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第六百七十三話 柔道大会終了 (翔)

 今日の出来事はまるで流れる川のように時間が過ぎていった。あまりにも忙し過ぎたからな。

 決勝戦が終わったあと……俺は取材の嵐でもみくちゃにされた。


 ゴリセンがマスコミ陣に注意を促し、さらに会場スタッフからも止めが入るまでずっと何かしらインタビュー。

 それに毛利とも連絡先の交換したし。


 だから実感だけはある。

 全国大会、ダブル優勝。


 あのあと剛田は3位決定戦で勝ち、全国3位とった。教頭からの連絡で星野もベスト8になったようだ。

 学校が始まっていらいの快挙らしい。どちらかで優勝は今まであったんだがな。


 旅館に帰った後もゴリセンからのお言葉や、応援してくれた有夢たちの褒め言葉……なんか知らんけどどこかのお偉いさんがしゃしゃりでてきて俺たちに、主に俺に向けて演説をし始めたり、また取材に捕まったり。


 おかげで飯食って、風呂入ったらもう時間で、リルと二人っきりでここまでの努力を振り返ったり……ご、ご褒美をもらったりだなんてことはなかった。くそう。

 ……まあ俺の周りにマスコミが溢れてる今、秘め事をするのは悪手だがな。


 さらにいろんな新聞会社やテレビ局から、新年が始まってから(冬休み中に)取材させてくれないかとたくさんオファーがくる。

 ゴリセンにこんなこと普通あるのかと訊いてみたら、『俺が学生の時はなかったし、一昨年もなかった。多分、お前の顔のせいだ』と言われちまったぜ。


 そんわけで今、俺たちは真夜中のバスに乗っている。

 今帰っている途中なんだぜ。バスの中で睡眠をとるなんてことも必要だ。まじ疲れた。

 有夢たちは案の定、瞬間移動で帰宅したけどな。



「というわけだ! 俺はほんっ……とうに嬉しい! 特に部長と剛田と星野、そして二山と中川。頑張ったな、頑張ってくれたな! ……もっと、もっと俺はいうことあるが、今日はもうみんな疲れてるだろうし、な」



 ああ、たしかに疲れていたしそう言ってくれると助かる。……明日は明日で俺にはイベントがあるからな。



「続きは焼肉パーティでだ。全国大会に参加した5人と翔が選んだもう一人…ま、どうせフエンさんだろうが、計6人は俺が奢ってやる! あとは各自、2300円を持って牛焼亭という店に、決められた日に行くように! 以上」



 ゴリセンからの話は終わった。

 やばい…意識が朦朧としてきた。



「わふ、ショー眠いよね。……いくらでも身体を貸してあげるから、ぐっすり寝なよ」

「悪いな。あ、そうだリル」

「わふ?」



 俺は言葉に甘えてリルに体を預けることにした。

 と、同時に…地球での明日のことを話そうと思う。



「明日はクリスマスだ。約束通りデートしようぜ」

「わーふー、疲れてるでしょ? 試合終わってから大変だったのに」

「……いいんだよ。デート楽しみにしてたんだから。それにアナズムで2週間、また休むだろ」

「まあね。なら、私もとーっても楽しみだよ」



 ニッコリと嬉しそうにリルは微笑んだ。

 心身ともにボロボロの俺にとって、今、リルは最高の癒しだ。一緒に話しているだけで疲れが抜けていくような気がする。



「おい、イケメン リア充部長。お前まさか明日デートするとかいうんじゃないだろうな。体壊すぞ。クリスマスだからって……」

「なんだよイケメン リア充部長って」



 剛田が唐突にそう話しかけてくる。

 なかなか変な言葉を作ったもんだ。



「取材陣にはイケメンだともてはやされ、そしてフエンさんとデートの約束。羨ましすぎるんだよ」

「へっ……悪いな」

「ちっ、まあいいけど。俺も誰かとクリスマスデートしたかったぜ。……寝るわ」

「おう、おやすみ」



 なんか言いたいことだけ言って、剛田のやつ寝ちまったぞ。こりゃ帰って学校に行ったら『ハーレムイケメン大魔王』だとかイケザンあたりに言われちまいそうだな。


 

「なあリル。俺ってそんなに見た目カッコいいか?」

「わふ。超イケメンだよ」

「そうか…」



 自分でかっこ悪いとは思ったことないがな…ここまでもてはやされるとも思わなかった。

 


「そうだ、ショー。アナズムにもどったら約束通り、私が全身全霊を尽くしてお祝いをするからね」

「いや…昨日、満足いくまで揉ませてもらったし……」

「でも本番はできなかっただろう?」

「いっ…いやまあ、そうだけど」



 ……リルとエロいことをする。やはりこれは変わらないみたいだ。建前は、こんなことしてていいのだろうかと言いたい。本音は、めちゃくちゃ楽しみだと言いたい。



「私自身、ショーの勇姿をみてドキドキが止まらなくてね。……抱かれたい気分なんだ」

「えらく直球だな…」

「それほど歯止めが効かなくなってるってことさ」



 小声で話してるが、周りに聞かれてない事を祈ろう。

 学校にばれちまったらちょっとまずい。



「ふああ…だから、だからね。今のうちにゆっくり寝て体力をつけておいてくれよ」

「……体力つけなきゃいけないほどなのか」

「うん、もうそれはディープにやるからね」


 

 そ、そうか……。

 リルが目をつむったから、俺はつい頬にキスをしてしまう。それからリルに何かを言われる前に眠りについた。


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