第六百九十七話 16月のアナズム
「アナズムに戻ってくるのも久しぶりだね!」
「確かにそうかも」
いつもと違い、お正月だから1週間長く地球にいた。ほら、お正月って忙しいからね、そっちに集中するために。
「こっちのお祭りもあと今日を入れて1週間位だよ」
「そ、だからそろそろ来るはずなの」
「……わふ? なにがだい?」
ミカにとってはもう来ると半ば確信してるみたいだ。
リルちゃんだけでなく、カナタ以外の他のみんなも話がわからず首を傾げてる。
ていうかカナタ、ここまでの会話で察するとか天才かな? 天才だったね。
……頭の中にメッセージが湧き上がった。
そう、これが待っていたものだ。
【アリムちゃん、ミカちゃん! 明日、遊びに行っても良いですか? 唐突ですいません】
【カルアちゃん! ウチに来るのは久しぶりかな? もちろん良いよ!】
それはカルアちゃんからの連絡。
そうだ、女子会をするつもりだったからミュリさんとリロさんにも来てもらうか。あとついでにローズも呼ぼう。
【じゃあさ、カルアちゃん。ミュリさんとリロさんにも来てもらって遊ぼうよ! ローズも呼ぶからさ……リルちゃんとサクラちゃんも加えて…8人で…どう?】
【まあ…素晴らしいですわね! では、後ほど。あと…もう一つお願い事が…】
多分これが本題。
カルアちゃんがそろそろウチに遊びに来たいって言う頃だし、それを見計らって国王様は…俺にこんなお願いをカルアちゃんに託してくるはずだ。
【みなまで言わなくてもわかってるよ】
【え?】
【祭りへの参加と準備を手伝って欲しいんでしょ?】
【えへへ、お見通しでしたか】
【こんなものすごくギリギリに頼んでくるってことは、ボクの好きにしても良いってことかな】
【はい、コンセプトを守っていただければ…と言ってました! じゃあ、明日遊びに行きますね!】
とても楽しみそうに声を弾ませながら、カルアちゃんは連絡を切った。
「……わふ、私も参加して良いのかい?」
「うん、もちろんだよ」
「お姉ちゃん、私も?」
「そうよ」
「ボクを含めた8人でね」
俺がそう言うと、ショーとカナタがなに言ってんのこいつ、みたいな目で俺を見てきた。
「2人とも、言いたい事はわかるけど、これでもボク、一応女の子だから…」
「知ってるぜ。お前がアリムになれば俺たちの認識すら無理やり女の子ってことにさせられるからな」
「だからと言ってなんか変なことしちゃダメだよ、にいちゃん」
「わかってるよー」
一緒にお風呂に6人で何回も入ったとか言えない。今回はごまかして、俺だけ入らないようにして7人でお風呂は楽しんでもらうつもり。当たり前だね。
俺が女の子化しても、リルちゃんとサクラちゃんと一緒にお風呂に入れば、本人達も微妙な感じになるだろうし、ショーからはおそらく距離を置かれ、カナタからは殺されると思うし。
「はぁ……じゃあ明日からは俺と叶君だけが男なのか」
「そうなるね! 女の子になってみる? 2人ともきっと美人になるよ」
「いや……おりゃ、いい」
「翔さんに同じく」
えー、特にカナタなんて絶対俺みたいになるのになー。
「お祭りとお泊まり会のことはわかったけどね、にいちゃん、シヴァのアナズムへの転送と、お母さん達のアナズムへの招待はいつにするの?」
「地球での再来週にするつもり。色々と安定してくる時期だからね」
結構後回しにしちゃったけど、お母さん達…全員で6人かな。6人をこの世界に招待してレベル上げしてもらったり、文化について理解してもらったりするのは時間かかるからね。
それに加えシヴァもいるんだ。本当は早々にこっちに送り返す予定だったのに。ぐぬぬ…こう考えるとまだまだ問題は山積みだね。
「あとリルの誕生日会もやりたいんだが」
「あ、サプライズじゃなくて良いんだ」
「有夢、お前がサプライズバースデー否定派じゃねーか。なに言ってやがんだ」
「うん、サプライズにするくらいなら無理にでもリルちゃんに伝えてたね」
「……わふ、一体サプライズになんの恨みが…」
そのことについてはカナタがリルちゃんに説明してくれた。要約するとただ単に気に入らないってだけなんだけど。
「わふーん、確かに誕生日当日になって誰も祝ってくれない…だなんてことになったら悲しいかもね。サプライズだとしてもその間の時間が無駄だって考えはわかるよ」
「おおー、わかってくれるんだねー」
理解してくれたみたいで良かった。
うん、誕生日はショー主催で盛大に祝ってあげよう。
「わかると思うけど、地球での新年早々大忙しだから、みんな手伝ってね」
「まあ、できる限りな。アイテムマスターであるお前が1番やるのは変わりねーだろうけどよ」
そのあと俺達は解散した。
……さて、カルアちゃんが来るのは明日だ。
ミカとゆっくりする時間はたくさんあるね。




