第七十一話 武闘大会終了翌日
おはよう。
どれ、大会が終わってから街がどうなったか、
見に行くとしようじゃねぇか。
俺はこんな安易な考えで、外に出たのを今は激しく後悔している______
「きゃーー! あの娘がアリムちゃんよ!」
「かっわいいっ!」
「おぉ、本当だ…なんたる美しさ…」
「いやぁ、すげえよなぁ、Aランク4人一瞬で倒すんだもんなぁ…」
「SSSランク候補だともいわれてるじゃねぇか?」
「んんwwwあの時のおにゃのこがまさかこんなになるとは思いもしませんでしたぞwww」
「こ最速最年少のSランカー…≪天の魔剣少女≫アリム・ナリウェイちゃんかね…あの剣さばきは只者じゃなかった」
「国王様直々に旗をわたされたんだって!?」
「握手してください!」
おぉう…なんだこの人だかりは……。まるで俺、芸能人扱いじゃねぇか…。安易に外に出たことを後悔した。
今、普段変装しているという、あのSSSランカーの二人の気持ちがやっとわかった気がする。
どうする? 透明になって逃げるか…?
いやぁ…でもこう言うのも悪くねぇかぁ……。ここでいえばいい一言って……あ、あれだな。
「みなさん! ボクを応援してくれて、ありがとうございましたっ!」
さぁ、皆さんはどんな反応をみせるんだ?
「おうよ! これからも応援してやらあっ!」
「うちの店に今度来てね! サービスするわ!」
「食会でファウストの野郎に変なことされないように気をつけてね!」
「馬鹿野郎、アリムちゃんがあんな奴にまけっかよ」
「華やか瓦版社の者なんですけども、インタビューと写実を一枚描かせて貰ってもよろしいでしょうか?」
「くっ…可愛いっ……!」
「あの剣は我が騎士団の長にも負けぬな…」
すごいなぁ…優勝したらこんな風になるのかな…。いや、皆んな口々に容姿についても言ってるし、多分その要素が多いな。
ちなみに、華やか瓦版社のインタビューと写実には応えたよ。
かわりに今日の新聞を見せてもらった。いや、この世界、新聞ではなく瓦版か。いつの時代の奴だよ。
まず、一面。俺のことがびっしりと書いてあり、大会中の写実もされていた。この上手さは恐らく、真・美術のものだろう。
主に、俺の歴史的な凄さや、容姿のこと、王様直々に旗を手渡されたとが書いてある。
あれ、普通、こういうのってSランクが一番取り上げられるんじゃないの?
やっぱり、ガバイナさんの言う通り、ファウストって人が優勝したのか?
二面はラハンドさんのことについて。驚いたことに彼は3年前の、ウルトさんの奴隷撤廃の運動でかなり活躍していたのだそうだ。
『彼の友人のAランカー、ガバイナ・ドラグニア氏と一緒に最前線で___』とも書かれている。やっぱりあの人も良い人だ。そんな感じのことを中心に書かれていた。
もちろんラハンドさんの写実もあったんだけど…見た目怖すぎだろ。スキンヘッドで顔に刺青、額に傷跡、って……。
まぁ、本当に良い人なんだろうけどね。
三面は…ファウストについてのこと。どんな奴だとか、また汚い手を使ったのではないかとか、散々書かれていた。
内容を鵜呑みにしてはいけないが、もし、この記事の内容どうりの人間だとしたら、あまり関わりたくないな。
俺は読み終わった記事を、記者さんに返す。
そして、今ここに居る人達に、一言、用事があるからと謝り、去ってもらった。
さぁて、どうするか。このファウストって人の対策を一応しといたほうがいいか?
いや、別にいいか。
今日1日は、ギルドに顔出したり、外出して人々にもみくちゃにされたりして過ごした。
沢山お菓子貰ったよ。ありがたい。
どこいっても、俺はすでに有名人になっていたみたいだ。
そして、寝る1時間前に、明日の服の準備をして、俺のポーチの、化けるエンチャントも俺に手を出す奴はいないだろうと踏み、オフにした。
王様が俺に話があるんだったな……。
うぅ…緊張するよぉ…。
もういいや。今日は寝ちゃえ。おやすみなさい。
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緊張して7時間しか眠れなかった。
今は朝の7時。食会は12時からだが、城内で待機するのはいいらしい。
じゃあ、9時になったら行こう。そうしよう。
それまで身体を念入りに洗ったり、髪をとかしたりしないとね。