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第七百六十二話 抱えているもの (翔)

「よく頑張ったな」

「わ……ふ」



 リルは前村長に頭を撫でられた。

 しかし、リルはそれに対して上の空で、あの夫婦に教えられたタンスの方ばかりを見ている。



「……気になるのか」

「うん。みてみてもいいかな?」

「ああ」



 リルはタンスへと駆けていき、言われた通りの場所を開けた。そして赤い袋と青い袋を見つけ出す。

 赤い袋の方にはクソビッチと、青い袋の方には木偶の坊とこの世界の言葉で書かれているみたいだ。

 そしてリルはそれぞれの袋を開けた。



「わふ……あった!」

「死体もなにも残っていなかったと言ったのはあの二人だったが……実は回収していたのか。リルへの嫌がらせのためとはいえ」

「あった……あったよぅ…ショーっ…!」



 リルは泣きじゃくりながら袋を持ち、俺に抱きついてくる。嬉しそうだ。……その気持ちはわかる、ああ、だって骨が残っていたということは……そう、アムリタさえあれば生き返らせれるってことだもんな。



「……よかったな、リル」

「その袋はリルが持ってなさい。墓のは引き続き武器のかけらを供えておくから」

「わふん、ありがとう、おじさん! ねぇ……ショー、お屋敷に帰ったら……!」

「ああ、わかってる。そのつもりだ」



 リルは泣きながら笑い、その二つの袋を大事に今咄嗟に作り出した箱に丁寧にしまい込み、マジックバックに入れた。


「その……なんだ。今まで辛かったな。本当に……」

「わふん、前に村があった場所に行ったら、きっとあの二人の家があった場所に粗彫りの地下室があるはずだよ。私の血や食事として出された汚物のせいで汚いところだけど……もし、二人の証言だけで証拠が足りなかったら探してみるといい」

「わかった。まあ証言だけで十分だろうがな。……というよりリル、私は一つ疑問に思ってんだが……」

「わふん?」



 リルは俺に抱きつきながら首を傾げた。

 前村長は俺も気になっていたことを質問する。



「よく廃人にならなかったな。内容を聞く限りじゃ、1年もそんな生活していたら既に人として……」

「私もわかんないや。毎日辛くて、毎日痛くて、酷いもの食べさせられたってのは覚えてるしトラウマだけど、ほとんどぼーっとしてたような気がするんだ。人でいう普通の成長もしてるかどうか怪しいよ、特に精神面」

「つまり5歳で実は精神年齢止まってる可能性もあるってことか? リル」

「もしかしたらそうかも。でもわかんないや」



 もし本当にそうだったら五歳の頃からこんな大人っぽかったってことになるがな。いや、リルの学校での成績を見ている限りじゃ叶君と同類らしいし、ありえない話じゃないのがまたなんとも。



「まあ、リルの親父が、あの犯罪者どもが言っていた通り、相当頭のキレる人間だったからな……」

「ねえ、おじさん。私のパパとママのこと教えてよ。できるだけ詳しく!」

「いいぜ。だが、今日はもう遅い。遅めの夕飯を食ったらもう寝なさい。……っても、どこに泊まる…? この村、泊まれるよう施設ないぞ……うちはベット足りないし……」



 村長がそういうと、リルは耳をぴこぴこさせながらこう言った。



「それなら、宿泊用のマジックルームがあるから大丈夫だよ! コンパクトサイズだし、お庭さえ貸してくれればそこに置くから!」

「そうか? じゃあそうしてくれや。夕飯は行きつけの店にでもいこうや」



 俺たちはリルを虐待してきた憎き夫婦の家から立ち去った。



______

____

_



「わふーん、おにくーって感じのものばかりだったね! 美味しかった!」

「まあ、さすがは狼って感じだったな。ところでマジックルームなんていつの間に用意してたんだ?」

「アリムちゃんにスキルをもらった時にせっかくだから丹精込めて作ってみようと思ってね。傑作なんだよ!」



 リルはマジックバックからマジックルームを取り出した。大きさは少し大きめのロッカー程度だ。

 なんだか普段のリルの趣味とは違い、かなり可愛らしい見ためだが。



「……さあさあ、中に入ってよ!」

「お、おう」



 中に入るとそこは……窓がなく、大きなダブルベッドに透け透けのシャワールーム。大きなテレビに淡い照明といった感じの、外とは完全に隔離された二人だけのプライベート空間のような内装。

 おい、これってまさか。



「ショーが気にするから、まだ一度も行ったことないからね……ついには自分でネットで内装調べて作っちゃったよ」

「ああいうホテルの一室を……か」

「わふん! 大人のおもちゃやエッチな衣装も一揃いだよ!」



 ま、まじかー。

 こんな風になってるんだな、中身。なんか急に緊張してきた。……リルはドアをゆっくりとしめ、鍵をかけ、俺に強く抱きついてくる。



「ショー……大好き」

「お、おう。俺もだぜ」

「でもね、ショー。私の過去、もう一回聞いてもらったと思うけど……その、キスとか…気にしてない?」

「もうすでに何千回キスしたんだ? 最近じゃ最低一日10回はキスしてるだろ。それにリルのことは……俺が綺麗にしたはずだ」

「わふぇ、そうだね!」



 リルは相当嬉しいのか、耳も尻尾もせわしなく動かしている。どうしてこんなにも可愛いんだろうか。



「ね……ここ最近、毎日エッチしてるけど……」

「ああ、うん、まあ……だな」

「お屋敷に戻っても高頻度だと嬉しいなぁ……」

「ぜ、善処する」

「わふ、そしてわがままなのを許してほしい、もう一つお願いがあるんだ!」

「なんだ?」



 俺から少し距離をとったリルは俺のことをつぶらで吸い込まれるような瞳で上目遣いしながら、自分の服を全て脱ぎ去った。

 どこにも虐待された痕なんてない。

 完璧な身体だ。

 そして胸も大きいし、ともかく……全部が俺のもろタイプとかそういうのは秘密……にしてたがもうバレてるんだよな。



「この部屋は外と時間の流れを変えることができてね……。3倍くらいの遅さにはできるかな。その間に、私のことを滅茶苦茶にして欲しいんだ。今夜はもう、ショーのこと以外を一切考えられないようにして欲しい。……どっちかが気絶するまでね」



 ど、どっちかが気絶するまでか。

 二人とも異常な体力だからこれは長期戦になりそうだ。だが、もうリルの全てを受け入れると決めたばかりだし……な。



「わかった。だが先にシャワーにしようぜ」

「一緒に入る?」

「もちろんだ」

「わふん!」


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