよっか。
ショーの親父さんと騎士団長さんが話し合ってるね。なんかこの二人雰囲気似てる。
「警察というのは我ら騎士団のようなものなのですな?」
「正確には違いますね。あなた方のように戦争に赴いたり魔物と戦ったリハ、近いことをする役職もありますが、基本的に無いですね」
「ではどのように?」
「一般的には市民、ここでいう住民ですか。みんなの平和を守るだなんて言えば簡単ですけど。詳しくするなら法を犯したものを捉えたり、治安の整備などに特化してる団体ですかね」
「なるほど、治安をよくすることを突き詰めているのですな」
やっぱり世界の役割的に近い職業だと通じるものがあるんだろうね。その後もよーく話し合ってるし二人ともワインをガブガブ飲んでるよ。
騎士団長さんってそんなにお酒飲むタイプだったっけ。あ、親父さんは思いっきり飲むタイプだよ。
ちなみにお酒はバッカスさんの会社のやつだね。この国が誇るお酒のメーカーだからね、国王様にとってお父さん達は大事なお客さんらしいから使ってるんだろうね。
「どうですか、この世界と貴方方の世界で商売に大きな違いなどはありますかな?」
「おや、オラフルさん」
お、向こうでは大臣さんがミカのお父さんに話しかけたみたいだ。大臣さんが一番、この国の経済流通とかについてはお城の住民のなかでは見ているはずだよね。
「そうですね。少し多すぎるようで、まだあまり把握できてませんね」
「おおっと、そうでしたか。ではこちらの世界とそちらの世界、どちらが経済のあり方は進んでますか?」
「商売人からの目線だと、地球の方ですね。ただ、この世界には魔物を扱う仕事が主に賑わっていたりするので」
「ああなるほど、魔物がいないのでしたな。確かにそれはだいぶ経済のあり方が違うでしょうな」
でもこっちの世界の方がポーションとか、優れてるものが多々あるんだけどね。頑張れば瞬間移動できる装置とか作ることできるようになるだろうしさ。
どっちもどっちだね。まあアナズムは基本的に地球でいう中世みたいな感じだから遅れてるのは仕方ないかも。
「ねぇねぇ、アリムちゃん」
「どうしたのカルアちゃん」
「アリムちゃんとアリムちゃんのお母様、とってもよく似てますね。ああ、でもお父様とも似てますね……そもそもお父様は男性なのですか?」
「えへへ、お母さん達に似てるってことは可愛いってこと? 嬉しいなぁ。うん、お父さんは確かに男の人だよ。信じられないかもしれないけど」
世間から見たら俺もあんな感じなんだといつも思い知らされる。カルアちゃんは俺のお母さんと、ミカのお母さんとショーのお母さんの4人で話してるうちの一人である王妃様の方を見た。そしてすぐに俺に視線を戻す。
「なんだか、アリムちゃんのご両親って期待というか予想というか、考えていた通りの感じでしたよ」
「そうなの?」
「はいっ! 少なくとも容姿端麗であるとは思ってました。ミカちゃんのご両親も」
「やっぱり?」
ミカの美貌は親譲りだからね。ミカを見れば親も容姿が優れてるってことはすぐわかるね。
「そう言えばミカちゃんは……?」
「あーっと……ああ、お城慣れしてないリルちゃんとその両親をカナタとサクラちゃんと一緒に励ましてるね」
「まあ……そんなに緊張することありませんのに」
「無理言っちゃダメだよ。今まで王族に縁なんてなかったんだから」
「そうですか……?」
お、二人に大司教さんが近づいて話しかけ始めた。この世界は宗教は一つしかないからね。
となると普通の人にとって大司教ってのも相当の地位になる。いや、実際相当の地位だし。
ビクビクしてたリルちゃん達は、大司教さんのお話によって少し落ち着いてきてるみたいだ。
「でもアリムちゃんは地位とかあまり気にしておりませんでしたよね? 礼儀作法は完璧でしたが」
「あはは、まあね! なぜか気にしなかったかな」
ただ単に地球とは関係のない世界だからそこまで気張らなくていいかって考えてただけだけどね。
好印象に捉えてもらえて良かったかな。




