第六百六十六話 全国大会 2
「それじゃあまた行ってくるわ」
「今度も俺が一気に二人抜きするんで見ててくださいね!」
「次こそは…次こそは活躍する」
「俺も目立ちたい」
「部長に出番をつくらせない」
なんか一人一言ずつ言ってから第2試合試合に向かっていった。勝ち抜いてきた敵なんだ、きっとさっきの高校よりも強いはずだ。
「今度はどんな高校が相手なの?」
「私もそこまで詳しいわけじゃないけどね、まあ全国優勝はしたことあるところらしいよ。ここ近年はしてないらしいけど」
「へー」
それだけの文句だったら別にうちの高校もしたことあるし、大した壁ではないかもしれない。
さて、どうなるんだろう。
……しばらくして正式に第2試合が始まった。
これに勝てば準々決勝に行け、ベスト8は確定するんだ。
先鋒同士の対決。
これではまず星野君が技あり2回で勝ち。だけど次鋒で負けてしまった。
しかし次で、なんとさっき何も成果を得られなかった二山君が粘りに粘って次鋒、中堅を有効ポイントでの有利で破るという結果を残したの。
副将に二山君は敗れてしまうものの、中堅の中川君が2回技ありで勝利。
しかし大将に敵わった。でもそのあと無事に剛田君が一本勝ち。こうしてまた翔を出さずに試合が終わってしまったの。
「よーし、また快勝だ!」
2試合目が終わったらお昼休み。
俺たちのもとにきたゴリセンが満足そうにそう言った。
「二山、頑張ったじゃねーか」
「ははは、いや、さっきのは調子悪かっただけなんだぞ」
「まあ緊張してるみたいだったしな」
「しかし、また部長は出ずに終わりましたね」
「いいんだよこれで」
柔道部員たちにはそれぞれお弁当が配られる。しかし俺たち応援四人の分はあるわけない。
お弁当を持ってきてるから問題ないけどね。
「あ、ごめんね、今日はみんなのぶんないんだ」
「え、ああ……そうなんですね…いえ、大丈夫です」
一緒に観戦していた子達が残念がってる。
用意してきてあげても良かったんだけどね、まあ、アナズムでの能力を活かして移動してる俺たちが、現実的に考えたらお弁当をみんなの分も作って持ってこれるだなんて不自然きわまりないから。
「にしてもずっと気になってたんですけど、どうして犬のおもちゃを持ち歩いてるんですか?」
「え? あー、それね、実はカメラなんだよ」
「へぇ」
シヴァはさっきから何も喋らない。たまに話すといえば、誰かが勝つたびに小声でおめでとうと呟くくらいだ。
ここまで大人しいのは理解してなかったけど、ずっと傍観してた側としては静かに見るというのが自身のスタイルなのかもしれないね。
「それでみんな、全国はどう?」
なにげなくそう聞いて見たの。
もう2試合もしてるしそれなりの感想はうかんできてるでしょう。
「っと…それぞれが地方大会の準決勝くらいの強さは最低でもあるんじゃないかと思う」
「それな、マジつえーよな」
「でも強いほどやる気出るじゃないですか。楽しいし」
抱いてる感想はまちまちのようだ。
うーん、まだ大将まで一回も行ってないから楽勝してるようにこちらからは見えるんだけどね。
「そろそろ3試合目だな。行ってくる」
「わふ、行ってらっしゃい!」
リルちゃんに寄り添って昼飯を食べていた翔が立ち上がる。それにつられて参加する先鋭達も。
次が準々決勝。勝てばとりあえず功績がでかい。
でも流石に3回戦目…敵も当然強いだろうね。
みんなで見守る中、始まった。
まずは星野君が先鋒同士の戦いで競り勝った。2回の技ありではあるが、敵にも1技ありと4有効取られてる。
そして次鋒には負けてしまった。
そのまま次鋒同士の戦いとなり、二山君が有効粘り勝ち。しかし中堅には負けてしまう。
となると中堅同士の戦いになり、中川君が勝利するも敵の副将に敗れる。
そして、副将同士の戦い。
「一本!」
剛田君が2回技ありをとり、勝った。
なんか今までの敵より手こずってた気がするけど、それでも1回の有効もとられてない。
そうして起こった副将 対 大将。
その結果_____
「一本!」
「くそっ!」
ついに剛田君の敗北。
ずっとこのチームの強い盾となり続けた剛田君がついに打ち破られてしまった。個人と団体合わせて今大会初めての敗北らしい。
…え、なにそれ強くない?
さて、ここからステータスを使って翔達の話を聞いてみよう。
「わるい、部長を出すことになった」
「ははは、やっとだな! 行くぜ!」
おお、翔ったらなんだか嬉しそう。
ま、やっと出れたんだし仕方ないか。
翔はやはり方々から注目されてるみたいで、マスコミやその他観客が一気に翔達の試合に目を向け始める。
「あ、リルちゃんの様子は!?」
「ち、ちょっと顔が赤いくらいよ…でもこれからどうなるか」
「よく見てて上げて」
「うん」
よし、これでこちらも準備はいいだろう。
翔と大将が互いに土俵に立つ。なんか翔がやけにかっこよくみえるぞ。もともとかっこいいのに。
「……はじめっ!」
_______________スパンッ!
開始の合図とともに鳴り響く強打音。
あたりが一気にシーンとした。
「い……いっぽん!?」
開始直後の一瞬の背負い投げによる一本勝ち。
立っていたのは翔だった。
誰かの固唾を飲む音が聞こえてくる。
いやはや、翔の実力がここまでになってるとはね、ちなみにステータスは使ってないよ。
これで準決勝進出だねっ!




