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第七百八十四話 生か霊か (翔)

「えっと、まず、ボクが二人を呼び出した機械を作った張本人です。で、そこに横たわっているのがお二人の本体とでもいうべきでしょうか、残った遺体の一部から再構築したものです」

『わふ…そんなことができるなんて、君は神か何か?』

「違いますよ、ただのスキルの力なので」



 有夢が説明してくれているな。こういうことに関してはこいつに任せるに限る。持つべきものはゲーマーの幼馴染だぜ。



「……後の説明は別の人に任せたいんですが、いいですか?」

『私たちを呼んだ理由はその人から伝えられるの?』

「はい。じゃあ……リルちゃん」

「わふ」

『なに、リルだって!?』



 部屋の入り口付近で立っていたリルは、俺から離れて二人の前にでた。二人とも、リルのことを見つめている。



『リル……? わふぅ、貴女がリルなの?』

「うん。私がリルだよ……ママ、パパ」

『……話がさらにわからなくなってきたけど、もし本当なら、かなり成長してると見える。僕らが死んで何年経っているんだ?』

「わふ、12年だよ」



 リルのその答えをきき、二人は顔を見合わせた。

 そしてもう一度リルの方を見る。



『生きて、いてくれたのか』

「わふん」

『12年間……寂し思い、させちゃったね」

「わっ……ふん! で、でも二人ともそんなに簡単に私だって信用してくれるの? あの頃より成長しちゃってるんだよ!?」

『わふ、親になったらわかるわ。自分でも驚いてるけど……うん、わかるのよ』

『それに見た目だけで言ってもお母さんにそっくりだ』

「わふぇ……」



 リルはその場に座り込んだ。二人はリルに寄り添うように近づいていく。お義母さんがリルの頭に手を伸ばそうとしたが、貫通してしまった。



『わふー、無理かぁ』

『仕方ないよ……こうした形をとってもう一度話した理由も、リルが生きてるってだけでわかったようなものだ』

「ママァ……パパァ……」



 ここでもう一度有夢が前にでてきた。

 どうやら、本格的に生き返るかどうかきくつもりみてーだな。



「いくつか聞きたいことあるんですけれど、よろしいですか?」

『ええ、構いません。こういう形でも、娘と話をさせてくれて有難うございます…!』

『わふ、ありがとうっ』

「そのことなんですが、一応、ちゃんとその身体で、ちゃんと生き返らせることができるんですよね」

『わふ、な、なんと!!』



 そんなこともできるのか、とでも言いたげな表情をしている。まあ俺も同じ立場だったらあんな顔をする確信はある。



「その、12年後の世界じゃないですか、リルちゃんの両親であるお二人にとっては。本人に生き返るかどうか訊いてから本格的に生き返らせようと思って」

『なるほど……本人の意思を尊重するならそうなりますね。……断る理由がありません、ぜひ、としか』

『わ、私も彼と同じ意見…だ、です!』



 まあ、そう答えるよな。

 なにか満足したまま死んだとかじゃなきゃ、生き返らせてくれるんだったらその方がいいはずだ。



「わかりました! じゃあ数分待っててください。この通話は切りますね」

『わふん!』

『わーふん!』



 有夢は立体映像を切った。そして、例の機械も二人から外し、口を開けさせてアムリタを流し込む。

 


「よし、脈打ち始めた」

「わふ、二人とも生き返ったの?」

「うん」

「あ、あゆちゃん…ありがとうっ」

「いいのいいの」



 二人がまた目を冷ますまで時間がかかるそうだ。そりゃすぐ意識を取り戻すはずはねーわな。



「ありがとね、あゆちゃん! ……私、こんな素敵な友達と恋人に囲まれて幸せだよ……」

「えへへへへへ」

「そうか、良かった」



 しばらくして俺のお義母さんとお義父さんと言える二人は同時に目を覚ました。そしてまず、自分とお互いの体をペタペタとさわって感覚を確認すると、本当に生き返っていることに再び驚愕している。



「こんな、本当に生き返らせられるだなんて!」

「わふぇ、すごい……そうだ、リル!」

「わふん!! わぁふん!!」



 リルは二人の元に駆けてゆき、思いっきり抱きついた。ずっと我慢していた涙が、目から滝のように流れている。

 お義父さんとお義母さんはリルをしっかりと抱きしめ返す。



「ごめんね、早く死んじゃって寂しい思いさせて……」

「わふん」

「身体は成長しきってるし、12年も会えなかったけど、リルはリルだ……愛してるよ」

「わぁふん」



 かなりの長い時間抱きしめあったあと、リルの方から二人から離れた。



「ふふ……顔も身体つきも本当にお義母さんそっくりだ。僕に似ているところはどこかな?」

「きっと頭の良さだよ、違う?」

「わふん、その通りだよ!」



 涙をハンカチで拭きながら、リルはそう答える。

 


「にしても、私とダーリ……お父さんは17歳の時に貴女を産んでるんだけど……」

「わふぇ、そんなに早かったの!?」

「実年齢は僕達は22歳。そして12年間経っているのだからリルは17歳」

「姉妹みたいになっちゃったわね……!」



 おお、本当だ。

 自分の親と5歳しか違わないのか。 

 つか、17歳の時に産んだって……俺とリルの年齢ってことじゃないか。

 出会って付き合い始めたばかりのリルが必死に俺の子供を強請っていて……まだあまりにも早すぎるだなんて思っていたが、やっぱりそこの感性は狼族としては普通だったのかもしれないな。


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