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第八百四話 インタビューの依頼 (翔)

「つまり、学校にたくさんきてるんだな……インタビューの依頼が」

「マジですか」

「ああ、新年が近いから保留にさせてもらっていたけどな」



 なるほど、話の内容はこれだったんだな。たしかに超めんどくさい。



「どうする?」

「いや、断りたい気持ちで山々ですけど……断らないほうがいいんでしょ?」

「まあな」

「じゃあやりますよ」



 勉強も部活もしっかりこなせており、アナズムで過ごせばリルとの時間は十二分に取れる、そんな状況でなかったらオーケーしないだろうが。

 まあ、そもそもまだインタビューの段階だし問題はないだろう。



「わふぇ……ショーが雑誌や新聞に載るのかぁ」

「……フエンさんも人ごとじゃない」

「わふぇ!?」

「あの大会でばっちり写真を撮られ、話題になっている。さらに新しい留学制度の世界初の生徒だ。んで、今回一番話題になってる火野と同じ部活。……呼ばれないはずがない」

「わふぅー!?」



 んな、リルまで巻き込んじまうことになるのか。都合が一緒になるのはいいことか……?

 


「火野は受けてくれるとさっき言ってくれたが、フエンさんはどうする?」

「し、ショーとセットでインタビューなら…….まあ、なんとか」

「実はそればっかりでな」

「そ、それなら仕方ない……かな? わふん」

「決まりだな……すまんな、めんどくさいことになっちまって」

「別にゴリセンが悪いわけじゃねーっすよ」



 やはりめんどくさいことには変わりないがな。

 しかし、俺が取材を受けるのか……複数人の人命救助の手助けをした時以来だな。懐かしい。

 

 ゴリセンは俺に紙を一枚渡してきた。

 何かびっしりと文字が書かれている。



「それはインタビューを持ちかけてきた新聞社や出版社だ。目を通しておいてくれ。日時などは俺がコンタクトを取って、お前らに聞きつつ決める」

「わかりました……」

「そうか、インタビューについてはここまでなんだがな」

「わふ、まだ何かあるんですか?」

「ああ」



 ええ……なんだろう。

 何かまためんどくさいことなのだろうか。しかし、さっきと違ってゴリセンは少し乗り気というか、嬉しそうな顔をしてるが。



「火野、来年に行われる五輪世界大会……あるだろ?」

「わふ、ま……まさか……!?」

「その選手選考に参加しないか、という話が来てる」

「マジですか!?」

「まじまじ」



 五輪世界大会……。4年に1度行われる世界的運動大会だ。これに登録されてる種目で金メダルを取れば、その種目中、実質世界最高峰の選手ということになる。

 それの選考だ。……もしかしたらとは期待はしていたが、まさか来るとは。



「どうする?」

「是非、是非お願いします!」

「……勉強時間やフエンさんといちゃつく時間が減るかもしれないぞ」



 俺はリルの方を見た。 

 リルはニコニコしながらコクリと頷く。



「いいのか、フエンさん」

「わふぇ……私が彼の邪魔をするわけにはいかないから…」

「おめぇ、こんな良い子なかなか見つからないぞ今時」

「わ、分かってます…!」



 いくらアナズムで十分すぎるほど一緒に過ごせるとはいえ、リルは普段、俺とできるだけ居たいと言っている。それを削ってまで今の話に賛成してくれるんだ。

 礼はきちんとしなきゃなんねーな、あとで。



「言いたいことはこんくらいだ。……これから自分の時間がどっと削られるかもしれねぇ。もし、学年の上の方から落ちたりしたら、申し訳ないが……」

「テスト寸前になったら、私とみっちり勉強してもらうので大丈夫ですっ」

「そうかそうか。やっぱり学期末で一位が四人も居たのって、フエンさんのおかげなのか……?」

「まあ、そうですね。リルは頭いいので」

「ははは、そうか! ……お前にとってフエンさんと付き合うってのは、だいぶ人生を変えたみたいだな!」



 確かにリルのおかげで俺の人生はいい方向にガラリと変わっただろうな。


 そのあとすぐにゴリセンと別れた俺とリルは、腕輪組んで帰路についていた。



「ほんとにすまんな、リル」

「いいのいいの!」



 あー、幸せだ。リルが俺の彼女でよかったぜ。

 それはそうと、いま、なぜか一件の豪華な建物が目についてしまったが。振り向いてみるとそっち系のホテルのようだ。


 そういやリルはずっと、俺とこういうところに入りたがっていた。……いまは顔と姿すら、アイテムによって変えられる。そしてリルへのお礼にもなるはずだ。

 


「なあリル……」

「わふぇ?」

「どうする? ここ。もうアイテムの力で俺たち、どうとでもなれるが」



 俺はホテルを指差した。 

 リルは目をまん丸くする。



「いいの?」

「ああ」

「……わかった。じゃあ……ん、ちょっと待って」



 リルはニコニコしながら俺の手を取ったかと思えば、すぐにしかめっ面をして自分の服を嗅いだ。

 そのあとすぐに口臭チェックをし始め、さらには自分の髪の毛も嗅ごうとした。さらに自分のお腹も、また触る。

 そして涙目になる。



「ごめんなさいっ……今日は……無理……」

「んな、気にしなくていいのに」

「……私も、なるべく最高の状態でしたいんだ……。ごめんなさい……」

「ま、そういうなら……また次のデートにでも」

「わふん」



 やっぱ焼肉食った後じゃダメだったか?

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