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第七十六.五話 6年前の契約





 一人の醜い男は、今、必死で王都から出て逃げている。


 失敗してしまった。しかも、アリムに手だけだが、見られてしまっている。

 おそらく、サンダーバードをけしかけた罪などに、問われるだろう。

 そう、ファウストは確信し、必死に煙のまま、王都から逃げる。

 


「あれぇ……あの娘たちがいないじゃないですかぁ……ファウストさぁん?」


 

 突然目の前に現れた。

 こいつはメフィストファレス。俺の契約主だ。力と富とこの世の快楽を授けるかわりに、6年後に現れる、赤髪の少女アリムと、メフィラド王国の姫をさらってくるという契約をしている。


 6年前からだ…俺が奴隷商であるという身分を、隠すために始めた冒険者。それになってすぐに契約を交わしたのだ。

 それからはどうだろう? 女の身体は触り放題、俺に恐怖し、動けなくなるからな。数多の少女の貞操を奪ってきた。奴隷商の方も順調、そして、たった1年でランクSにもなれた。

 

 だが、どこからおかしくなったのだろうか。

 ラストマンとかいうふざけた奴に、裏の社会の奴隷制度を撤廃された頃からか?

 なにもかもが、うまくいかなくなった。

 武闘大会にも出場停止となった。


 なぜだろうか? 俺がなにか悪いことをしたのか?

 俺はやりたいように、好きなように生きてきただけだ。

 他人を不幸にし、自分が幸福となる。これのなにが悪いというのだ。



 メフィストファレス……彼は自分を"大悪魔"と称している。

 まぁ、こいつが何者かは俺には関係はないが。

 

 こいつは去年、言ったんだ。


『本当に、6年後に、赤髪の少女と、姫を連れてきたら、この世界最強の力と、いくら使っても使い切れないような富、そして、沢山の女性を弄れることをお約束しましょう…ですが、必ず成功してくださいねぇ? チャンスは二度ですよぉ? もし失敗したら、お前を殺します。いいですね?』


 と。


 チャンスは二度……。

 チャンスは二度っ!?


 まさか………まさか………


 逃げなければ。



 俺は逃げようとした。だが、彼は既に俺の前に回り込んでいた。



「嫌ですねぇ……。俺とお前は6年関の仲じゃないですかぁ……? なぜ、逃げようとするんですかぁ……?」

「あ………あ……」

「あ、まさか、また失敗しちゃったんですかねぇ……?」

「ち…違う……」

「なにが違うというのでしょうね?」

「悪かった……悪かった……次は、次こそは必ず……」

「いえ、二回です。二回は二回までです。というわけですから……お前の命、いただきますね?」



 悪魔は舌なめずりしながら、のそり、のそりと近づいてくる。



「やめろ、やめろ、やめろぉ………グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ……………っ」







__________________

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_____




 メフィラド国王が、ファウストを指名手配した翌日の朝。


 森に、捜索に入った二人の兵士がファウストだと思わしき人物を見つけた。


 だが、それはかなり凄惨なものだった。


 辺りに飛び散っている、大量の血。

 そして、目立つように置いてある、目玉が二つ。その二つを囲むように、周りに数十本の歯や装飾品がならべられている状態で見つかったのだ。


 さらに、書き置きのようなものが一枚、木に貼ってあった。

 それは血で書いてあり、内容もまた、不気味なものであった。



 ≪契約を破りし醜悪の人、ここに死す。≫



 世間には、ファウストは魔物に食われたと知らされた。

 混乱をおこさぬように。

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