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第六百九十一話 冬休み (叶・桜)

「あー…来たわよ」

「んー、ちょっと待っててね」



 窓から伝って桜が叶の部屋に遊びにきた。

 服が濡れてしまったため、桜は冬に窓手間の移動をしたことに少し後悔している一方で、叶はパソコンとにらめっこし、キーボードとマウスをせわしなく叩いている。



「またお金儲け?」

「うん、もう少しで一段落するから待っててね」

「わかった」



 5分後、叶はにこやかな顔でパソコンをシャットダウンさせた。そして桜が座っている場所の真横に自分も座る。

 


「上機嫌ね」

「このペースで行ったら来年の今頃には…普通に暮らせば二人で過ごしても一生お金に困らないほどの額が貯まるからね」

「ええっ!? それって、数億円って事?」

「まあそんなところかな。ちなみに発明品とかで稼いだお金とは別だよ。それも合わせたらすでに超えてるんじゃないかな」



 桜は想像していた桁乗り1桁おおかったことに愕然とした。

 ほぼ初めて聞く詳しい叶のお財布事情。もはや幼馴染がここまでになってるとは想像していなかった。



「でも…どうして叶が発明して…特許で得たお金とは別なの?」

「そっちは将来の研究費用に回そうと思ってね。桜の目が治せた今、次に俺がやるべきなのは世の中の役に立つ事。だいたい一定のIQをもつ人間は何かしら残してるからね、コンピュータを発明したりとか。俺もそういうことしないと」

「材料費とかはもう必要ないんじゃない? ってことは人件費とか?」

「そうなるね。大学を卒業したら組織にそのまま入るつもりなんだけど、その上でさらに個人的な研究を続けるんだよ」



 ふーんと、桜は聴きながらそれはとてつもなく時間がかかるのではないかと考える。そして一つ文句を言うことにした。



「叶の夢は全力で応援するけど、私と結婚するつもりなら…私と…その、こ、子供に…ね、寂しい思いとか…あんまりさせて欲しくないんだけど…?」

「ふふ、この我だぞ? そこらへんも考慮しておるわっ」

「そ、それなら安心かな…!」



 自分ももうすっかり結婚した後のことをしっかりと考えてることに桜は内心気がついたが、別段、照れたりおかしなことだと思ったりはしなかった。



「ところでさ、テスト終わったわけだけど」

「えへへ…二人で学年一位よ。予想通りだったね」

「兄ちゃんとみかねぇは賭け事してたよ」」

「同着だったらお互いにお互いのお願いを訊くってアレ?」

「そうそう」



 叶は桜の顔をジッと見る。

 桜は叶が何が言いたいか幼馴染の勘をもってしてもわからずに首をかしげた。



「え、つまり何?」

「俺らもやってみる?」

「えー。私、お願いすることなんて何もないわよ? 叶から一方的に何かしたいからそう言うんじゃないの?」

「おっとバレてしまっか……さすが我が許嫁よ……」



 ククク、と笑みを浮かべながら叶はそう言った。

 桜はそれを横目で見ながらも、質問をすることに。



「で、お願いって何?」

「ん? 訊くの?」

「そ、そりゃ…まあ、あんなケーキバイキングに連れて行ってもらったし、その御礼ってことなら…で、でもへんなことだったら断るからね!」

「ごめん……へんなこと、なんだよね」



 叶の目つきが鋭くなる。

 そして油断していた桜の顎を、人差し指で軽く持ち上げる、自身の顔も近づけた。



「なななな、なに!?」

「わからない?」



 耳元で、息を吹きかけるようにそう囁く。



「わ、わかんにゃいよ…。でも、ももも、もしかして私の身体目当て?」

「だとしたらどうする?」



 桜は目を見開き、幼馴染を見つめる。

 自身が火照り始めたのもよくわかった。そして、これまでにないくらい動揺していることも。

 とりあえず言葉を発して言い訳することに決めた。



「そ、そそ、そりゃ、叶も男の子だし……今までの反応からしてそーいうことに興味がないわけじゃないのはわかるけど……でもまだ早いって…みんなが…」


 

 叶の反応を待ったが、なにも言わない。

 桜は慌てて話を続けることにした。自分を冷静にするために。



「私…そういうのは高校生になったらって覚悟してたから、ごめん、今は無理。でも我慢できなくて辛いって言うんだったら…その…お手伝い…」



 ここでもう一度桜は叶の顔を見る。

 にやけてる様な、困った様なそんな表情を浮かべていた。



「最初からそういうことするつもりはないよ。ノリでやってみたら案外桜、引っかかったから驚いちゃった」

「……ぐぅ…」

「ごめんね、からかって。…まあおらからのお願いはもう聞いてもらってるし、オーケーももらったからなにもないよ」

「……ふん。で、なにそのお願いって」

「高校卒業したら結婚することにしようって、時期を早めたでしょ? あれ」

「そ、そうなんだ」



 自分が言おうとしたことが頭の中でループし、桜の赤面と機嫌はしばらく治らなかった。

 気を悪くしてしまったことを察した叶は、マジックポーチから甘いものの類を大量に渡す。

 そうすることで桜の機嫌は少しずつ癒えていった。



「ごめんね…」

「もういいわよ」

「あ、ところで冬休みって予定あったっけ?」

「なかったと思うわよ。アナズムでお祭りがあるくらいかな。あゆにぃや翔さん達はなにかしらあるかもしれないけど」

「だよね…のんびりしようね」

「うん」



 

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