閑話 バレンタイン!! (叶・桜)
いつもはイベントの際、時間軸は全く別次元なのですが、今回は本編とだいぶ日にちが近いので本編に準拠した内容となります。
Levelmakerがバレンタインを迎えるのは3回目です。
今年も画力が上がったかどうかのチャレンジをしました(´・ω・`)
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「ねぇ、かにゃた」
「なーに?」
2月14日の朝、いつものように叶と腕を組んで登校していた桜は少し照れた様子を見せながら叶に尋ねてきた。
「ば、バレンタインデーよね、今日」
「そうだね」
「私からのチョコ欲しい?」
「もちろん」
「えへへ。じゃあかにゃたの分は家に帰ったらあげるね」
「ありがとう」
桜の組んでいない方の手には紙袋が下げられている。叶はこれの中身がわかっていた。桜はいつからかバレンタインデーになるとクラスメイト分のチョコレートをつくって持ってくる。
姉である美花もそうしており、カフェチェーン店の会長である父親が二人に配るように推奨していることは叶にはわかっていた。
「今年も配るんだね」
「う、うん!」
「いつも評判がいいよね」
「そうかな。一応このチョコレートも叶の分あるけど、べ、別にあるんだからね、ちゃんと!」
「毎年そうだし、わかってるよ。………そういえば今年は兄ちゃんとリルさんも同じようにクラスメイト全員に配るって言ってたなぁ」
「リルちゃんはわかるけど、あゆにぃも!?」
「なんでも、複数人に頼み込まれたらしいからね」
そのような会話をしながら二人は学校に到着した。叶は靴箱を開けると、そこから滝のようにチョコレートが流れ落ちてくる。
「はは……」
「こ、今年もすごい量だね。やっぱりかにゃたはモテる」
「形的にも、大きさ的にも、多分本命なのも多いんだろうけど……わかってるはずなのにね、みんな。特に今年なんて正式に桜と付き合ってるんだから。かと言ってもらった物を蔑ろにするわけにもいかないし」
「モテて嬉しくないの?」
「桜もわかってるはずでしょ?」
「えへ……うんっ」
持ってきておいていた袋に、叶は大量のチョコレートを慣れた手つきで放り込む。
そしてその袋を肩に担ぎ、二人は教室へと向かう。
「おはよう! ……うわ、今年もすごいチョコの数」
「ああ、おはよう。だよね……」
「じゃあこれ、私からも!」
クラスメイトの一人に声をかけられ、またその子からも叶はチョコをもらった。
「あ、委員長! 私のはその袋に入っているだろう人達のとは違って、ちゃんと友チョコだから安心してね。叶君は彼氏にするには最高かもだけど、二人のラブラブにな敵わないって分かってるから!」
「あはは……うん。あ、これ、私からあげるね」
「ありがとーっ、毎年プロ並みに美味しいから委員長のは楽しみなのよね」
クラスメイトの一人は桜から本当に嬉しそうにチョコレートが入っている箱を受け取り、中身のチョコを一粒食べた。
「んー、おいし……ってまって。今年なんかさらに美味しくなってない? 去年と全然違うというか。超高級チョコって感じ」
「そ、そうかな? 目が見えるようになったからかも?」
「そう言われると深い味わいがする……」
そのあと、桜は来たクラスメイト全員にチョコを配って行く。特に恋人がいない男子は酷く喜んだ。そして、みんな一様に言うのは去年より美味しくなった、だった。
その原因は桜と叶にしかわからない。
異世界で手に入れたスキルの結果だとは言えるはずもないだろう。
叶はたくさんチョコをもらい、桜はたくさんチョコを渡し、少しヘトヘトになって二人は帰ってきた。
制服のまま、桜に呼ばれて叶は彼女の部屋に入る。
「た、たくさんチョコもらったあとだけど……ごめんね?」
「気にしないで。誰のが一番欲しいか分かってるでしょう?」
「えへへ……じゃあ、これ。これです」
黄色い包装紙と赤いリボンで包んだシンプルなものを桜は叶に、顔を真っ赤にしながら手渡した。まともに顔を見れず、少し顔をうつむかせている。
「ありがとう。今日一日ずっと楽しみにしてた」
「それね、あのね……ほ、本命チョコだから。だ、大本命だからね? あ、あと実はその……毎年、こうやってみんなとは別に用意してたチョコは……本命だったんだけど……友チョコって嘘ついて……」
「そっか。うん、俺もお返しの時はいつも本命のつもりだったからおあいこだね」
そう言いながら叶は桜からもらったそのチョコレートの包みを丁寧に取る。ハート形に形取られた一口サイズのチョコが6つ入っており、どれもプロのショコラティエが作ったものに引けを取らない。
一つつまみ、口に入れた。
「ん、びっくりするほど美味しい」
「ありがとっ」
「いや、御礼を言うのは俺の方なんだけど……桜」
「ん?」
叶は無言で桜を抱きしめ、頭を撫でた。
「あぅ」
「ふふふ、かわいいなーもう。しっかりとお返し張り切らなきゃね。3月14日はまだ春休みだったはずだし、とびきりの。あー、本当にすごく嬉しい」
そのまま二人はしばらくずっと抱きしめあったまま動かなかった。ちなみに隣の家では有夢の部屋で、有夢と美花が同じようなことをしているのに二人は気がついていない。
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超甘い。
そういうわけで今年もバレンタインがやってきました。いつの間に毎年恒例になったのやら。私が書きたいから書いてるのですが。
そもそもこの作品を毎年恒例ってのができるぐらい続けていられるのは本当に感謝すべきことです。
ありがとうございます。
さて、前述した通り今年も挿絵があります。
何かの行事ごとに気が向いたら描いてる挿絵ですが、一向に画力は上がりません。ですが気が向いたので書きました。
今回は初キャラです。
ではどうぞ。
そうです、桜ちゃんです。
そして、これが一昨年と去年のバレンタインイラストです。一昨年よりは上手くなってるかもしれません。
去年までは美花ちゃんでしたね。
それではなにかまた、次の行事もお楽しみに。気が向いたらですが(´・ω・`)。




