閑話 魔法少女サクラ☆ 1話
「ボクチンと契約して魔法少女になるんだチェリ!」
朝、目覚めたばかりの桜の元に突如、ふわふわとした二頭身の生き物が現れた。
まだ頭の反応が追いついていない桜は、それを掴み上げる。
「……誰? 何?」
「ボクチンはランボー! オハナミー国から来た妖精さんだチェリ!」
「私、寝ぼけてるのかな」
桜は目をこする。しかし、手の中にあるそれは消えなかった。一旦桜はランボーと名乗る自称妖精を机の上に置き、話を聞くことにした。
「で、なんなの?」
「実は、君に魔法少女になって欲しいんだチェリ!」
「魔法少女って、テレビでよくやってるアレ?」
「テレビ……はよくわかんないけど、知ってるなら話は早いチェリ! ボクチンの国を救って欲しいんだチェリ!」
「夢だろうけどこれ……詳しく聞かせて?」
どうせ夢だろうし楽しんでやろうと考えた桜は、怪しい妖精の話を聞くことにした。
彼曰く、オハナミー国は悪の組織KM-C、通称ケムシに襲われ酷いことになっているらしい。
もう自分達ではどうしようもならなくなったので、次にケムシが進行しようとしている世界、地球の人間に自衛と救済どちらも兼ねて魔法少女として戦ってもらおうとしているのだとか。
「これにはキビシー条件があるんだチェリ! 君は、その条件を見事クリアーしたんだチェリ!」
「その条件って?」
「ちょっと言えないチェリ! まあでも、変な内容ではないチェリよ」
ランボーは話さなかったが、その条件とは、
中学生の女子であること。
学校の成績は一定水準より上であること。
一定水準以上の人望があること。
他者より特殊な過去があること。
生徒会などの役職をいくらかこなしていること。
心の拠り所にしている男子がいること。
美少女であること。
であった。
「へぇ……」
「もちろん、見返りはあるチェリよ! まず、ケムシからこの世界を自衛できるチェリ! さらに、魔法少女として契約するときに一つだけお願い事をすることができるチェリ!」
「一つだけお願いごと?」
「そうだチェリ! サクラはなにか、お願いしたいことがないチェリか?」
「そんなことより、今、なんで私の名前……」
「そこに多分、学校用のネームプレートであろうものがぶら下がってるチェリ」
「ああ、なるほど」
サクラは考えた。
しかし、現状が幸せであるために願い事なんてなかったのだった。
「願いごとないなぁ……」
「そんなことないはずチェリ! た、例えば好きな人を振り向かせたいとか!」
「その好きな人とは両思いで、結婚する約束までしてるの。ごめんね」
「なんと、彼氏持ちだったチェリか。てか中学生でそこまで……。いや、次だチェリ! お金、ならお金はどうチェリ?」
「お金も心配してないんだよね……」
「地位とか名誉とか」
「私は別に、彼が居ればそれで……」
「くそ、惚気やがって!」
悪態をついたランボー。
桜はそれを、叶のことを考えており、偶然にも聞き逃した。
「保留じゃダメなの?」
「え、魔法少女はやってくれるんでチェリか!?」
「うん。その役目が他の子に回るより、私がやったほうが確実だと思ったから」
いざとなったらステータスで解決しようと桜は考えている。そんなことは知らないランボーはとても喜んだ。
「すごい自信と責任感だチェリ! それじゃあ早速……!」
「ぬははははは! そうはさせるか!」
「え、なに?」
唐突に部屋の中にオークのような、豚の顔を持ち、人間の身体にはふんどし一丁の変態が現れた。
「きゃーっ!?」
無論、桜は悲鳴をあげる。
「魔法少女となる人間は、片っ端から粉砕してゆくのだ!」
「こ、こいつは四天皇の一人、怪力のロース! さ、サクラ、さすがにまずいチェリ……! 早くこの変身パクトで魔法少女に変身するチェリ! お願い事は保留にしておくから!」
「う、うん、わかった!」
ゴテゴテの装飾がしてある化粧品を受け取った桜。その使い方が勝手に頭の中に入ってくる。
気がつけば変身は完了し、まだ起きたばかりで結んでいなかった髪の毛は二つ結びになり、桜色に。
体はセーラー服とタイツを融合させたような、全体的にピチピチであり、背中と臍周りが露出するように作られている、いかにも普通の魔法少女(より露出が多めである)と言える服装をまとい、さらにミニスカートにニーソックスを履いている。
ちなみに全部桜色だ。
「うわ……なにこの格好」
「恥ずかしいかもしれないけど、それが正装ってやつチェリ」
「くぅ……変身しやがったな!」
「……どうしたの、桜!?」
ガラリ、と、隣の家から叶が、桜がロースを見たときの悲鳴を聞きつけやってきた。
「か、かにゃた!」
「まずいチェリ! 普通の人間がロースのパンチを食らうと、跡形もなく粉々に…!」
「ははは、その反応を見る限り魔法少女の大切な男……男? おいおい、こいつも女の子じゃないか。いや、どっちにしろ大切そうな人間には変わらん! 殺して魔法少女を絶望させてやるわ!」
ロースは叶に向かってパンチを放った。
手ごたえは、あった。しかし。
「人をいきなり殴りつけてくる上に、俺の大切な彼女の部屋でなにをしていた、この変態」
「アレ……? なんで片手で受け止めてるの……? んん? 俺のパンチは10トンはあるのに……」
「あ、そう。でも俺を吹っ飛ばすならその100倍は欲しいかな。そんなことより、桜…….なにもされてない?」
「うん、大丈夫! そいつ、出てきたばっかりだからなにもされてないよ! 助けにしてくれてありがとう!」
ニコニコと嬉しそうにする桜を見つつ、ランボー小声で、そして真顔でこう言った。
「なんだこの化け物……」
つづく。
 
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次は三話後です。
※同じサクラでもカードをキャプターしたりしないので悪しからず(´・ω・`)
 




