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第七百二十七話 お父さんの強さ

 5日目。

 今日とて俺はカナタと一緒に六人を観察する。というか、一番見ててワクワクするのはお父さんなんだけど。

 それにしても、監視とはいえ最近ミカを蔑ろにしている気がする。今日は午後からはイチャイチャしよう。


 それぞれの進捗状況としては、火野夫妻が持ち前の体力と運動能力で仕事をどんどんと進めて行き、すでにEランクの魔核10個を集めDランクに。


 曲木夫妻が一番遅れており、まだEランク。ラブラブしながらのんびりしてる感じかな。レベルとか強さには執着してないみたい。……それより、おじさんの交渉力の高さがすごいと思う。さすが商売上手というべきか、火野夫妻や付近のランクの冒険者に比べてお金はなぜか溜まっていってるね。


 そしてうちの両親は、冒険者としてはDランクだけれども、Dランクの魔核はすでに5個あつまり、お金もおそらく一番持っている。装備品も少しずついいのに買い換えていってるようだ。

 そしてレベルも上がってるから、お父さんは例の謎の技も磨きがかかってると考えた方が良さそう。これから先ぐんぐんと伸びていくだろうね。


 今日、お父さんとお母さんはDランクの魔物が同時に何体も現れる仕事を受けたみたいだ。

 普通はそんなのCランクだったり、Dランク2人から4人は必要な仕事なんだけどね。あ、一応Dランクは2人か。

 

 ともかく倒して欲しいという依頼ではなく、鳥の魔物の羽をむしって欲しいという依頼(でも倒しても可)なので受けられたんだね。


 お父さんとお母さんは手を握りながら馬車にのって依頼場所に向かって行く。

 そうそう、お父さんはこの世界のことをより良く知るため、最近、余ったお金で本を買い始めた。さすがは研究者だ。こういう移動時間とかで読んでるみたい。


 現場に着いた2人は、そのまま山の中を歩いて行く。運動が苦手なはずの2人はステータスのおかげでだいぶスイスイ登れていけてるみたいだね。


 ふと、お父さんが足を止めた。



「……いる」

「え? ほんと? 全然気がつかなかった」

「ああ、最近本を読んで、探知というスキルの存在を知ったんだ。昨日、それを習得できてね」

「へー……」

「もう倒したよ」



 映像を見ていると、木から突然ポトリと鳥の魔物が落ちてきた。魔核と一緒に振ってきたからすでに死んでいる。

 お、お父さんは本当になにをしてるんでしょう。



「……場所を確認し、そのあと見つけることができれば簡単に倒せる……。探知、いいスキルだよ」

「へー、どうやったら覚えられるの?」

「んーっとね、何かを探すように周りを注意深く気を張り巡らせ続けたらいいかな」



 そのあとお母さんはお父さんのアドバイス通りに周りキョロキョロしながら歩き始めた。

 


「俺のこの技との相性的に、こう…遠くをよく見れたり透視できるスキルが欲しいなぁ…」

「まあ、あるんじゃないの?」

「うん、あるみたいではあるけどね……あ、居た」



 お父さんがまた目標を見つけたようだ。

 数秒後、ポトリと鳥が落ちてくる。もはや恐怖すら感じる倒し方。

 


「……魔物丸ごとだったら2羽で良いって話だったよね? どうしようか、もうかえる?」

「いや、CランクになるのにDランクの魔核はこれであと3つ。そして一度も試してないスキル合成に必要な魔核も欲しい。それに依頼書には多く狩れたら買い取ると書いてあった……。見つけるのも簡単だし、あと5匹は倒す」



 ま、まだスキル合成一回もやってなかったんだ…。

 なのに今この実力なんだよね? 既存のスキルを工夫して使って、あんな攻撃してるってことか。


 そのあとお父さんは立て続けに4羽狩った。

 こわい……なんか、漫画やアニメの強キャラみたいなことしてる。

 恐怖感を抱きながら2人の同行を見ていたその時、道の先から依頼とは関係のない魔物がやってきた。

 監視しており、探知より広く見渡せるるからわかる。

 ゴブリンの小隊だ。

 普通のゴブリン8匹に、ドンゴブリン1匹、そしてゴブリン亜種の青いマダラ模様がついたゴブリン1匹。

 

 普通のDランクの冒険者が出会ったらまずタダじゃ済まない。どうしよ、助けに行こうか。



「……む、探知にひかかった。大勢の魔物がこちらに向かっている。Eランク9匹にDランク1匹か」

「えっ!? どうする?」

「んー、まあ、なんとかなるよ。それより」



 お父さんはこちらを向いた。

 ……ん? こちらを向いた?

 いや、こっちを向いたというより、上を向いたというべきか。



【有夢、前みたいに助けようとしなくても大丈夫だよ】

【えっ…ああ、うん!】



 今までお父さんのこと、カナタと話が通じるくらい頭はいいけど、女性に近い抽象的な顔立ちで、すこし抜けたところもある優しいお父さんだと思ってたの。 

 なんかもう、怖くなってきた。

 本気を出したカナタくらいには怖い。



「お出ましだね」



 10匹のゴブリンかお父さん達めがけてやってくる。装備している短剣などは、今まで人から奪ったものだろうか。

 たった2人であることを確認し、また、魔力もそこまで強くないことを知り、ゴブリン達はお父さんとお母さんに飛びかかった。


 しかし、1メートルも届く前に、全員倒れこむ。

 一部は脳を抑えてもがき苦しみ、一部はめちゃくちゃに持っていた獲物を振り回し出し、一部は口から泡を吹き、一部は心臓を抑えている。

 やがて、その場にいた全てのゴブリンから、亜種を含めた分、計13個の魔核が転がってきた。


 お父さんは、ただ、杖を持ってその場に立ってただけ。

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