第七百十六話 カミングアウト
「こっちの世界では、俺とミカは髪と目の色、そして年齢が違うんだよ。今はもう自由に変えられるけど。年齢はこの世界の一年は16ヶ月だから、それに合わせられてるみたい」
リルちゃんの場合は俺たちが向こうに連れてったから年齢が上がったりしてないんだよね多分。俺とミカは無理やり、それも人為的な行為を伴わずに連れてこられたから。
「ということは、その姿の時の二人は13歳程度ということか」
「その通りだよお父さん」
お父さんさすが暗算早い。
「……それでも叶君と歳が近いのにその身長なの?」
「あーっとね、お母さんとお父さんにはもう話したんだけど、俺……いや、ボク、この世界では女の子なの」
「へー、そうなんだ!」
ん、あれ?
やっぱり反応が薄い。ミカの両親だけじゃなく、ショーの両親まで同じような反応だ。おかしいな。
「男だったボクが、女の子なんだよ! みんな反応薄いよ!」
「いやぁ…違和感がなさすぎて、なぁ」
「ごめんね、もともと女の子だと思うようにして接してたから…」
「心配なのは美花との孫がみれるかくらいなんだけど」
うんうん、とみんな頷く。
ただ一人だけ、うちのお父さんは眉をひそめた。
お、今はなんでもいいから新鮮な対応が欲しい。
「どうしたのお父さん!」
「いや……だとしても違和感がなさすぎると思ってね。例えば今、有夢が……」
「こっちの名前はアリムだよ!」
「なに? ゲームの名前と同じにしてるのか。いや、それより仮に銭湯で女湯に入っても咎める気にならないような感覚だが。存在認識自体が女ってことになってるの?」
難しいけど、簡単に言えばどこからどうみても女の子にしか思えないし、女の子でしかないってことだよね。
「うん、どうやら周りの認識ごと女になるみたいなんだ」
「へぇ…面白いね」
「まあ、スキルの力で男に戻れるし、なにも心配しなくていいよ! でも、この世界の住人の前でボクを男だって言わないで、お願いっ!」
「まあそう言うなら」
六人ともお願いを聞き入れてくれた。
男である俺が王族の王女や令嬢の皆さんと裸でお風呂に入りましただなんてことバレたらやばいもんね。
「ねーねー、どう言う風に女の子になってるかみていい?」
「お母さん……いいけど、みるってどうやって…」
「一旦まず私たちだけこの部屋をでるのよ」
気がついたらお母さんに無理やり手を掴まれ、この部屋を連れ出された。そして廊下にたつなり胸を揉み揉みしてくる。ちなみにこの強引さで俺は昔から女装されてきたんだ。
「Bかぁ…」
「あんっ…やめてよねっ」
「男の人のがついてもいないみたいだね。いいじゃない、こっちの方が違和感ないよ。ね、アリムちゃん」
「ぷ、ぷくー! とにかくお部屋に戻ろうねっ!」
「着せ替えの話、忘れないでね」
「わかってるよもう!」
俺と母さんはみんなの元へ戻った。お母さんはしっかり女の子になってることを確認した、と、みんなに言った。
「でも男には戻れるんでしょう? 良かったわね、美花」
「うんっ!」
「スキルってのも、本当に色々できるんだ……もしかして若返ったりできちゃう?」
「できるよ! スキルでも称号でもアイテムでも、この世界は若返りだとか不死だとかの手段は結構あるよ」
む、お母さん達の顔つきが変わった!
もう40代近いお母さん達の顔つきが、若返りという言葉で変わった! でも見た目20代なのにこれ以上若くなってどうするんだろ。
「どうですか、私たち6人、全員でその若返りというのをやってみるというのは」
「ええっ…!?」
「あら、貴方。いいじゃないのー」
ショーの親父さん以外は乗り気じゃなく、お父さんとミカのお父さん(おじさん)は無関心。わーきゃー言ってるのは女性陣だけだよ。
「だってほら、ここって有夢君や美花ちゃん達6人のシェアハウスなんでしょう? 若々しいこの子達に混じるためにも、ね?」
「私も火野さんと同意見かな」
「私もー。パパ達もするよね?」
若い子に混じるから若くなるってのもすごいと思うけど。お父さん達はやはり年齢はあまり気にしてないようだね。お父さんが口を開いた。
「まあ、みんながやるなら。でも、有夢は若返る方法を所持してるとは言ってないし……」
「それが大量にあるんだよね」
「じゃあやるか」
「だな」
なんかズイズイと話が進んでく。これが大人のトークか。仕方ないから俺はアムリタポーションを6つだし、それぞれに手渡した。
「なりたい年齢をつよく、つよーく考えながら飲むと変われるよ。はいどうぞ」
「ありがとう。……17歳くらいでいいかな?」
「そうね、それがいいわ」
「ほら、貴方も。17歳に戻るのよ」
「えぇ…くっ…仕方ないか」
6人は一斉にアムリタを飲んだ。その次の瞬間、現れたのは若いお母さん達!
……って、やっぱりお母さんとお父さん、そしてミカの両親はあんまり見た目変わってないって。
一番変わったのは親父さん。それがなんと。




