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第七百六十話 本性 (翔)

「あっ……と、すいません」

「ど、どうしたのかね?」

「ちょっと前の村長に今、俺だけ呼ばれてしまったのでちょっと行ってきます。すぐ戻ってきますんで」



 そう言ってから俺は席を立ち、この家から出た。

 ……前村長達はどこにいるんだろう。



「ショーさん、こっちだこっち」

「ああ、屋根の上でしたか」

「事情はじーさんから聞いた! 俺も前からこの夫婦は胡散臭いと思ってたんだ! 協力するぜ」

「お、おお! ありがとう」

「私もいるぞ」

「よろしくお願いします」



 どうやら前村長が言ってたのは俺がさっき戦ったウルフェルとドムさんのようだ。

 あとは多分ギルド職員らしメモ帳を持った女性が一人。多分書記役だな。



「にしてもすごかったぜ、あのボール! 眩しくて目が覚めてよ、話を聞いたらお前……」

「SSSランカーだというではないか。それは私程度が素手で倒せてしまうわけだ」

「わふ、私もみてました! もう焼き付いて離れません!」

「そうか、どうもありがとう」

「……これ、試合の話をしてしまうのは我々だから仕方ないが、今はそれどころじゃないぞ」



 そう、その通りだ。

 今は、3人にすぐに戻ってくると言ったからリルを罵倒したりはしていないだろうが。

 早くしなければな。



「これから作戦を決行する。ショーさんはリルの側にいながら姿をくらます方法があるんだろ?」

「あります」

「じゃあ居てやってくれ。私達はこのままここで聞き耳を立てておる」

「任せろよ! あの夫婦の悪事、ちゃんと聞いてやるからな!」

「……みんなありがとう」

「いや、元はと言えばあの二人の悪行がわからなかった我々の責任だ。御礼を言われることじゃない……ほらショーさん、行ってきなさい」



 俺は4人から送り出され、もう一度家の中に戻った。

 3人とも黙っている。特にリルの表情は……うん、正直みたことないくらい変な顔してるな。



「すいません、戻りました」

「あ、ああ、うん。待ってない大丈夫だよ」

「……あの、もう一つ謝らなきゃいけないんですけど、前村長からSSSランカーしかできない仕事の内容を頼まれてしまって、その打ち合わせで最低でも3時間は戻ってこれないのですが……こんな夜にリルを置いてっても…」

「そ、それなら仕方ないだろう。リルはもともとうちの子だ。いってきなさい」

「というよりは、仕事を受けてくださってありがとう…よね」

「そ、そうだね」

「じゃあすいません、失礼します」



 俺はこの家を出ていった……ふりをして気配を消すグッズ一式を装備し、家の中にもどる。

 そしてリルの隣に再び座った。



【……これから何か言われるかもしれねーけど、リル】

【わふ、いるんだね、ここに】

【ああ、俺がついてるからな】

【わふん!】



 俺はリルの片手を相手にバレないように握る。

 さて、あとは相手の言葉を待つだけだ。



_____

___

_



 10分間座ったまま誰もなにも話さなかったが、ついに夫婦の夫の方が口を開いた。



「あの男に、自分の経緯は話したのか?」

【話していないことにしてくれ、一応】

「話してない」

「あら、そう」



 夫婦は姿勢を崩し、リルを見る目も見下したものへと変化する。安心しきった証拠だ。

 ………これから始まるのか。



「はーっ……戻ってくるとかバカなのかね?」

「あらダメよアナタ。このクソには世渡りなんて一切教えてこなかったんだから当然でしょ。で、なんで戻ってきたの、ゴミ?」



 うおお……まじかよ、遠慮がなくなるとこうなるのか。まだ会話の出だしでヒートアップすらしてないのにこのザマだ。黙っていてもすごいボロがたくさん出そうだな。



「こ…婚約してる報告を、私のお父さんとお母さんに……」

「あはははは、結婚、結婚ねぇ! 魔物のフンを食べたその口でキスとかしたの?」

「これやめないか。ふふふ、彼はあれでもSSSランカーだぞ、ふふふ。こんな汚物とキスしたなんて事実を知ったら失望するかもしれないじゃないか……くくく」



 俺はリルの手をさらに強く握ってやった。もう震えてはいない。しかし、今度は俺が怒り狂いそうだ。

 気持ちを落ち着けなければ。



「はぁーっ。で、この村のために……いや、この俺が村長になるためにクソ、お前が生贄になってくれたわけだが……」

「私の知ってる限りだと不良品扱いで今頃、身も心もボロボロになってるはずなんだけど……どうして彼はあなたを引き取ったりしたの?」



 リルが一瞬こちらをみた。

 何回かリルにはすでに引き取った理由は言っていたはずだ。



「それは……」

「あの男、純粋なバカっぽかったから。どうせボロボロのお前をみてかわいそうで引き取ったとじゃないかしら?」

「私は色仕掛けだと思うな。身体つきだけは褒めれたもん……うぐっ……ごめん」



 奥さんに肘で殴られている。

 貞操観念に対しては確かに狼族は誰でも強いみたいだ。



「まあその線があるのは確か。SSSランカーを引っ掛けるなんて中々だけどね。あーあ、こんなことなら身体だけじゃなくて性的にもボロボロにするべきだったかしら」

「えっ……! じゃあ!」

「いや、アナタは大人しくしてなさいな。たとえこいつを人間扱いしてないとしても、他人と肉体関係を持って結婚相手を裏切るのはご法度よ。私が言ってるのは……傘かなにかをあそこに突っ込んで…こう、ね」



 リルは思わず自分の足をキュッと締める。想像するだけで恐ろしいな。リルに関しては完全に感覚が麻痺してるみたいだ、こいつら。



「……こほん。にしてもSSSランカーなんて連れてきてもうするつもりだ。この村を滅ぼすか? 私達のことを恨んでるだろ?」

「あら、一応ここまで育ててあげたんだから感謝してほしいくらいだわ!」



 なんか悪役っぽいセリフばっかりいうな…。

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