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閑話 魔法少女サクラ☆ 最終話後編

「うぅ……うん?」



 これから起こることに目を瞑ろうとした桜だったが、叶は肩を掴んだまま動かないことが気になり、もう一度彼を見つめた。

 魔王は自分の思い通りにいかず少し焦っている。

 


「ど、どうした男の娘! 早く欲をぶつけるが良い!」

「ああ……そうするよ」



 叶は桜をやさしく押してから庇うようにして身を翻した。その途端、地面が揺れる。



「な、ななな、何だこの魔力は……!?」

「か、かにゃた?」

「俺……いや、我が桜を守る。貴様は許さない。裁きを下そう、魔王」

「……そうか、保護欲か」

「すごいチェリ! ただのバカップルじゃなくて愛が深いバカップルだったんチェリね!」


 

 叶の手にはいつのまにか槍が握れていた。また、いつのまにか装備していたマントを翻し、コツコツと靴音を立てながら魔王へとゆっくり近く。



「くるな、真の愛徒よ。その保護欲、別の欲に変えてやるわ! くらえ!」



 杖から再び怪光線を放つ魔王。何発も放つが、それは叶に届くことはなく、見えない壁に吸い込まれるように消えてゆく。



「な、なんだ、お前はなにをしている!?」

「一定の範囲に入った攻撃を瞬間移動させているだけだよ」

「し、瞬間移動だと!? ふつうの人間の小僧が、なぜそんなことができる!!」

「全ては愛する人のため! この力を得たのだ!」


 

 桜はうっとりとした表情で叶を見つめ、ランボーはそんな桜を見ながら肩をすくめた。

 


「ほざけ執着心の塊が! いい加減、死に晒せ!」



 ついに魔王は立ち上がり、直接拳を振るってきた。それはもちろん、叶に当たることはない。

 


「くそう、瞬間移動などとふざけた技を使いおって! しかし、それだけでは吾輩は倒せぬぞ!」

「なにもそれだけじゃないさ」



 叶が空を舞いながら片手を上げ、振り下ろした。

 無数の魔法陣から無数の槍が土砂降りの雨が如く振り付ける。



「ぬおああああああ! うごああああ!」

「す、すごいチェリ……幹部倒した時から思ってたけど、本当に何者だよ……」

「私の自慢の未来の夫よ。えへへ」

「最初見たときはこの娘もツンデレかと思ったんチェリがね、とんでもない、デレデレだったよ……」



 魔王は全身串刺しになっていたが、そのほとんどが死に至る部位まで届いていなかった。

 叶は空中に足をつけ、槍を投げるために構える。



「桜に恥ずかしい思いをさせた償いはこれだけじゃ足りないよ。我は我の正義のためならばどこまでも突き詰める」

「ま、まだやる気か……こんなことで……吾輩を殺しても……何度でも蘇るぞ!」

「必中の神槍、グングニルっ!!」



 叶の中二病たっぷりの言葉はこのば全てに響いた。

 投げられた神の槍は山羊に深々と突き刺さり、それを吸収してしまう。



「にいちゃんのお陰でこの槍には封印機能もついたままなんだ。封印完了」

「お、終わったチェリ……ぬわ!? ……崩れ始めてきたチェリ、主人がいなくなったことで空島の崩壊が始まったチェリか!?」

「ちょうどいい。二人たも外に出よう」



 瞬間移動によって3人は最初に飛ばされた桜の森の中に着地した。空島が崩壊する様子が見える。



「あっ……やばい、ボクチンの村の方に落ちて……」

「ああ、安心して。対処するから。ダークマーチレス!!」



 黒く巨大な光線によって空島は跡形もなく消し飛んだ。



「はー、さすがチェリ」

「えへへ、かにゃたっ」

「よしよし桜」

「けっ」



 抱きつく桜の頭を撫でる叶。ランボーは少し微笑みながら悪態をついた。



「まあとにかく、どうもありがとうチェリ」

「まだお礼は早いよ。きちんと封印しないと。まだ仮封印だからさ。1時間くらい待っててよ」

「わかったチェリ」

「なるべく早くね? 学校あるから」

「あっ……ま、まあなんとかなるでしょ」



______

____

_



「はい、5億年は絶対に封印解けないから」

「うわーん、ありがとうチェリィ」

「……桜、ランボーはなんで泣いてるの?」

「私と叶の馴れ初め話したら泣いちゃった」

「あー、たしかに感動する人は多いよね。当たり前のことをしただけなのにさ」

「そう?」



 その後、二人はランボーに連れられて元の世界に戻ってきた。寝間着は元に戻らなかったが、時間は向かった時間そのままだった。



「あれ、時間が……」

「実は大丈夫だったんチェリよ。まあ直接人を向こうに連れてくなんて初めてだから説明し忘れたチェリ。ごめんチェリ」

「まあ、それならそれでいいよ」

「本当にありがとうチェリ! ……そうだ願い事を叶える力はまだ残ってるチェリがどうするチェリ? 怖いから使うのやめとくチェリか?」

「あ、残ってるなら使ってもいいかな?」

「ま、俺がいればなんとかなると思うし、いいよ」



 桜はそう言われて使うことを決めた。

 そして頬を赤らめながら、ランボーに耳打ちをする。



「えー、そんなことお願いしなくても叶はずでチェリよ」

「で、でもね? 一応」

「わかったチェリ…….ぐぬぬぬ、忿怒ッ! これで叶はずチェリ」

「あ、あれ? なにお願いしたの?」

「んふふ、ひーみつっ」

「けっ。……じゃあな、ボクチンは帰るチェリ。また会えるといいチェリね」



 手を振りながら消えてゆくランボーに二人は手を振り返して見送った。



______

____

_



「うん、やっぱり夢だよね」



 アナズムにて、隣で美少女のような顔をして静かな寝息を立てている自分の将来の夫を見ながら桜はため息をついた。もう一度布団にもぐって強く叶に抱きつく。



「えへへ、大好き。夢でも、あの願い事は叶といいなっ。……一生叶と一緒に居られますようにっ」

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