第六百二十五話 地球で復活していたら
「正直、すでに復活してしまっていて潜伏してるだけだという可能性も捨てきれない。それぞれで注意した方がいいかも」
「わふん。そうだね!」
しばらく色々と考察したあと、カナタが最終的にうまい具合にまとめてくれたよ。やっぱりカナタは様々な可能性をもうすでに考えていたんだよね。
その一つが……。
「わふ、もし向こうの世界で魔神が復活しちゃってさ、私達に対抗できる術がなかったらどうするかってことなんだけど」
「リルさんなにかいいこと考え付いたの?」
「あ、ううん、違うんだよ。ちょっとショーに訊きたいことがあって。個人的な話だから気にしないでね」
「俺にか? なんだ?」
そう、向こうの世界で魔神が復活し、暴れた場合について。カナタはスキルがその時だけ使えるようになる場合と、やっぱり使えない場合を提唱したんだ。
前者は、俺のアイテムマスターのスキルを使って周りに(正体が)バレないように討伐したり、被害を出さないように普通に戦うだけなんだけど、問題が後者。
ただ単に今のまま、地球で一部のスキルが使えるだけで、ろくに魔法も撃てないんだとしたら絶望的なんだって。
カナタがショーに取り付いた魔神と1対1で戦ってみて抱いた感想は、『核兵器じゃ勝てない』だそうだ。
いや、確かにダメージを与えられるし、連発すれば勝てる見込みもある計算になるらしいんだけど、その間に日本が滅ぶって。つまり俺たちも死んじゃうってことで。
それはもう、無意味という他ないよね。
「もしさっきカナタ君が言ってた方の後者が実現しちゃって、何もかも諦めなきゃいけない場合……一緒のお墓に入ってくれるかい?」
「え? あ…あー、えーと……おう、まあ、当たり前だ。正確に言っちまえば墓も何もねーと思うが、少なくとも最後まで一緒にいる」
「わふぅ…っ!」
リルちゃんがものすごく嬉しそうだ。
これに便乗してミカが俺に迫って来た。
「有夢は?」
「俺はそーだね、俺だけが生きててもまずいし、ミカだけが死ぬなんてことになったら俺も死んじゃいたいし……うん、ずっと一緒に居るのが一番だね」
「えへへ、だよねぇ!」
世界滅亡レベルの話をしてるときになんて呑気な会話をしているんだろうと、側から見たら思われるかも知れないけれど、結局のところ俺たちはそれぞれの一番対決な人と自分の周囲が助かってくれればそれでいいから仕方ないね。犠牲者0が理想なのは変わりないけどね。
「はー…。やっぱり俺たちはこう、真面目な話してても惚気の話になるよねぇ……」
「そうね。でも実際のところカナタはどう? カナタなら最後まで足掻きそうだけど、本当の本当にダメになりそうだったら」
サクラちゃんも、リルちゃんやミカが俺たちの返答で嬉しそうにしてるのをみてカナタの答えが気になったらしい。真剣な表情でカナタに迫ってる。
「お、俺は……何が何でも桜だけは助ける」
「……えっ……」
「と、言いたいところだけどもうそれは桜が喜ばないってわかってるからね。にいちゃん達と答えは一緒だよ。最後まで一緒にいよう、ね?」
「うんっ…!」
真剣な雰囲気が一瞬でラブラブな雰囲気に。
愛が世界を救う、これが本当だったらもう何度救われてるか。
「わふ、とりあえずお話そらしてごめんなさい! このあと何か話すことあるかな?」
しばらくしてリルちゃんが我に返り、変な発言したことを謝りながらそう言って来た。
「いや、もう別段ないですね。また地球の方でどうなるかを見るだけです」
「うーん、私としてはもう復活してるんだけど、なんらかの理由で行動を起こさない…あるいは起こす気がないのが正解だと思うんだけどなぁ」
「お姉ちゃんがそう言うと本当になりそうだからこわい」
ミカの勘はよくあたる。
もしそれが本当なら、しばらくは平和になるだろうけどね。
「とりあえず、スキルだよな、全部。簡単な話、地球でも魔神がいたらスキルが使えるなら、簡単に世界は救えるし、その逆なら諦めるしかねー」
「うん、本当に単純だよね」
そう、単純なんだ。問題は魔神が現れた時にスキルが使えるか使えないかだけ。
カナタの考察で、こう…アナズムと地球が混じるから、魔神が現れた途端に魔法も使えるようになる可能性がある。その考察が合ってることに賭けるしかないんだよ。
「これからはこまめに連絡をとり、もしあの黒フードの男に出会ったら、今日まとめた『訊くこと』を問うこと。しばらくはこれを意識して行動しましょう」
「「「はーい!」」」
さて、魔神は出てくるのかねぇ。
なんか出てくるような気がするんだよね。でも出てくるなら早い時期がいいなぁ…なんて。
あ、そうだ。ミカの勘に訊けばいいんだ。
いつ現れるかを。
「ね、ミカ、魔神がもし出現するならいつだと思う?」
「テストより数日前かな」
「それって来週じゃん………」
いや、本当にそうだとしたら確かに都合がいいんだけどね、ショーの大会の大詰めにも被らないし。ははは!