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第七百二十四話 さすがに

「カナタ! 早く俺を向こうに!」

「うん!」



 俺は急いで瞬間移動をさせてもらった。

 お母さんとお父さんの真後ろに出たから、慌てて庇うように前に出る。



「お父さん、お母さん、後ろに下がってて! こいつはDランク、2人にはまだ無理だよ!」

「なに、Eランクだとかいうゴブリンに似てるからなんとかなると思ったけど、これはDランクの別の魔物なんだ」

「確かに筋骨隆々ね」

「うん! 今の2人なら一回殴られただけで瀕死になるから、早く逃げて!」

「いや、もうその必要はない」



 俺は耳を疑った。そういえば、あのドンゴブリンが動く気配が一切無い。

 数秒、黙って様子を見ていたら、ひとりでにぶっ倒れてしまった。口と鼻から流血し、目は白目を向いている。  

 完全にひとりでに。

 俺はまだ何もしていない。……いや、何かしたのなら確実にお父さんだろう。



「お父さん、何かした!?」

「うん、やったよ。ゴブリンや地球にもいる動物のような魔物が出てきたら試そうと思ってたことを試してみたんだ。Dランクの魔物だったことは驚きだけど、成功してよかった」

「えっ……な、何したの!?」



 正直、ワタッコやスライムを数匹倒した程度のお父さんがDランクの魔物を倒せるだけの魔法を覚えていたりするはずがない。まだレベルは3くらいのはずだし。

 となるとカナタやショーなどと同じように、こっちに来た特典で何かもらった可能性がある。

 ……って、言いたいんだけどお父さん達6人がこっちに来た際、そういうのがないかチェックだけはしておいたんだ。結果をいえば誰1人としてステータス画面に特殊なものはなかった。


 つまり、この低レベルでこれを成し得たということ。一体何をしたんだろう。



「お父さん、何したの?」

「え? ああ、もう有夢達はやってみたことがあると思ってたが……ないんだね。ははは、じゃあお父さんが今回の方法を見つけたのか。じゃあ、何したか秘密だよ。そのうち教えよう」

「ぷくー! 今教えてよ!」

「女の子になってもその頬を膨らませる癖は変わらないんだね。嫌だよ、教えない」

「プヒュー 」



 お父さんが俺の頬を潰した。

 お父さんのイケズ。なんで俺もわからないようなことをやってよけるのさ!



「む、すごい感触。すごく心地いい」

「ほっぺた? うん、よく言われるの」

「えー、ママにも触らせてっ!」



 アリムのムニムニほっぺの虜、ご新規さん2人追加されました。お母さんったら際限なくムニムニし続けるから、最終的にカナタに瞬間移動で屋敷まで戻させ、助けてもらった。



「助かったよー、ありがと!」

「そういえば俺もあんまり触ったことないな。後で触らせてよ」

「えー、カナタはサクラちゃん触ってればいいじゃない。実の姉とはいえ、別の女の子をベタベタ触るのは良くないよ」

「兄だろ、何言ってんだよ」

「ごめん」

「はぁ……まあいいや。しっかし…お父さんは流石だなぁ」



 カナタって実はうちの家族の中で一番懐いてるのはお父さんだったりする。2人とも性格似てるしね、仕方ないね。IQの高さ自体はカナタのが上だけど、お父さんも十二分に頭がいい。



「まあね。しっかしどんな手品だろう」

「そこはじっくり考えないとわかんないよ。ゴブリンの倒れ方からして、死因は窒息か脳や心臓などの急所に強い衝撃が与えられたかなんだけど」

「へー、もうそこまでわかるんだ」



 じゃあもうお父さん本人に聞くよりカナタに聞いた方が早いよね。数日後くらいに再び問おう。

 

 モニターでは、曲木家チームと火野家チームがスムーズに依頼をこなし終えたところだった。ワタッコはやっぱり簡単だったみたいだね。

 お父さん達はドンゴブリンを、俺が少し前に支給した、二十畳くらいの大きさを誇るマジックバックにしまった。外傷がなく保存状態がとてもいいから、解体しなくてもかなりの高値で買い取ってくれるだろう。

 しまい終われば、二人はそこで立ち止まってステータスの調整をし始めたようだった。



「ふむふむ、お父さんとお母さんが他の2組より10歩くらいリードしてるんだね」

「Dランクを倒せる時点でもうかなり進んでるもんね」



 話してるうちにモニターを見れば、それぞれ初めてこの世界の食べ物屋さんに入り、色々と注文していた。 

 売ることと依頼達成報告より先に食事をとることにしたんだね、みんな。



「どうかな、にいちゃんのとっても美味しい料理を先に口にしてしまったからね」

「あ、嬉しいこと言ってくれた!」

「そりゃあ本当のことだし。でも個人的には桜が俺のために作ってくれた料理の方が……」

「まあむあ、それは誰だって好きな人が作ってくれた料理が一番だって」



 それはともかく、料理の時間はさすがにつまらん。

 俺たちもペペロンチーノでも作って昼食にすることにした。

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