第七百十三話 アナズムに親を
「さて、みんなに集まってもらったのは他でもない」
みんなにトズマホとスキルを配った翌日。
いつも集まってる部屋に俺達6人は揃っていた。
「前々から計画していたことを、次に地球に帰った時にやろうと思う。それの相談なんだけど」
「……次って明日じゃん」
「うん、そうだよ」
カナタのツッコミはかるーく受け流して話を続けちゃおうね。
「えーっと、何をするかといっても、それぞれのみんなの両親をね、こっちに連れてくるって計画なんだけど」
「前々から言ってたやつだな。親父もギリギリで休みだ。誘ってみるぜ」
「私達も誘うんでしょ、お姉ちゃん」
「もちろんよ」
この計画の目的をざっと振り返る。
まず、普通に親孝行だね。こっちに来たら最大限のもてなしができる。ドラゴンのお肉だって周りを気にせずに食べさせ手挙げられるし。
俺たちみんな両親は共働きだから、アナズムで無期限の休みを味わってもらおうと思う。せっかくだしね。
次に自分たちの現状をより把握してもらう。今は重要なことは大体端折ってこの世界のことを説明してるから、それをはっきりさせるんだ。
シヴァ型犬を連れて来て驚かれたりしたしね。ちゃんと全部説明しないと。
あとこっちに連れて来たら国王様とお話しする可能性も十二分にある。そこも考えなくちゃ。
「何か問題点とかある?」
「もし来たくないとか言われたら?」
「そしたら置いていくしかないよ」
「わふ、この世界で暮らすには十分なレベルが必要だよね?」
「うん、レベル上げはしてもらうつもりでいるよ」
「何回も周回できるのかな? お母さん達約40歳だし…」
「俺たちにはアムリタがある。それは問題ないね」
ちょっとカナタ並に質問に答えられてるんじゃないかしらん。ふふん。
顔を見る限り、カナタ自身は特に何も不満はないみたいだし、賛成もしてるみたいで何も言ってこない。
「じゃあそれぞれ誘ってきてね! 今日は解散! また明日、地球に移動する時にね」
俺たちは解散した。
俺は、残りの時間で俺は新たな6人を迎える準備をしておく。あとシヴァを管理できるようにも。
あとは誘うだけにしておくんだ。
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「よし、帰ってきたね」
地球に。
すぐに自分の部屋を出てカナタと落ち合う。
「おはよ」
「おはよう、にいちゃん。誘い文句はアナズムにいる日数が長いにいちゃんの方が適任だと思うから任せたよ」
「うん、任された」
俺とカナタは二人で1階リビングへと降りる。すでに母さんと父さんは起きているみたいだ。
「おはよー」
「おはよう、父さん、母さん」
「おはよう。二人一緒に起きてきたのね。……もしかしてアナズムに行ってた?」
「最近、なんとなく帰ってきたというタイミングがわかるんだよ。あれだろ、普段は月曜日の早朝に向こうの世界に行ってるんじゃないかな?」
む、お母さんもお父さんも鋭い。
まさにその通りだ。叶の頭がいいのはこの二人のせいだからね。いや、主にお父さんかな。
お父さんの職業は、叶の脳を調べて、さらに叶を一員として迎えて商品開発とか実験を一緒にしてる組織のかなりトップな方の幹部なの。
俺の女性との適合率(どれほど女に近いか)も調べてくれたしね。
お母さんは大学で講師をしてる。非常勤だけど。
選考はコミュニケーション学とかだよ。学生さん達に俺の写真を見せて「実はこの子、男なのよ」って言うのが楽しいらしい。
……勤務先の一つに俺がこのままエスカレーターでいく予定の大学があるから、ぶっちゃけ入学したあと大変なことになりそうだって懸念してるんだけど。
てかもう一部では広まってるし。
「有夢、私達起きたばっかりでまだ朝ごはん作ってないのよ。ね、お願い!」
「いいよ。煮物と焼き魚とお味噌汁、あとだし巻き卵でいいかな?」
「うんうん、オッケオッケー!」
俺は朝ごはんをアナズムパワー全開で4人ぶん作った。
お母さん達はニコニコしてる。
「んふふー、どうしてこんなに美味しくできてるのかしらっ」
「やっぱり向こうの世界の力か…すごいよなぁ…」
よし、誘うならこのタイミングだろう。
言っちゃえ言っちゃえ!
「そのアナズムに関して一つ、母さんと父さんに提案があるんだけどさ?」
「有夢、なにかな? もしかして向こうの世界に行けるようになったとか?」
「………ぷくーーー!」
「パパので図星なのね」
先に言われるだなんて!
まあ昔からこんなとこあったし。
例えば俺が欲しくなりそうなゲームを俺が行動する前に、しかも発売日前にツテで入手してきたりだとか。
言ってないのにね。
「なるほど……俺はいく気満々なんだけどな」
「ママだよ。ぜひ連れてってね」
「父さん、母さん、それなら話が早いよ。行く時になったらおいおい話すから、楽しみにしててね」
わーっ!
しかも叶がお話を締めちゃった!
とても悔しいからぷくーーするよ! ぷくーーー!




