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第七百五十六話 半裸戦闘 (翔)

 脱がなきゃよかったと少し後悔した。寒いのなんのって。周りは盛り上がっていて、場はあったまってるけどよ。それに相手も平気みたいだ。獣人だからか?



「やるか。ばあさん!」

「わふ。それじゃあ始めなされ!」



 ばあさんが腕を振り下ろした。ウルフェルは大剣をどっしりと構えた。俺はまあ、普通に柔道の基本の構えを。



「死んでも文句言うなよ! 剣轟奥義、一の断!」



 おっと、いきなり技をブッパなしてきた。つーかこれ、村の中で放ってもいい技なのか!?

 一応、住民に当たらないように配慮して俺は回避した。

 


「わふ、このアホ! なんて技を村の中で使ってやがる!」

「大丈夫だって、威力は喧嘩程度に抑えてある!」



 同い年くらいだと思われる村人に、こいつはそう返事した。それなら大丈夫か。

 いや……本当に大丈夫なのか?



「しかしかわされるとはな。俺、この大剣からの剣速の速さが自慢なんだけど……」

「まあな」



 ただ単にステータスが高いだけだがな。同じランクだったら間違いなく今のでやられてただろう。

 


「わふん、仕方ない。斬りまくってやるぜ!」

 


 ウルフェルは間合いを一気に詰め、連続して斬りつけてきた。相当早いんだろうが俺には止まって見えるから全部かわしてゆく。

 そして腕を掴んだ。

 ……つーか、柔道からしてみたらノーギ(胴着を着てない)相手が剣を振り回してくるって相当不利なんだけどな。まあでも腕さえ掴んだからなんとかなるだろ。その上、握力も強化されてるし肌身も案外しっかり掴める。

 一本背負いで地面に打ち付けた。



「ぐはっ!」

「おおおお!」

「わふ、体術が極めてあるのか」

「見たことない技だけど……きっとどこかにああいう武術があるのね」

「クッソォ……まだだ!」



 落とした剣を握り、再び俺に向かって構える。すでに顔から余裕の表情は消えていた。

 悪いな、本当はもっと手加減して戦ってやりたいんだが、なんせ賭けてる物がリルの胸だからな。

 リルの胸は俺のもの……じゃなく、リルのもんだが、やっぱ賭けでも他の男に触らされるのは絶対に嫌だからよ。



「わーふー、このままじゃ勝てねぇ! 戦ってみてわかったが、こいつは俺とは別の次元にいる! 実際、さっきの投げで俺を殺すのは安易だったんだろ?」

「なに、それは本当かウルフェル!」

「ならやってみろよ、勝てたらヤベーよこいつに」

「ま、まさかあのウルフェルが弱音を吐くなんて……」

「……だがよ、俺もこのまま一太刀も決められずに負けるつもりはねぇ!」



 しまった、流石に手加減してるのもステータスが半端ないのも気づかれる強さだったか、ウルフェルは。

 さっきのおっさんはなんも言わなかったけどな。



「観客ども、逃げてろ! 俺は本気出すぜ……」

「お、おい、みんな離れるんだ!」



 今まで俺たちを取り込んできていた大体3倍の距離を離れられた。



「ちっ……ぶっちゃけもっと離れて欲しいが……狼族なら回避できるだろ。くらえ、ショー! 剣帝奥義、三の周! 剣獄奥義、五の滅!」



 む、さっきから思ってたんだが、剣の速さと技の出すスピードがかなり早いんだよな。ステータスから考えて。

 もしかしたら剣を振るう速度が上がるスキルとかを習得してるのかもしれねぇ。

 ただ、俺には簡単に回避できる速度だ。

 剣撃でできた壁をくぐり抜け、今度は腕と鎖骨を抑えた。



「……ダメ、か」

「まあ流石SSランクってところか。強かった」

「そうか」



 俺は彼を投げ飛ばした。

 頭を強打させる。もちろん、気絶する程度にとどめたがな。



「……決着がついたか。ショー・ヒノの勝利じゃ」



 ふう、いい汗かいたぜ。いい汗はかいたけど寒いままだな。このままだと風邪引くぜこりゃ。



「わ、わふうううううえぇぇ!」

「圧倒、圧倒しやがったぞ!」

「わふうっそだろ! ウルフェルは他のSSランクのヤツと戦って負けたことないのに!」

「……てことはまさか……」



 周りの連中の中で何か答えが決まったようだ。

 何人かが俺の元にやってくる。



「なあ、ショーさん。冒険者カードを見せてくれないか?」

「わかりました。……ちょっと待っててください。リル!」

「わふん!」



 リルは俺の着ていたものとマジックバックを持ってきてくれた。なんかさっきこの服嗅いでたような気がしたが、それはきっと気のせいなんだろう。

 服を着てから、冒険者カードをみんなに見せる。



「わ、わふぅぅ! やっぱりSSSランクだっ!」

「わふ、すげぇ……本物のSSSランク!」



 やいのやいのと騒ぎだした。すっかり歓迎ムード……を通り越してVIPな扱いをしてくれそうだ。

 


「これはこの村にいる誰も敵わんわ」

「はぁ……あ、そうだショーさん、さっき魔法使いだって言ってたじゃないか。二人とも体術だけで倒しちゃったけど……魔法の方も見せてくれないかな?」

「おお、見たい見たい!」



 みんなワクワクしている。

 期待に応えたほうがいいんだろう。

 


「じゃあ、上空に魔法出しますので、しっかり見ててくださいね」



 ひたすらボールを唱えた。

 この村を丸ごと飲み込むくらいの大きさのファイヤーボールが何百個も現れる。

 側から見たら、太陽が分身したように見えるだろうな。

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