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第六百八十三話 スイーツ・クリスマス・スイーツ (叶・桜)

「お待たせいたしました、『ラブ-ショコラ』二きれと、『エンジェルチーズケーキ』一切れ、プレミアオレンジ・ジュース2杯でございます」



 ボーイが持ってきたケーキは二人の目の前に置かれる。

 彼は頭を一度ぺこりと下げると、速やかに退出した。



「お、おひひそう…」

「言葉が言葉になってないよ。食べようか」

「ふん!」



 フォークを掴み、二人はチョコレートケーキに切り込みを入れた。それを口まで運ぶ。



「んんっ…おいしいねっ!」

「__________! _____!」

「悶絶するほど美味しかったんだね」



 精一杯、コクコクと桜は頷く。

 しばらくして涙目になりながら叶の手を掴んだ。



「ありゅがとにぇ、かにゃたぁっ…!」

「あはは、うん。どういたしまして。食べ放題なんだから好きなだけ頼んでたくさんお食べ」

「うんっ!」



 そうとなると桜の食べるスピードが上がり始める。

 一口、また一口と叶が食べるスピードのおよそ2.5倍で平らげて行く。しかし食べ方は上品であり暴食などではない。動きだけが食べるために精錬されていた。



「おひひひ! おひひひ!」

「もうチョコレートケーキ食べ終わったんだ…」

「うん、次はこのチーズケーキよ」



 桜は一口食べる。

 目を輝かせ、頬が綻んだ。

 そして一口大に切ったものを、フォークに乗せ、叶に差し出してくる。



「食べてみなよ、はい、あーん」

「あーん」



 確かに美味しい、と、叶は考えた。

 そのことを読んだのか、桜は嬉しそうにまた笑うと、ふたたびチーズケーキを口に放り込んで行く。

 しばらくして完食してしまった桜のために、叶はふたたびウエイターを呼び、1番高級なフルーツタルト4切れを頼む。



「どう、楽しい? 美味しい?」

「うん、楽しくて美味しいし、嬉しいわよ。ほんとにありがとね。……でも場所が場所だから、なんだか大人なデートね」

「確かにそうかも」

「大人な場所なのに食い意地張っちゃって少し恥ずかしい気もするけど…」

「そんなことはないよ。俺は幸せそうに食べてる桜が大好きだから、変なこと気にせずどんどん食べて」

「なによ、太らせる気?」

「どれだけ食べても太らないのに何言ってるんだか」


 

 しばらくしてフルーツタルトが運ばれてきた。

 それを二人は美味しくいただく。


 それからアイスクリーム、マカロン…ともかくメニュ表に乗っているスイーツの種類のなかから項目一種ずつ選び食べてみたり、お昼頃になれば昼食がわりにホットケーキを頼み、ジュースや紅茶、コーヒーもたくさん飲む。

 さすがに、お酒も飲み放題なのだが、手は出さなかった。



「甘くて幸せ…ふふふ」

「本当に幸せそうな顔してるね」

「だって実際そうだし。ところで今何時?」



 叶はつけていた時計を見る。

 針は真ん中より二つ右に寄っていた。



「午後4時ごろかな」

「え、嘘でしょ? 私、ここに来てから5時間近くも食べ続けてたの?」

「うん、途中で席を外すことは何回もあったとはいえ、夢中になって……すごい食べっぷり」

「ううっ……」



 桜はひどく赤面した。

 叶はそれでも嬉しそうにニヤニヤ笑っている。


 

「まあ、俺と桜合わせて入場料分は1時には食べ終わってたかな」

「そ、そんなに高いの頼んだっけ?」

「桜が1番美味しかったっていいながら7回くらい頼んだ小さめのパフェ」

「うん…キラキラして見た目も綺麗で美味しかったよ? 叶も4回くらい頼んでたよね」

「あれ一杯7000円」

「はぁ!?」

「だってあれほとんどの具材に金箔が貼られたりしてるし。鑑定スキルがなかったら誰も気がつかないと思うけど」

「えぇ…」



 叶は驚いてる桜を観察しつつ、もう一度時計を見た。

 午後4時を5分過ぎている。



「どうする? そろそろ出てお買い物でもする?」

「確か6時半までよね? ……あと1時間くらい食べたい…それともなにか予定組んでくれてたりするの?」

「ううん。ないよ、ただお散歩も悪くないかなーって。でも桜の家の夕飯、食べられるようにしてってよ?」

「スイーツは胃じゃないところに入ってるから大丈夫」

「あ、ああ、そう」



 妊娠中期に差し掛かったくらいはあるんじゃないかと言いたくなるくらいに膨らんだ桜のお腹を横目で見ながら

叶はそう生返事した。

 少しだけ将来を期待する。



「ちなみにケーキは持って帰れます」

「そうなの」

「うちの両親にも、桜の両親にも話は付けてありまして、ここの食べ放題のなかで最高級のケーキを持って帰ることになってるよ

「あ、それが今年のクリスマスケーキなんだ」

「そういうことだよ。……ああ、あとこれなんだけど」



 叶はカバンの中から一つの包装紙に入った箱を取り出した。それを桜に渡す。



「……クリスマスプレゼントって、このお店に来ることじゃなかったの?」

「まさか、桜のこと大好きな俺がそれだけだ終わるとでも?」

「て、照れる…えへへ、ありがとーっ」



 桜は席を立ち、叶の隣に座って抱きついた。

 いつも当たる胸の他に、お腹がぎゅーっと押し付けられる。その途端、桜はハッと何かに気がついた顔をした。



「も、もしかして今の私、おデブさん…?」

「……まあ、子供ができてるみたいになってるね。ほんとに太ってるわけじゃないから」

「子供…だとしてもかにゃたっとの…い、いや、そんなことよりこれどうしよ……私、太りたくない…叶に見合う見た目で居たいよ…」

「どうせ明日になって体重計乗ったら元に戻ってるでしょ。最悪アイテムに頼ればいいし」

「……まあね」



 そのあと、懲りずにしばらく高級パフェを頼みに頼んだり、食べようと思っていたものを片っ端から食べ続けたりしたのち、午後5時になり店を出た。

 受付の者が驚いた顔をで二人を見送る。



「イルミネーションもしっかり見れたね。今帰っても15分空きがあるし、散歩してから帰ろ」

「うん」



 二人は手を繋ぎ(桜は叶に抱きついてお腹を目立たないようにしながら)散歩を楽しんだ。

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