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第七百九十六話 知られたくないこと

「連絡があったから来ましたぞ。何用ですかな?」

「デイス、来てくれたか。いやなに、今日は色々とあってな」



 自分がいる部屋に転移して来たデイスをシヴァは迎えた。側にはスルトルとサマイエイルが入れられているこけしが転がっていた。



「足元にそれがあるということは、成功したのですな?」

「うむ、あゆちゃんの目を盗んで少しばかり改造させてもらった。昨日突然そのチャンスが来たからヒヤヒヤしたがな」

「封印し直される際に少しだけ力を残しておいて正解でしたな」

「ギリギリだけど。……さてと」



 シヴァはこけしについているスイッチを押す。スルトルとサマイエイルの立体映像が現れた。

 


「フゥ、やっと意思疎通できるゼ」

「なかなか不便だったからな」

「御二方とも、しばらくぶりですじゃ」

「イヨォ、デイス。まだアリムちゃんに発見されていないようで何よりだぁゼ」

「アモン……じゃなかった、デイス、あの戦争以来だな」

「ええ、お久しぶりですな。ほほほ……お二人ともがコテンパンにやられるところをしっかりと見ていましたとも」

「ぐぅ…」

「ハーッハッハッハッ、ありゃあどう頑張ったってオレ達じゃ勝てネェヨ」


  

 サマイエイルは悔しそうな表情を浮かべ、スルトルは笑い飛ばしている。シヴァはそんな二柱を犬のまま見上げながら、こう言った。



「どうだ、あの子たちはすごいだろう?」

「んで、テメェが自慢げなんだよ」

「確か、生まれてからずっと覗いていたのではなかったか?」

「うーわ、変態かョ」

「違う、土着神的みたいなノリであの子達を見守っていたんだ」



 訝しげな目で見てくる三人。シヴァは目をそらした。

 そのまま彼は本題を話し始める。



「それで、デイス。アリちゃん達が触れ出したんだが、どうする?」

「というのは?」

「アリムらがやっと、賢者やこの世界に送られてきた人間が最初にメッセージを送ってくる者のこと、この世界に元々住んでいた人間がレベル上げに関して疎すぎることを気にしだしたんだ」

「今まで気づいてはいたようだが動かなかっタ。あのメンバーの中の、狼族の親父がダンジョンのことについて調べた途端に襲われたっていうのを聞き、動いたって感じダワナ」

「それでなんと対応したんですかの?」

「とりあえず危険性を説明し、興味をそらしておいた。我の言葉はすんなりと受け入れてくれるからな、アリちゃんは」



 うんうん、と満足そうな顔でシヴァは頷いた。三人はそれを横目でみる。



「あの子が可愛いのはわかる、が、男ダゼ? やめておけ」

「いつ我がそういう意味でアリちゃんを監視していると言った?」

「狙ってんじゃねーのか?」

「それはない、可愛らしい孫のような感じだ」



 二柱のやりとりを見て、デイスとサマイエイルはため息をついた。話をそらすべく、デイスは彼らに語りかける。



「……それで一つ疑問なんじゃが」

「なんだ?」

「アリム・ナリウェイがあのことを知って、何か問題があるのかの?」



 シヴァは目をパチクリとさせた。

 そして、こう返答をする。



「ある。まずアレにあの子が敵うかどうかだ」

「アリムに対しての被害じゃない、ワシらに対しての被害ですじゃよ」

「……さっき言ったはずだぞ、孫のように可愛いと。あの子達は幸せな暮らしたがっている。なら、我はその通りにさせてやるまで」

「ウーン、魔神である俺らがそこまで人間に入れ込むのも珍しいからヨォ、シヴァに乗っかってやるゼ」

「別にいい」

「んだョ、ツレネェナァ」



 スルトルはニヤニヤと笑いながらふてくされてみせる。シヴァはそれを無視し、デイスの方を向いた。



「どっちみち我ら三柱とも、こんな強い封印に縛られているんだ。計画は失敗したんだろう?」

「そうでもないぞシヴァ。アリム・ナリウェイは洗脳しやすい。それに一度作ったものに関しては無関心に見える。使っていたとしてもメンテナンスや点検など行わないだろうな。……この封印をどうにかして解く方法もあるだろう」

「それに、オレらの器になれる人間もたくさんいるからナァ、この家には」

「まだ、終わったわけではありませんよ。いや、終わらせませんて。何年かけていると思ってるんじゃ。今更引き下がることなどできんですわ」



 まだ自身らが企てている計画を諦めきれていない三人に、シヴァはため息をついた。

 そして頭の中で、アリムと自分たちの計画を天秤にかけた。その結果。



「……わかった。もし成功する見込みがあるならやろうじゃないか」

「オッ、さっきまでアリムちゃんのおじいちゃんでちたのに、いきなりどうしたんでちゅか?」

「……人間は誰しも我が身が可愛い。アリムやミカのことも可愛いが……まずは我々からだ」

「決まりですな。では再び計画を練り直しましょうぞ。……今日はここのところで退散しましょうかね」



 デイスが帰ることにしたというので、シヴァはサマイエイルとスルトルのこけしの電源を切り、元の位置に戻し、自身の電源も落とした。

 まだ、頭の中では迷っている。

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